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2016年3月期第2四半期決算でもこの言葉は守られた。
しかし、2ケタの増収・増益を継続することは容易ではない。
それができた理由として、同社が掲げる「シェア拡大」「エリア拡大」「事業領域の多角化」「新規事業の拡充」という4つの成長戦略が着実に進展していることが挙げられる。
さらに、景気回復による昨今の人手不足から人材確保のためのコストが増加するリスクがあるなかで独自のコスト削減戦略を進め、セクター平均に比べて高い売上高営業利益率を維持している点も重要戦略と言えよう。
以下にこれらについて説明する。
(1)成長戦略 a)シェア拡大 同社の最大の特徴は、「ハイブリッド派遣」とよばれる特殊な派遣方式にある。
これは同社の正社員(フィールドサポーター)が派遣スタッフとともに派遣先に就業する。
正社員が一緒に働きながらマネージメントをすることで、派遣スタッフの士気が高まり、業務効率が高まるほか、正社員と派遣先の現場責任者とが密な関係を築くことができ、増員計画など、クライアントのニーズに素早く対応できる。
これに加えて同社は、業種特化型にすることによって、総合的なサービスを提供している大手企業に比べて、さらに手厚い対応ができている。
特化する業種は大手があまり手掛けたがらない分野が多く、競争の少ないニッチ市場である。
しかも、ニッチとはいえ、人材不足が深刻化している業種であり、今後かなりの市場拡大が期待できる。
同社はそういった分野を発掘しているという点も大きな特長と言えよう。
しかし、同社が成長戦略に掲げるシェア拡大とは、実はハイブリッド派遣を増やすことによって、シェアを他社から奪うことではない。
一般派遣からハイブリッド派遣や業務請負へ、あるいは、ハイブリッド派遣を業務請負へとクライアントからの受注形態を最終的には業務請負に移行させることを指す。
なぜならば、一般派遣、ハイブリッド派遣、業務請負のうち、最も利益率が高いのは業務請負だからである。
実はハイブリッド派遣は一般派遣に比べて利益率は高くない。
しかし、他社からシェアを奪うのに有効であるだけでなく、信頼関係を深めることによって、業務を丸ごと引き受ける業務請負に受注が移行する可能性が高くなるという優位性がある。
b)エリア拡大 同社は支店の拡大による事業規模の拡大を進めている。
同社への取材によれば、ファクトリーアウトソーシング事業で国内の空白エリアがまだたくさん存在しており、工場近辺などで地方拠点の更なる上積みを図ることを掲げている。
c) 事業領域の多角化 同社はM&Aによって、既存事業の周辺領域多角化を進めて行く方針を打ち出している。
2015年9月にはクリエイティブバンクを買収し、セールスアウトソーシング事業において対面販売員派遣サービスとの親和性が高い広告代理店業への進出を果たした。
そのため、2015年3月期より、EBITDAを指標の1つとして投資家に提示している。
d)新規事業の拡充 同社は、主要3事業に続く第4、第5の柱を創出すべく新規事業の拡充に注力している。
介護職派遣、ネット人材紹介、海外事業を重点項目として掲げる他、さらなる布石としてコーポレートベンチャーキャピタルを通じたシードベンチャー投資を実施している。
(2)人材確保のコスト削減戦略 景気の回復から人材不足が日本経済の大きな問題になっている。
同社も人材確保は足元における最大の課題と位置付けている。
採用のための費用を積めば人材は確保しやすくなるが、利益が圧迫されるためである。
そこで同社は、自社媒体による採用強化の他、費用を極力増やさない独自の戦略でこの問題を乗り切っている。
1つは「リピート採用」、もう1つは「友人紹介」である。
過去に同社で働いていた人材を再度雇用する「リピート採用」、現在雇用している人から友人を紹介してもらう「友人紹介」によって、採用コストがかからないようにしている。
ちなみに同社の人材募集のうち、6割が求人媒体を使った求人で、残りはこれら独自戦略による自社での確保になっており、これによって採用コストの大幅な増加を防ぐことができたとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)