Victoria Waldersee
[ミュンヘン 4日 ロイター] - 欧州の自動車メーカーは、比較的低価格で消費者に優しい電気自動車(EV)の生産でリードする中国に対抗するという課題に直面している──。IAAミュンヘン自動車ショーで欧州勢の幹部らはこう語り、危機感を示した。
仏ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は自動車ショーの合間にロイターに対し「一世代早くEVに着手した一部中国勢とのコストの差を縮めなければならない」と指摘した。
中国との価格同等を目指す取り組みの一環として、来年発売予定のEV「R5」は「セニック」と「メガーヌ」のEVモデルの価格を25─30%下回るとも述べた。
また、RTLラジオに対し、「EVのサプライチェーン(供給網)に関して中国は非常に競争力があり、われわれは早く追いつく必要がある」と語った。
新しいセニックミニバンについては年内に価格を発表し、2024年第1・四半期に発売する予定という。
自動車コンサルティングのイノベブによると、今年に入りこれまでに欧州で販売された新型EVに占める中国ブランドの比率は8%で、昨年の6%、21年の4%から上昇している。
今年のイベントでは展示企業の約41%はアジアに本社があり、中でも比亜迪(BYD)、寧徳時代新能源科技(CATL)、小鵬汽車(シャオペン)といったバッテリーやEV生産に関わるプレーヤーを含め、中国企業の数は2倍以上に増えている。
ドイツ自動車工業会(VDA)のミュラー会長は「われわれ(ドイツ)は競争力を失いつつある」と述べ、ミュンヘン自動車ショーは国際競争圧力の高さを示し、ドイツが自動車電動化への投資を強化する重要性を映していると指摘した。
独BMWのオリバー・ツィプセCEOは中国の欧州進出に関して、「ベース車市場は消滅するか、欧州メーカーがやることではなくなるだろう」と述べた。
独フォルクスワーゲン(VW)のオリバー・ブルーメCEOは、中国での提携を通じてバッテリーセルのコストを50%削減することを目指していると記者団に語った。
ルノーのエンジニアリング責任者、ジル・ルボルニュ氏は3日、記者団に対し、中国がバッテリー供給網全体を支配していると指摘。「欧州は中国を前にしてマクロ経済的な観点から甘くなるのをやめる必要がある」と語った。
コンサルティング会社オリバー・ワイマンのファビアン・ブラント氏は「かつてはドイツの自動車産業がその極めて強力な地位を示す場だったが、今や世界各国、特に中国の先進的なプレーヤーが対等に顔を合わせる場となっている」と話した。