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焦点:日本企業、高い業績進捗率でも改革姿勢が鍵 選別色一段と

発行済 2023-10-10 15:13
更新済 2023-10-10 15:27
© Reuters.  10月後半から始まる企業の中間決算シーズンを前に、株価の先行きを占ううえで一つの材料として業績の進捗率が注目されている。写真は東京都内で2017年1月撮影(2023年 

Noriyuki Hirata

[東京 10日 ロイター] - 10月後半から始まる企業の中間決算シーズンを前に、株価の先行きを占ううえで一つの材料として業績の進捗率が注目されている。通期予想に対して高い達成率を示していれば上方修正が期待できるからだ。一方、年度後半の見通しや東証改革への取り組み姿勢は企業ごとに濃淡もあり、進捗率上位の銘柄群の中でも選別色は強まる、との指摘もある。

LSEGデータに基づきロイターが上位銘柄を抽出した。なお、業績には季節性もあるため、単純な数字の比較はできない。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは中間決算について「米景気の底堅さ、円安、国内経済再開、値上げの浸透などの利益押し上げ効果もあって、製造業、サービス業ともにしっかりだろう」と予想する。足元で注目されるのが上方修正の可能性のある銘柄だ。第1・四半期時点の進捗率が30%以上の銘柄は、中間決算での業績上振れが意識されやすいという。

LSEGのデータによると、プライム市場に上場し10人以上のアナリストがカバーする3月期決算企業で純利益予想を開示している企業のうち、52社が純利益の進捗率で30%を超える。このうち、中間期の市場予想を加味した進捗率で60%を超える銘柄は39あり、輸送用機器8、機械5、電気機器4など、輸出関連セクターの高進捗が目立つ。

主要な3月期決算企業約300社を対象にした井出氏の試算によると、今年の第1四半期に上方修正した企業は例年より1割多かった。進捗率は直近5年間で一番高く「中間決算は上方修正ラッシュになりそうだ」という。

原動力のひとつは、為替の円安だ。日銀の3月短観では、事業計画の前提となる想定為替レート(全規模・全産業)は2023年度通期で1ドル131.72円だった。6月末の実勢レートは144円と、大幅な円安に振れた。9月末のドル/円はさらに円安が進んで149円となっており、市場には一段の差益上乗せへの期待感がある。

「もう一段の株高には、中間決算でEPS(1株あたり利益)が引き上がることが条件のひとつになる」と、三木証券の北沢淳商品部投資情報グループ次長は指摘する。

日経平均のPER(株価収益率)は、9月半ばには過去のレンジの上限付近となる16倍台をつけ、割高感が意識された。足元は直近の株価調整で15倍付近に低下しているが、まだ割安とはみられていない。株価はPERとEPSの積のため、EPSが引き上がれば、PERが低下してバリュエーション面での割高感が和らぎ上値余地が生じる。

<高進捗でも個別事情で温度差>

もっとも、進捗率上位の銘柄の間でも、個別の事情によって好業績の持続力には温度差もうかがわれる。

上位で目立つ医薬品は、やはり「総じて円安の追い風を受けた」とSMBC日興証券の和田浩志アナリストは指摘する。ただ、下期以降の勢いは、新薬の特許満了に伴って売上高が減少する「パテントクリフ」の到来時期の違いで差が出かねないという。

和田氏によると、エーザイは5年以内に一部の新薬で特許切れが見込まれるが、抗がん剤の新薬が好調なほか、アルツハイマー病治療薬の貢献が期待されており、先行きのクリフを乗り越え、伸びが見込まれるという。一方、武田薬品工業は一部の特許切れが今後、影響すると見込まれ、中間決算で上方修正があっても株価はさほど好感しないかもしれないとみている。

任天堂は、マリオ映画や人気ゲームシリーズの新作のヒットで第1・四半期の進捗率が5割を超えた。第2・四半期(7―9月期)も円安が進み「中間期での上方修正はほぼ確実」と、東洋証券の安田秀樹シニアアナリスト話す。ただ、株価は6月の高値が今期のピークではないかという。新型ゲーム機が来年発売されるとの思惑があり、消費者の現行機への関心が徐々に薄れることで、年末商戦後は業績がいったん踊り場を迎えるとの見方だ。

一方、トヨタ自動車は、円安効果だけでなく、半導体不足の緩和で生産・販売が回復基調にあり、下期も堅調継続が見込まれると東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは指摘する。同社を含む輸送用機器セクターでは、進捗率の高い銘柄を中心に上方修正が多く見込まれており「株価は高値圏にあるとはいえ、中間決算での反応も悪くないだろう」(杉浦氏)という。

セクター内では、東証が要請する企業改革の取り組みが広がっており、直近ではアイシンが成長領域へのシフトや株主還元を盛り込んだ中期経営計画を9月に発表し、株高になった。中間決算では「各社の取り組みの進捗状況や来期の業績を織り込みながら、上値余地を探ることになりそうだ」と杉浦氏はみている。

<上方修正要因や改革姿勢で選別も>

中間決算で上方修正がある場合でもその「中身」や、東証改革への各社の取り組み姿勢を市場は見極めようとしており、銘柄の選別が進む可能性もある。オリンパスの純利益は一部事業の売却益の影響で上振れており、営業利益の進捗は見劣りする。

米中経済など外部環境の不透明要因がくすぶる中、企業が先行きに慎重になることは想定されるが「上方修正しても上期の上振れ分の上乗せにとどまるなら、嫌気されかねない」(三木証券の北沢氏)との見方がある。

上方修正の要因が円安効果だけの場合も「表面の数字をみて一時的に買われたとしても、株高は続かないだろう」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーはみている。

安川電機は中国経済減速の影響が警戒されたが、6日発表の中間決算で見通しを据え置き、10日の株価は一時5%高に上昇した。ただ、ドル/円の前提レートを引き上げており、円安効果を除けば物足りないとの見方も聞かれた。株価はその後、一時2%安に下落し荒い値動きとなった。

東証改革は、3月末の要請から半年となり「これまで取り組みを開示していない企業からの開示があっていいタイミング」(ニッセイ基礎研究所の井出氏)と捉えられている。開示が来春以降にずれ込む企業も中小型株を中心に想定されるが「これまで取り組みを開示しておらず今回も開示しない企業は、いったん失望売りとなりそうだ」(井出氏)との指摘もある。

(平田紀之 編集:橋本浩)

*一部サイトに正しく表示されなかったため再送します。

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