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巴川紙 Research Memo(8):商号変更を実施し事業ポートフォリオの転換で新たな成長を目指す(3)

発行済 2024-10-08 12:08
更新済 2024-10-08 12:15
© Reuters.
*12:08JST 巴川紙 Research Memo(8):商号変更を実施し事業ポートフォリオの転換で新たな成長を目指す(3) ■巴川コーポレーション (TYO:3878)の中期の成長戦略

(3) 機能性シート事業は機能性不織布事業の成長と成熟事業の構造改革の両面作戦
機能性シート事業は2026年3月期に売上高121億円、営業利益で4億円の黒字転換を計画している。
この実現に向け柱となるのが機能性不織布事業の成長と成熟事業の構造改革実行である。
機能性不織布事業で、2026年3月期に売上高35億円(2024年3月期比16.6億円増)まで拡大し、機能性シート事業で最大の売上となる。
機能性不織布では特殊抄紙技術を生かした「フッ素繊維シート」「ステンレス繊維シート」「機能性材料担持シート」、多層塗工技術による「インクジェット光沢紙」など数多くの製品が生み出されている。
また各種シートに機能を付与することで無限の可能性を探索している。
足元では中国向けの低迷で停滞を余儀なくされたが、現在中国以外での開拓、加えて新規案件の引き合いがあり、これらの獲得を見込んでいる。
また成長戦略として、機能性材料のシート化とモジュール化により物理特性を最大限引き出し、ソリューションを提供する。
横展開にも注力し、半導体関連部品への半製品供給拡大につなげていく。
その成果が「フレキシブル面状ヒーター」や「高性能ヒートシンク材」として結実している。


現在、フッ素繊維シートは世界で同社しか製造していないポリ4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン=PTFE)繊維100%の多孔質薄葉シートである。
電気的特性(誘電率や誘電正接が低く、絶縁性)のほか、難燃性、非粘着性、耐候性、無毒性、低摩擦係数などの優れた特性を有す。
用途として濾過分離用、低・高誘電率プリント基板材などでの利用が期待される。


またセラミックシートは耐熱ロックウール、AES(アルカリアースシリケート)ウール、アルミナファイバーなど、セラミックファイバーに少量の有機バインダーを添加しシート化することが可能で、主体となる原料を損なわずその特性を最大限に引き出す事が可能で、各種燃焼機器の断熱材、高温部クッション材、ガスケット・パッキン材、金属・セラミックなどの熱処理工程、目地材、各種電池の断熱材など幅広い用途で使用が見込まれる。


一方で、製紙については、さらなる構造改革を進める計画で、2026年3月期は売上高21億円(2024年3月期比4.9億円減)、塗工紙も収益最大化のために設備関連事業を見直し売上高8億円(同5.2億円減)と、構造改革で損益改善を加速する計画。
利益面では機能性不織布拡大による収益拡大、構造改革による損益改善で懸案の営業利益黒字化を実現する計画である。


(4) セキュリティメディア事業は新市場・新素材開拓で活路
セキュリティメディア事業は子会社の昌栄印刷が事業を担っているが、2026年3月期売上高42億円(2024年3月期比1.8億円減)、営業利益2.3億円(同2億円減)を見込む。
足元ではコンビカード化対応などで収益が好調に推移も、伸び率が鈍化する。
原材料高などのコスト増に対し価格転嫁が追い付かず、利益面では悪化が続く見通し。
このような環境に対し、コンバージョンシート(PET混抄紙)を利用した環境配慮型クレジットカードや新規業種への拡大など、新市場・新素材開拓で活路を見出す計画である。



4. 修正第8次中期経営計画達成は半導体関連、環境配慮型製品の成長産業への拡販が鍵
これまで見てきたように、同社の修正8次中期経営計画達成のためには、半導体関連の新製品拡大、環境配慮型製品の成長産業への拡販が鍵となるとみられる。
現状、半導体産業向けでは、既存製品がどちらかというとレガシー半導体向けの製品群となっているが、半導体生産の回復が遅れていること、また中国でもレガシー半導体が在庫調整の影響もあり2024年3月期は伸び悩んだ。
また最も期待していたと思われる「新型静電チャック」が開発方針見直しとなったことで、2025年3月期も成長は見込めない。
ただし、ここにきて半導体生産が過去最高水準に回復、レガシー半導体についても適正在庫に近付き、生産の再拡大が見込まれる。
このような中で半導体製造装置の受注も急回復している。
現在、半導体製造工程でも省エネ、また微細な制御などが求められ、同社の各種機能性シートの優位性が生かせる分野が広がっており、それらを利用した「フレキシブル面状ヒーター」や「高性能ヒートシンク」などで引き合いが拡大している。
このため、従来のレガシー半導体ビジネスに先端半導体関連ビジネスが加わることで中期経営計画の半導体・ディスプレイ関連事業の収益達成が見込まれる。
今後についてもいかに先端半導体製造に係わっていけるかが鍵となる。
この点では話題となっている2.5D、3D半導体などの製造に係わる新製品の投入などが課題となろう。
特に従来にも増して後工程の重要性、またチップレット技術では中工程も重要な成長分野となる。
同社は半導体実装用テープで高いシェアを有しており、今後、この技術の延長線で新製品の拡大も期待できよう。
AI半導体においては基板の大型化から、ガラス基板の採用も話題となっており、従来の光学フィルム関連で培った技術が生かせる可能性もある。
またAIサーバーを駆使したAIデータセンターでは電力消費削減、とりわけ熱対策が重要で、AI半導体の放熱対策など新たな事業展開にも期待が持てる。


半導体産業以外では、環境配慮型ビジネスとして機能性不織布の新たなニーズの発掘と成長産業への応用製品の提案で新たな展開が期待される。
既にステンレスシートや銅繊維シートなどはシート加工やモジュール化で半導体製造装置向けに売上拡大が加速しているが、その他の素材を使った不織布についても物理特性を最大限に引き出し、機能性材料を担持した新製品の横展開が期待される。
特に半導体以外でも2次電池製造や再エネ関連、防音・遮熱・電磁波遮断など、応用範囲が広がることで売上が拡大するとともに、付加価値提供で収益性も高まるとみられ、同社の新たな収益源として期待される。


全体を通じて、光学フィルムに対し慎重な計画となっていること、トナー事業について収益の回復が着実に進むことなどを考慮すると、同社修正第8次中期経営計画については大きく上振れすることは難しいものの、計画達成は十分に可能とみられ、2026年3月期以降はさらなる事業拡大の可能性も期待される。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)

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