ニッポンインシュア Research Memo(7):2025年9月期は引き続き増収増益を見込む

発行済 2025-01-10 15:37
更新済 2025-01-10 15:45
© Reuters.
*15:37JST ニッポンインシュア Research Memo(7):2025年9月期は引き続き増収増益を見込む ■今後の見通し

1. 2025年9月期業績の見通し
2025年9月期の業績は、売上高3,622百万円(前期比12.5%増)、営業利益516百万円(同23.5%増)、経常利益517百万円(同26.2%増)、当期純利益360百万円(同28.6%増)と増収増益を見込んでいる。
売上面では引き続き、基本方針である新規取扱店数の拡大と保証契約件数の増加を積極的に目指す。
前述のとおり、ニッポンインシュア (TYO:5843)は不動産管理会社から派生した家賃保証会社であることから、不動産管理会社に寄り添い、ニーズに即した商品を提案し、契約につなげるというビジネススタイルにより、積極展開する計画だ。
同社によると、既存顧客の不動産管理会社との関係強化から、他の不動産管理会社の紹介を受けており、強みとなっているようだ。
地元福岡のほか、首都圏の東京や神奈川を中心に、主要都市の大阪、名古屋、新潟、仙台エリアでも顧客開拓を進めている。
これら地域は市場規模が大きく、家賃相場も高いため、同社は開拓余地が大きいと判断し、引き続き営業活動を積極展開する。
既存の不動産管理会社に対しては、新たなサービス提案を鍵に営業活動を推進し、シェアアップを図る。
不動産業界の課題を機敏に捉えるほか、不動産管理会社が直面する課題、例えば入居者の孤独死や近隣トラブルなど実務的な問題から、収益力強化や業務効率化といった経営課題に対して真摯に向き合い、基本パッケージをカスタマイズして最適ソリューションを提案する。
コンサルティングを中心に据えた営業活動を進めることで、契約数を拡大する考えだ。
売上高の伸び率は2024年9月期と同程度と控えめで、同社は十分達成可能と見込んでいるようだ。


利益面では収益確保とデジタル化推進による業務効率化の2点が柱となる。
収益確保については、KPIの求償債権発生率と求償債権回収率の管理を徹底し、積極的な契約獲得の推進と並行して厳格な審査を継続するほか、契約後のモニタリングにより求償債権の発生そのものを抑制する。
発生した求償債権については、システム化により督促処理の初期段階で効率的に進め、培ったノウハウで回収業務をより早期かつ確実に実行し、貸倒債権発生を抑制する。
デジタル化推進については、既に受付や契約の段階では申込書類等のOCR※1導入や電子申込システムとの連携、RPA※2による自動化処理等を実施しているほか、顧客への連絡や督促に関してはSMSの活用や、オートコール、AIオペレータの活用等を実装済である。
システム投資を進め処理能力を増強することで、契約件数の増加に対して人材を増員することなく、業務効率化とコスト削減を図る。
2025年9月期は特に大きなシステム投資を予定していないが、利益成長とのバランスを取りながら業界や顧客ニーズを見据え、必要な投資を行う方針である。
一方、生産性向上に向け顧客対応力を強化すべく、従業員の能力開発を推進することから、人材関連投資による費用増加の可能性もあり、各段階利益の伸び率は前期と比べ控えめな見通しとなっている。


※1 紙文書をスキャナーで読み込み、デジタル化する技術を指す。

※2 パソコンで行っている事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術を指す。


2. 事業環境
賃貸不動産業界においては、これまでは賃貸借契約に際して入居者に連帯保証人を要求するのが一般的であったが、最近は家賃保証制度への加入を必須とする契約が増加している。
背景としては、都市部での単身世帯のほか、単身高齢者や外国人居住者の増加等といった要因が挙げられる。
加えて、2020年4月に施行された改正民法で、連帯保証人の弁済に「極度額」を設定し、確定的な具体的金額を契約書に明記することが義務付けられたことも一因である。
連帯保証人のリスク量が明示されることにより、連帯保証人になることを回避する傾向が増加したことや、賃貸物件のオーナーにとっては連帯保証人に対して極度額を超える家賃債権を請求できなくなる等のデメリットが顕在化した。
これらを受け、入居者に対して家賃保証制度への加入を求める賃貸借契約が増加した。
国土交通省による2021年の調査(家賃債務保証業者の登録制度に関する実態調査)では、賃貸借契約の80%で家賃債務保証業者が利用されており、今後も家賃債務保証に対する需要は増加すると考えられる。


国土交通省では家賃債務保証制度の普及に向けて、一定の要件を満たす家賃債務保証業者登録制度を2017年10月に創設した。
2024年9月30日現在108者が登録されており、家賃債務保証業を適正かつ確実に実施できる保証業者として、業務体制や業務適正化のためのルールの遵守などの要件が定められている。
違反行為に対しては指導や登録の抹消が適用される。
賃貸物件の借主が安心して家賃債務保証業者を活用できるよう、国を挙げて情報提供を推進している。


(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)


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