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アングル:ソフトバンクGの投資再建担うクラベル氏、穏やかな元バンカー

発行済 2024-01-13 07:48
更新済 2024-01-13 07:54
© Reuters.  1月11日、2015年に米金融大手モルガン・スタンレーを退社し、ソフトバンクグループ(SBG)に入ったアレックス・クラベル氏(写真)は、孫正義会長兼社長を取り囲んでいた

Krystal Hu

[11日 ロイター] - 2015年に米金融大手モルガン・スタンレーを退社し、ソフトバンクグループ(SBG)に入ったアレックス・クラベル氏は、孫正義会長兼社長を取り囲んでいた破天荒なディールメーカーらと全く違っていた。

SBGはここ数年、シェアオフィス大手ウィーワークへの出資を含む投資の失敗と経営陣の離脱が相次いでいる。そうした中、49歳のクラベル氏は今や孫氏の最も有力な側近となり、再建の取り組みを率いている。

クラベル氏はソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズの共同最高経営責任者(CEO)として、1600億ドル(約23兆2800億円)のビジョンファンド(VF)とグループのバランスシート350億ドルの投資管理を担う。

SBGが何十億ドルもの資金をどこに、どのように投入するかは、多くのハイテク新興企業の将来だけでなく、4・四半期連続の赤字で辛酸をなめている株主の命運も左右する。

SBGが再び外部資金を運用するかどうかも注目される。最初のビジョンファンドで痛手を被ったSBGは、第2弾となる「ビジョンファンド2」の600億ドルを、自己資金のみで賄うことを余儀なくされた。

クラベル氏と12人の現・元同僚へのインタビューにより、同氏が控えめな態度で淡々と問題を解決することで出世していった様子が浮かび上がった。前任者らのように大型案件を持ち込んだり、投資家から資金を調達したりするのではなく、SBGの込み入った、あるいは問題を抱えた取引を管理し、解決する堅実な人物としてクラベル氏は孫氏の信頼を勝ち取った。

金利上昇に伴う世界的なハイテク投資の冷え込みに直面するSBGに今必要なのは、こうした手腕だ。SBGはグループ再編のために投資ペースを落とした後、昨年半ばに再び攻勢に転じ、人工知能(AI)とロボット工学に注力すると発表した。巨大で集中的なハイテク投資から、より小規模で分散的な投資へと軸足を移している。

ビジョンファンド事業のもう一人の共同CEOであるラジーブ・ミスラ氏がインタビューで語ったところでは、孫氏は昨年7月、新たな投資案件を審議するために設置した執行委員会の上にクラベル氏を昇格させることで、意思決定を合理化することを決めた。

2014年からソフトバンクの上級幹部を務めるミスラ氏は昨年、自身の投資会社を立ち上げたが、SBGに引き続き在籍している。ミスラ氏は、クラベル氏を後継者として育て、孫氏に推薦したと述べた。

クラベル氏は、経営破綻したウィーワークを含むSBGの投資先の再生に携わってきた。

同氏の尽力により、ソフトバンクはここ数カ月、英半導体設計会社アームの上場を成功させ、米通信大手Tモバイルからついに76億ドル相当の株式を無償で取得するなど、いくつかの勝利を収めた。

<SBGの心をつかむ>

1990年代にモルガン・スタンレーでハイテク、メディア、通信担当バンカーとして修業を積んだクラベル氏は、96年に香港で初めてアジアの投資家との関係を築いた。標準中国語が話せる同氏は中国の顧客を獲得し、後に東京に派遣されて同様の事業拡大を任され、そこでソフトバンクを顧客とすることに貢献した。

モルガン・スタンレーでクラベル氏の上司だったポール・タウブマン氏は「彼は常にこちらに質問を投げかけ、どんな時でも礼儀正しく穏やかな物腰で率直に話をする。忠実で信頼でき、決してこちらの仕事を奪おうとしているのではなく自分の仕事をしようとしているだけだ、という印象を与える」と語った。

オフィスで朝、日本語の授業を受けていたクラベル氏は2015年、モルガン・スタンレーからSBGに移籍する。米無線通信企業スプリントの買収など、通信企業買収に関するアドバイザリー業務でソフトバンクに好印象を与えた結果だ。

出しゃばらず、昇進の野心をむき出しにしないクラベル氏は、前任者らの退任につながったSBGの内紛や孫氏の後継争いに巻き込まれることはなかった。

ビジョンファンドの投資の陣頭指揮を執ったミスラ氏は、数字とチームの管理でクラベル氏を頼りにした。クラベル氏は案件こそ取ってこなかったが、助言を必要とする他のSBGのパートナーにとって貴重な情報源となった。

SBGのマルセロ・クラウレ前最高執行責任者(COO)が報酬を巡る対立で2022年に退任すると、クラベル氏は彼のポートフォリオの多くを引き継いだ。

「彼は人付き合いがうまく、組織の細部にまで入り込むことができる」とミスラ氏は言う。

<保守的なアプローチ>

クラベル氏は新しい職務に就いてからの数カ月間、ビジョンファンドのスタッフを訪ねたり、案件の執行に手を貸したりして世界中を飛び回った。

ハイテク業界の幹部やSBGの一部同僚らによると、投資銀行家としての経歴を持つクラベル氏がハイテク業界の主要投資家としての地位を確立するには、まだ長い道のりが控えている。

クラベル氏の下、ビジョンファンド2はこれまでのところ慎重なアプローチを採っている。同ファンドに残っている投資資金は約90億ドル。トラクタブルやケイト・ネットワークスのような新興企業に比較的少額を出資する一方、オープンAIやアンスロピックなど注目度の高いAI企業については、バリュエーションの高騰を警戒して投資を見送っている。

クラベル氏のオフィスは、マンハッタンのパークアベニューにあるウィーワーク運営の質素な会議室だ。同氏はここでインタビューに答え、SBGにはAI分野の野心的な起業家を支援できるだけの資金力があると語った。

仮に十分な投資対象が見つからないなら、無人トラック輸送企業「スタックAV」の事例のように、SBG自ら資金を出して創業することになるとクラベル氏は語った。スタックAVはSBGが起業家と組み、SBG子会社として設立した企業だ。

SBGは合弁事業や融資など、他の資本展開の方法も視野に入れている。

「ディールが続々と出てくる市場があれば、そうした企業に注目する。市場がない場合は、われわれ独自のマジックを作り出す」とクラベル氏は語った。

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