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シンバイオ製薬 Research Memo(7):トレアキシン(R)は後発医薬品参入で市場シェアが緩やかに低下する見込み

発行済 2024-05-30 13:17
更新済 2024-05-30 13:30
© Reuters.
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*13:17JST シンバイオ製薬 Research Memo(7):トレアキシン(R)は後発医薬品参入で市場シェアが緩やかに低下する見込み ■シンバイオ製薬 (TYO:4582)のその他のパイプラインの動向

1.「トレアキシン(R)」(一般名:ベンダムスチン塩酸塩)
「トレアキシン(R)」は悪性リンパ腫向けの抗がん剤である。
悪性リンパ腫とは白血球の一種であるリンパ球ががん化(腫瘍化)し、リンパ節や臓器にかたまり(腫瘤)ができる病気で、全身に分布するリンパ節やリンパ節以外の臓器(胃、腸、甲状腺、脊髄、肺、肝臓、皮膚、眼など)からも発生する。
血液がんの中で最も多い疾患で、国内における年間発生数は3万人を超えており、治療が必要とされる患者数も高齢者人口の増加に伴って、緩やかに増加していくと予想されている。
悪性リンパ腫は主にホジキンリンパ腫(HL)と非ホジキンリンパ腫(NHL)に分かれており、日本では約90%がNHLで占められる。
また、症状の進行速度によって低悪性度、中悪性度、高悪性度に分類され、様々な病型がある。


(1) 適応症の拡大
同社は「トレアキシン(R)」の販売戦略として、段階的に適応症の拡大に取り組んできた。
2010年10月に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)の販売承認を得たのを皮切りに、2016年8月に慢性リンパ性白血病(CLL)、同年12月に未治療(初回治療)の低悪性度NHL/MCLの販売承認を取得した。
また、2018年7月には日本血液学会が発行した造血器腫瘍診療ガイドラインに「トレアキシン(R)」とリツキシマブの併用療法(BR療法)が新たに収載され、既承認のすべての適応症において標準的治療の選択肢として推奨されることになり、名実ともに「トレアキシン(R)」が悪性リンパ腫における標準療法として位置付けられることとなった。


そのほか、低悪性度NHLの代表的な組織型であるCD20陽性の濾胞性リンパ腫(FL)に対して、リツキシマブのみならず新規の抗CD20抗体製剤との併用に係る一部変更承認を2018年7月に取得し、オビヌツズマブ※1との併用療法が治療選択肢として加わったほか、腫瘍特異的T細胞輸注療法※2の前処置に関する一部変更承認を2019年3月に取得し、国内初のCAR-T療法※3「キムリア(R)点滴静注※4」の前処置として「トレアキシン(R)」の使用が可能となった。


※1 オビヌツズマブ(「ガザイバ(R)」:販売元 中外製薬 (TYO:4519)):NHLの治療薬として国内外の治療ガイドラインで推奨されているリツキシマブと同様、幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質であるCD20に結合する、糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を直接、及び体内の免疫系とともに攻撃し、破壊する。

※2 腫瘍特異的T細胞輸注療法:がん患者自身のT細胞(リンパ球の一種)に、体外で人工的にがん特異性を付与し、増幅させた後に患者に投与する療法。

※3 CAR-T療法(キメラ抗原受容体T細胞療法):腫瘍特異的T細胞輸注療法の中でも、腫瘍細胞上の膜抗原を認識する抗体の抗原結合部位とT細胞受容体の細胞内ドメインを組み合わせたキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor;CAR)をコードする遺伝子をT細胞に導入して増幅・輸注する療法。

※4 キムリア(R)点滴静注(一般名 チサゲンレクルユーセル:販売元 ノバルティスファーマ(株)):国内で初めて承認されたCAR-T療法で、再発・難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)及び再発・難治性のCD19陽性のDLBCLを適応症として2019年3月に製造販売承認を取得した。



さらに2021年3月に、再発・難治性DLBCLに関する販売承認を取得※1、BR療法に加えて、中外製薬が開発を進めていたポラツズマブ ベドチン※2とBR療法の併用療法(P-BR療法)が承認されたことにより、対象患者数も従来に比べ大きく拡大することとなった。
今後は副作用が少なく有効性の高いBR療法やP-BR療法が、標準療法として浸透していくものと考えられる。
なお、BR療法とP-BR療法のどちらを選択するかは、患者の症状や遺伝子のタイプ等によって医師が判断していくことになる。


※1 未治療のDLBCLに対する標準治療はリツキシマブと化学療法の併用療法が実施されているが、約40%の患者が再発している。
また、再発・難治性のDLBCLに対する治療法の1つとして、自家造血幹細胞移植(ASCT:autologous stem cell transplantation)の実施が推奨されているが、その約半数はASCT実施前の救援化学療法が奏効せず、ASCTが実施できていない。
さらに、年齢や合併症等でASCTの適応とならない患者も多く、標準治療はまだ確立されていない。

※2 ポラツズマブ ベドチン:米国Seattle Genetics (NASDAQ:SGEN)のADC(Antibody-Drug Conjugate:抗体薬物複合体)技術を使用してRoche (NYSE:ROG)が開発した、ヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害剤をリンカーで結合させた抗CD79b抗体薬物複合体。
CD79bタンパクは多くのB細胞で特異的に発現しており、新たな治療法を開発するうえで有望なターゲットとなっている。
ポラツズマブ ベドチンは正常細胞への影響を抑えつつCD79bに結合し、送達された化学療法剤によりB細胞を破壊すると考えられている。



なお、「トレアキシン(R)」の液剤タイプであるRTD製剤が2021年1月から販売開始となり、同年12月にはFD製剤からすべて切り替えを完了した。
また、RI投与については2022年2月に販売承認を取得しており、2023年12月末時点で全体の90%がRI投与に切り替わっている。
RI投与は静注時間を従来の60分から10分に短縮することで、医療従事者及び患者の負担を大幅に軽減できることになるためだ。


(2) 後発医薬品の影響について
2022年2月、RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品について4社(東和薬品 (TYO:4553)、ファイザー(株)、Meiji Seikaファルマ(株)、コーアイセイ(株))が販売承認を取得したことを発表した。
また、このうち東和薬品とファイザーが同年11月にRI投与での販売承認を取得したことも発表している。
2022年6月より東和薬品が販売を開始したのに続き、同年12月よりファイザーが販売を開始している。
2022年までは販売面での影響がほとんどなかったものの、2023年1月時点で90%超あった同社のシェアが、同年12月には約60%まで低下し徐々にシェアが侵食される状況となっている。
薬価が先発品の約43%と薬価差が大きかったことに加え、ファイザーが発売を開始したことが影響したと見られる。
とは言え、その他の抗がん剤のケースと比較すると後発品発売以降のシェア低下スピードは緩やかとなっている。
これはKOL及び全国の血液内科医療従事者と広範なネットワークを構築し、定期的にセミナーを開催するなどして最新の情報提供を行ってきたことや、先発品としての安全性の高さが評価されているものと考えられる。
また、薬価差は大きいものの、抗がん剤の価格としては低価格帯にあり、医療機関の購入基準として薬価のプライオリティが比較的低いことも一因と同社では見ている。


なお、同社は後発医薬品を発売した2社に対して、ライセンス元であるイーグル社と共同で特許権侵害に基づく後発医薬品の製造販売差止及び損害賠償請求を2022年12月に東京地方裁判所に提訴したが、最終的な判決結果が出るまでにはしばらく時間を要すると見られ、「トレアキシン(R)」については今後も緩やかにシェアが低下していくと同社では想定している。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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