Miho Uranaka Sam Nussey
[東京 20日 ロイター] - 日本最大のユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)と言われる人工知能(AI)ソフト開発企業プリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)が、AI専用半導体の独自開発を加速している。
同業界では生成AI「チャットGPT」の登場により世界的に画像処理半導体(GPU)の需要が高まっており、エヌビディアが大きなシェアを握っている。
PFNの西川徹社長はロイターとのインタビューで、AI研究や実用化のうえで計算資源は「心臓の部分に当たる」と説明。「自社でコントロールすることがますます重要になっている」といい、スーパーコンピューター(スパコン)などに搭載する高性能なAI専用半導体の開発の必要性を語った。
同社では、事業の発展を加速するためAI半導体の開発を始めたが、計算能力に対する需要の高まりを受けて、今後、より高性能な半導体や米クラウドサービスのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のように計算力そのものを市場に提供することも検討する、とした。
生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)の開発も進める。11月には、拡販も視野に入れて子会社を設立した。西川社長は、各企業で「独自のモデルを自社内で持っておきたいという需要が非常に増えている」と話す。
PFNは2014年にディープラーニング(深層学習)技術に焦点を当てて設立。これまでトヨタ自動車やファナックが出資した。
設立当初から大規模な計算資源の必要性や電力消費の増大懸念、将来的な調達リスクを感じ、16年にAI専用半導体の開発に着手したという。
AI専用半導体を巡っては、グーグルやアマゾン、アップルが独自の開発を進めているが、PFNは16年にAI半導体「MN-Core」を開発した。同社が開発したスパコン「MNー3」には、この独自の半導体を搭載している。
第2世代品の開発はすでに終えており、半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に生産を委託している。これまでより消費電力を抑制し、演算能力を従来の約3倍に向上、搭載するスパコンの構築を進め、24年中に自社のアプリケーションを通じて提供したい考え。
西川社長は次世代品の開発にも積極姿勢を示し、開発費として数百億円必要になると話した。
国内の計算需要に対しては、供給が圧倒的に不足しているとして、大規模な計算資源の確保に日本政府も支援に乗り出している。
PFNの生成AI基盤の開発に当たっては、国内最大の計算規模を持つ産業技術総合研究所のスーパーコンピューター「ABCI」の計算能力の2割を優先的に利用できるよう政府が後押しする。さらに、今月PFNなどに対し、AI半導体やスパコンの研究開発に向けて200億円の支援を決めた。
(浦中美穂、Sam Nussey)