Greg Bensinger
[サンフランシスコ 19日 ロイター] - 米アマゾン・ドット・コムでは、人気の高い電子書籍専用端末「キンドル」やスマートスピーカー「エコー」などを手掛けてきた機器部門「Lab126」の一部従業員が士気低下を口にしている。人員削減に加え、開発予定の機器からヒット商品が生まれそうにないと懸念されるためだ。
Lab126は、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏が将来にわたるプロジェクトのけん引役として位置付けて重視されていたが、最近は大規模な人員削減や主要幹部の退社により打撃を被っている。退社する幹部には、同部門の責任者デービッド・リンプ氏が含まれ、同氏は年内の退任を表明した。
ロイターは同部門の現在の従業員と元従業員ら15人余りに取材。開発中の新商品は、多くが音声アシスタントサービス「アレクサ」の利用を顧客に促すことを目指しているものの、アレクサは現在、生成人工知能(AI)と「チャットGPT」の時代において厳しい試練に直面しているという。
アマゾンは機器とサービスの発表会を9月20日に開催する。タブレット端末「ファイア」やテレビ「ファイアTVスティック」、キンドルなど既存商品の最新版が、他の新商品とともに発表される見通しだ。
ロイターの取材により判明した開発中の新商品は5つ。一酸化炭素(CO)検出装置や家庭用エネルギー消費モニター(いずれもアレクサと併用)、室内の壁などをスクリーンにできるホームプロジェクターなどがある。
関係者の話では、Lab126はここ何年にもわたる損失と戦略の変更が士気の低下をもたらしている。関係者の多くは、2021年に発売された家庭用ロボット「アストロ」が未だにニッチ市場にとどまっており、一部の顧客からは毛嫌いされている点を指摘した。
その前も、同部門は音声アシスタント付き調理器具やスマートフォン「ファイア」などの商品が不振続きだった。
関係者によると、アマゾンは約10年前に発売したアレクサへの興味が薄れている問題への対処を試みている。アレクサは、マイクロソフトが支援するオープンAIを含む多数の新興企業やアルファベット傘下のグーグルなどとの競争に直面している。
アレクサはアマゾンのテレビやスピーカーを通じてアクセスされることで、質問への回答を話し言葉で提供するとともに、アマゾンのオンラインストアでの買い物に誘導することもできる。アマゾンはまた、アレクサを音声による照明や家電の制御を可能にするホームオートメーションの中心にするために取り組んでいる。
だがアマゾンは、アレクサから利益を生み出す着実な手法を見いだしていない。
情報分析会社テクスポーネンシャルのアビ・グリーンガート社長は「消費者の生活に浸透するアマゾンの能力は限られている。彼らがスマートフォンを支配していないためだ」と語った。