*12:03JST いい生活 Research Memo(3):不動産会社の生産性向上を目指す(1)
■事業内容
1. 事業内容
いい生活 (TYO:3796)は、不動産事業者向けに不動産業務・取引を円滑に進め、業務効率・生産性を向上させるクラウドサービスを開発し、月額利用料・継続課金ベース(サブスクリプション)で利用可能なSaaSとして提供している。
同社の事業はクラウドソリューション事業の単一セグメントとなっているが、業務の目的に応じて特徴のあるサービスラインナップを提供している。
これらはSaaSとして提供する「サブスクリプション」サービスと、DX(デジタルトランスフォーメーション)導入を支援する「ソリューション」サービスに分けられる。
同社は、不動産ビジネスを加速させるITツールを自社で企画・開発・マーケティングし、クラウド上で生産性を向上させるシステムとして顧客である不動産会社に提供する。
顧客は、賃貸・賃貸管理・売買の各業務に活用し、エンドユーザーである不動産オーナー・物件の売買希望者、賃貸入居希望者にサービスの提供を行い、顧客はエンドユーザーからサービスに対する利用料・手数料を取得する。
同社は、顧客からITツールのサービス利用料を月額利用料(=サブスクリプション)として取得する。
(1) サブスクリプション
不動産業務に必要となる業務支援システムをクラウドでSaaSとして提供するサービスであり、同社グループの主力サービスとなっている。
主要な顧客である不動産会社からの月額利用料が主な売上となる。
顧客がこのシステムを使う利点は、システムの自動アップデートによりシステムが常時進化することで、最新サービスをいつでも使えるところ、自社でハードウェア設備等を保有する必要がなく、初期投資を抑えられる点にある。
同社は新規サービスの開発に積極的であり、事業の拡大とともに顧客の課題・要望を取り入れつつ、一つひとつのサービスを開発・リリースしてきた経緯があるため、サービス内容が多岐にわたっている。
2022年11月より、同社の目指す世界観と果たすべき使命を顧客と共有するために、ミッション、ビジョン、バリュー、サービス名、サービスロゴ、コーポレートロゴ等の全面的なリニューアルを行った。
今回のブランドリニューアルにより、サブスクリプションは賃貸管理、賃貸仲介、売買仲介などの業務を支援するサービス群とする「業務クラウドシリーズ」と不動産賃貸管理会社・賃貸仲介会社などの業者間のWebサービスである「不動産プラットフォーム」に分類されることになった。
(a) 業務クラウドシリーズ
「業務クラウドシリーズ」の主なサービスのうち、「賃貸管理クラウド」は、賃貸管理業務の基幹システムであり、「賃貸クラウド」は空室の募集、申し込みから契約までの業務をカバーできるシステムである。
「賃貸クラウド」は、自社のホームページや不動産ポータルサイトへの物件情報出稿用のデータベースとなるだけでなく、顧客管理及び契約書の作成も可能となっている。
「売買クラウド」はスマートフォンやタブレット等、各種デバイスで物件の広告を打つことができ、複数のポータルサイトに同じ情報を登録更新できる。
売買の契約書の作成もでき、最新の業法改正にリアルタイムで対応できるなどの利点がある。
(b) 不動産プラットフォーム
「不動産プラットフォーム」の主なサービスのうち、「いい生活 Square」は賃貸管理システム及び内見予約・入居申込サービスとリアルタイムに連携する業者間流通サイトであり、全国の不動産管理会社及び賃貸仲介会社が物件情報の掲載や検索を行うことができ、空室募集から内見申込み、入居申込みまでの一連の業務をスムーズにつなげることで不動産会社のリーシング業務を支援している。
このサービス上の物件情報はクラウド上の1つのデータベースに集約されており、リアルタイムに情報が更新されるので、仲介会社は掲載されている物件が空室かどうかを都度確認する負担がない。
「いい生活Home」は入居者向けのコミュニケーションアプリ、「いい生活Owner」は、オーナーと管理会社のコミュニケーションツールである。
管理会社はオーナー向けの毎月の収支報告をスマートフォンのアプリに送ることでペーパーレス化を図り、さらに不動産取引における少額の決済に使えるスマホ決済機能(「いい生活Pay」)も提供している。
「いい生活Home」及び「いい生活Owner」のアクティブユーザー数は12万人を超えており、入居者及びオーナーも巻き込んだ一大プラットフォームとして拡大を続けている。
(2) ソリューション
SaaSの初期設定に加え、SaaSを導入・運用するにあたり必要となるデータ整備等、顧客側に十分なリソースが不足している場合などに、同社グループから有償で導入・運用支援サービスを提供している。
また一部の顧客向けにSaaSの周辺ツール等を受託開発するサービスを提供している。
不動産会社の規模にもよるが、顧客側で十分なIT人材を確保しきれないケースも多く、運用まで手厚くサポートすることでサブスクリプションの継続と解約率の低下につながっている。
SaaSのサブスクリプションとセットで提供されるもので、SaaSの新規申し込みに連動して増えるという性質のサービスである。
同社は、サブスクリプション標準型のSaaSでは対応できない個別のニーズについては、カスタム型のオペレーション・コンサルティング「BPaaS(Business Process as a service)」による「ソリューションサービス」を提供する。
SaaSとBPaaSの組み合わせにより、顧客に対して不動産業務の支援だけではなく、より理想的なDXもトータルでサポートできる。
(3) サービスの導入事例
不動産業界における同社のターゲット顧客層は、中小企業から大手企業、地方の有力企業まで幅広い。
2023年3月期に大手企業で同社のSaaSサービスの導入を決定した大手企業も複数ある。
具体的に例を挙げると、(株)ハウスメイトパートナーズは、賃貸仲介件数で国内3位の(株)ハウスメイトショップのWeb予約・申込サービス「Sumai Entry」を導入した。
JPMC (TYO:3276)(旧 日本管理センター)は、全国約106,000戸の管理物件に正確かつタイムリーに空室情報を配信し、入室予約・入居申込ができるサービス「ES-B2B賃貸」「いい生活Square」「Sumai Entry」を導入した。
(株)東急コミュニティーは、自宅住み替えサービス「たくす」において、同社の「いい生活Owner」の利用を開始した。
このアプリにより、契約前から借主とのコミュニケーションの質が向上し、業務の効率化、生産性の向上に寄与している。
東京大学生活協同組合では、提携する不動産会社を通じて様々な物件を紹介し、空き物件情報を効率的に管理し情報の鮮度を向上させるデータベースを構築している。
また、同組合のホームページでは、タイムリーな情報更新を行い、問い合わせ件数をさらに増加させるための施策を講じている。
さらに最近では、大学の生活協同組合の事例でいえば、金沢大学、早稲田大学にも同社のサービスが導入され、清水建設 (TYO:1803)の子会社であり約4,000戸の自社物件を管理する清水総合開発(株)にも、社内情報共有、契約業務効率化、法改正等の対応等に対し、同社のアプリ「賃貸管理クラウド」の導入を決めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
1. 事業内容
いい生活 (TYO:3796)は、不動産事業者向けに不動産業務・取引を円滑に進め、業務効率・生産性を向上させるクラウドサービスを開発し、月額利用料・継続課金ベース(サブスクリプション)で利用可能なSaaSとして提供している。
同社の事業はクラウドソリューション事業の単一セグメントとなっているが、業務の目的に応じて特徴のあるサービスラインナップを提供している。
これらはSaaSとして提供する「サブスクリプション」サービスと、DX(デジタルトランスフォーメーション)導入を支援する「ソリューション」サービスに分けられる。
同社は、不動産ビジネスを加速させるITツールを自社で企画・開発・マーケティングし、クラウド上で生産性を向上させるシステムとして顧客である不動産会社に提供する。
顧客は、賃貸・賃貸管理・売買の各業務に活用し、エンドユーザーである不動産オーナー・物件の売買希望者、賃貸入居希望者にサービスの提供を行い、顧客はエンドユーザーからサービスに対する利用料・手数料を取得する。
同社は、顧客からITツールのサービス利用料を月額利用料(=サブスクリプション)として取得する。
(1) サブスクリプション
不動産業務に必要となる業務支援システムをクラウドでSaaSとして提供するサービスであり、同社グループの主力サービスとなっている。
主要な顧客である不動産会社からの月額利用料が主な売上となる。
顧客がこのシステムを使う利点は、システムの自動アップデートによりシステムが常時進化することで、最新サービスをいつでも使えるところ、自社でハードウェア設備等を保有する必要がなく、初期投資を抑えられる点にある。
同社は新規サービスの開発に積極的であり、事業の拡大とともに顧客の課題・要望を取り入れつつ、一つひとつのサービスを開発・リリースしてきた経緯があるため、サービス内容が多岐にわたっている。
2022年11月より、同社の目指す世界観と果たすべき使命を顧客と共有するために、ミッション、ビジョン、バリュー、サービス名、サービスロゴ、コーポレートロゴ等の全面的なリニューアルを行った。
今回のブランドリニューアルにより、サブスクリプションは賃貸管理、賃貸仲介、売買仲介などの業務を支援するサービス群とする「業務クラウドシリーズ」と不動産賃貸管理会社・賃貸仲介会社などの業者間のWebサービスである「不動産プラットフォーム」に分類されることになった。
(a) 業務クラウドシリーズ
「業務クラウドシリーズ」の主なサービスのうち、「賃貸管理クラウド」は、賃貸管理業務の基幹システムであり、「賃貸クラウド」は空室の募集、申し込みから契約までの業務をカバーできるシステムである。
「賃貸クラウド」は、自社のホームページや不動産ポータルサイトへの物件情報出稿用のデータベースとなるだけでなく、顧客管理及び契約書の作成も可能となっている。
「売買クラウド」はスマートフォンやタブレット等、各種デバイスで物件の広告を打つことができ、複数のポータルサイトに同じ情報を登録更新できる。
売買の契約書の作成もでき、最新の業法改正にリアルタイムで対応できるなどの利点がある。
(b) 不動産プラットフォーム
「不動産プラットフォーム」の主なサービスのうち、「いい生活 Square」は賃貸管理システム及び内見予約・入居申込サービスとリアルタイムに連携する業者間流通サイトであり、全国の不動産管理会社及び賃貸仲介会社が物件情報の掲載や検索を行うことができ、空室募集から内見申込み、入居申込みまでの一連の業務をスムーズにつなげることで不動産会社のリーシング業務を支援している。
このサービス上の物件情報はクラウド上の1つのデータベースに集約されており、リアルタイムに情報が更新されるので、仲介会社は掲載されている物件が空室かどうかを都度確認する負担がない。
「いい生活Home」は入居者向けのコミュニケーションアプリ、「いい生活Owner」は、オーナーと管理会社のコミュニケーションツールである。
管理会社はオーナー向けの毎月の収支報告をスマートフォンのアプリに送ることでペーパーレス化を図り、さらに不動産取引における少額の決済に使えるスマホ決済機能(「いい生活Pay」)も提供している。
「いい生活Home」及び「いい生活Owner」のアクティブユーザー数は12万人を超えており、入居者及びオーナーも巻き込んだ一大プラットフォームとして拡大を続けている。
(2) ソリューション
SaaSの初期設定に加え、SaaSを導入・運用するにあたり必要となるデータ整備等、顧客側に十分なリソースが不足している場合などに、同社グループから有償で導入・運用支援サービスを提供している。
また一部の顧客向けにSaaSの周辺ツール等を受託開発するサービスを提供している。
不動産会社の規模にもよるが、顧客側で十分なIT人材を確保しきれないケースも多く、運用まで手厚くサポートすることでサブスクリプションの継続と解約率の低下につながっている。
SaaSのサブスクリプションとセットで提供されるもので、SaaSの新規申し込みに連動して増えるという性質のサービスである。
同社は、サブスクリプション標準型のSaaSでは対応できない個別のニーズについては、カスタム型のオペレーション・コンサルティング「BPaaS(Business Process as a service)」による「ソリューションサービス」を提供する。
SaaSとBPaaSの組み合わせにより、顧客に対して不動産業務の支援だけではなく、より理想的なDXもトータルでサポートできる。
(3) サービスの導入事例
不動産業界における同社のターゲット顧客層は、中小企業から大手企業、地方の有力企業まで幅広い。
2023年3月期に大手企業で同社のSaaSサービスの導入を決定した大手企業も複数ある。
具体的に例を挙げると、(株)ハウスメイトパートナーズは、賃貸仲介件数で国内3位の(株)ハウスメイトショップのWeb予約・申込サービス「Sumai Entry」を導入した。
JPMC (TYO:3276)(旧 日本管理センター)は、全国約106,000戸の管理物件に正確かつタイムリーに空室情報を配信し、入室予約・入居申込ができるサービス「ES-B2B賃貸」「いい生活Square」「Sumai Entry」を導入した。
(株)東急コミュニティーは、自宅住み替えサービス「たくす」において、同社の「いい生活Owner」の利用を開始した。
このアプリにより、契約前から借主とのコミュニケーションの質が向上し、業務の効率化、生産性の向上に寄与している。
東京大学生活協同組合では、提携する不動産会社を通じて様々な物件を紹介し、空き物件情報を効率的に管理し情報の鮮度を向上させるデータベースを構築している。
また、同組合のホームページでは、タイムリーな情報更新を行い、問い合わせ件数をさらに増加させるための施策を講じている。
さらに最近では、大学の生活協同組合の事例でいえば、金沢大学、早稲田大学にも同社のサービスが導入され、清水建設 (TYO:1803)の子会社であり約4,000戸の自社物件を管理する清水総合開発(株)にも、社内情報共有、契約業務効率化、法改正等の対応等に対し、同社のアプリ「賃貸管理クラウド」の導入を決めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)