◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年冬号 −10年後の日本未来予想図』(10月5日発売)の特集『アマゾン・エフェクトの脅威』の一部である。
全9回に分けて配信する。
米アマゾン・ドット・コムの急成長・急拡大による市場での混乱や変革。
一大現象となっているアマゾン・エフェクト。
実店舗からオンラインへと消費者購買行動が移行し、米国内の百貨店やショッピングモールが閉鎖に追い込まれるなど、既存の消費関連企業に衝撃をもたらした。
同社のさらなる買収や事業拡大は他の分野にも広がっており、その影響で収益低下が見込まれる「アマゾン恐怖銘柄指数」なるものまで設定された。
アマゾン・エフェクトとはいかなるもので、これから日本にもどのような影響を及ぼすことになるのか。
アメリカで起こったことを検証しながら考察してみた。
■アマゾンが1.5兆円でリアル店舗を買収した衝撃 アマゾン・エフェクト
この言葉は、アマゾンの急成長に伴い、様々な市場で進行している混乱や変革などの現象を指し、あらゆる企業・産業をのみ込むことを意味する言葉だ。
全米で吹き荒れる小売業の店舗閉鎖、ショッピングモールの閉店はアマゾン・エフェクトがもたらした最もわかりやすい影響である。
そんななか大きな話題になったのが、2017年8月に行われた、高級食品スーパー「ホールフーズ・マーケット(以下、ホールフーズ)」の買収だ。
アマゾンは、総額137億ドル(約1兆5,000億円)を費やし、ホールフーズが北米で展開する約460のリアル店舗網を手に入れた。
買収完了時の発表資料では、アマゾンのワールドワイド・コンシューマー部門の責任者が「最高品質にこだわるというホールフーズの理念から離れることなく価格を下げる」とコメントしている。
その言葉のとおり、買収が完了した2017年8月28日から、ホールフーズの店舗では一部商品を値下げした。
こうした動きにマーケットも大きく反応した。
買収完了をアマゾンが発表すると、アマゾン株は上昇。
一方でアマゾンとの競合が予想される食品スーパーのクローガーやスプラウト・ファーマーズ・マーケット、米小売り最大手のウォルマート・ストアーズ、会員制卸売りのコストコ・ホールセールといったアメリカを代表する小売銘柄の株価は軒並み下落した。
これまでは、ネット通販の「アマゾン」だったが、全米で450店舗をもつホールフーズを買収したことで、アマゾンがリアル店舗とネット通販の融合に向けて本格的に動き出したことが明確になった。
融合の一端は、アマゾンの有料会員サービス「アマゾン・プライム」会員が、ホールフーズで買い物するときに得られる特典からも見てとれる。
アマゾン・プライム会員は、ホールフーズで買い物をすると5%割引になるが、単に5%安くなるのではなく、アマゾンのアカウントにギフトカードとしてその分が貯まっていく。
そのギフトカードを使ってアマゾンのECサイトで買い物をすると、そこでもアマゾン・プライム会員は5%引きになる。
こうしたアマゾンが用意する様々な仕組みによって、消費者はアマゾンから離れられなくなる。
その根幹を担うのが有料会員制サービス「アマゾン・プライム」になっている。
■消費者をアマゾンに囲い込む「アマゾン・プライム」
「アマゾン・プライム」は、2005年にアメリカで始まり、日本でも2007年から始まった会員制サービスだ。
国によって料金は異なるが、アメリカでは、2018年8月現在、月額12ドル99セント(年額155.88ドル)、年額一括払いは年99ドルとなっている。
また、「プライム・スチューデント(Prime Student)」という学生向けの料金設定を行っており、月額6ドル49セント(年額77.88ドル)、年額一括払いは年49ドルだ。
日本はアメリカより安い価格設定になっており、年額一括払いは3,900円、月額400円(年額4800円)。
学生向け「プライム・スチューデント」は年額1,900円、月額200円(年額2400円)となっている。
プライム会員になると、当日配送が無料になり、「プライム・ビデオ」「アマゾン・ミュージック」のビデオや音楽が無料で視聴できる。
また、「プライム・リーディング」では対象の本・マンガ・雑誌が読み放題になるほか、無制限のフォトストレージ「プライム・フォト」が利用可能になるなど、多くの特典を受けられる。
これまで会員数は公表されていなかったが、2018年4月にアマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が株主宛ての書簡で、会員数が全世界で1億人を突破したことを明らかにした。
そのうち8,500万人ほどが米国での会員とみられている。
(つづく~「アマゾン・エフェクトの脅威vol.3 「アマゾン恐怖銘柄指数」とは【フィスコ 株・企業報】」~)
全9回に分けて配信する。
米アマゾン・ドット・コムの急成長・急拡大による市場での混乱や変革。
一大現象となっているアマゾン・エフェクト。
実店舗からオンラインへと消費者購買行動が移行し、米国内の百貨店やショッピングモールが閉鎖に追い込まれるなど、既存の消費関連企業に衝撃をもたらした。
同社のさらなる買収や事業拡大は他の分野にも広がっており、その影響で収益低下が見込まれる「アマゾン恐怖銘柄指数」なるものまで設定された。
アマゾン・エフェクトとはいかなるもので、これから日本にもどのような影響を及ぼすことになるのか。
アメリカで起こったことを検証しながら考察してみた。
■アマゾンが1.5兆円でリアル店舗を買収した衝撃 アマゾン・エフェクト
この言葉は、アマゾンの急成長に伴い、様々な市場で進行している混乱や変革などの現象を指し、あらゆる企業・産業をのみ込むことを意味する言葉だ。
全米で吹き荒れる小売業の店舗閉鎖、ショッピングモールの閉店はアマゾン・エフェクトがもたらした最もわかりやすい影響である。
そんななか大きな話題になったのが、2017年8月に行われた、高級食品スーパー「ホールフーズ・マーケット(以下、ホールフーズ)」の買収だ。
アマゾンは、総額137億ドル(約1兆5,000億円)を費やし、ホールフーズが北米で展開する約460のリアル店舗網を手に入れた。
買収完了時の発表資料では、アマゾンのワールドワイド・コンシューマー部門の責任者が「最高品質にこだわるというホールフーズの理念から離れることなく価格を下げる」とコメントしている。
その言葉のとおり、買収が完了した2017年8月28日から、ホールフーズの店舗では一部商品を値下げした。
こうした動きにマーケットも大きく反応した。
買収完了をアマゾンが発表すると、アマゾン株は上昇。
一方でアマゾンとの競合が予想される食品スーパーのクローガーやスプラウト・ファーマーズ・マーケット、米小売り最大手のウォルマート・ストアーズ、会員制卸売りのコストコ・ホールセールといったアメリカを代表する小売銘柄の株価は軒並み下落した。
これまでは、ネット通販の「アマゾン」だったが、全米で450店舗をもつホールフーズを買収したことで、アマゾンがリアル店舗とネット通販の融合に向けて本格的に動き出したことが明確になった。
融合の一端は、アマゾンの有料会員サービス「アマゾン・プライム」会員が、ホールフーズで買い物するときに得られる特典からも見てとれる。
アマゾン・プライム会員は、ホールフーズで買い物をすると5%割引になるが、単に5%安くなるのではなく、アマゾンのアカウントにギフトカードとしてその分が貯まっていく。
そのギフトカードを使ってアマゾンのECサイトで買い物をすると、そこでもアマゾン・プライム会員は5%引きになる。
こうしたアマゾンが用意する様々な仕組みによって、消費者はアマゾンから離れられなくなる。
その根幹を担うのが有料会員制サービス「アマゾン・プライム」になっている。
■消費者をアマゾンに囲い込む「アマゾン・プライム」
「アマゾン・プライム」は、2005年にアメリカで始まり、日本でも2007年から始まった会員制サービスだ。
国によって料金は異なるが、アメリカでは、2018年8月現在、月額12ドル99セント(年額155.88ドル)、年額一括払いは年99ドルとなっている。
また、「プライム・スチューデント(Prime Student)」という学生向けの料金設定を行っており、月額6ドル49セント(年額77.88ドル)、年額一括払いは年49ドルだ。
日本はアメリカより安い価格設定になっており、年額一括払いは3,900円、月額400円(年額4800円)。
学生向け「プライム・スチューデント」は年額1,900円、月額200円(年額2400円)となっている。
プライム会員になると、当日配送が無料になり、「プライム・ビデオ」「アマゾン・ミュージック」のビデオや音楽が無料で視聴できる。
また、「プライム・リーディング」では対象の本・マンガ・雑誌が読み放題になるほか、無制限のフォトストレージ「プライム・フォト」が利用可能になるなど、多くの特典を受けられる。
これまで会員数は公表されていなかったが、2018年4月にアマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が株主宛ての書簡で、会員数が全世界で1億人を突破したことを明らかにした。
そのうち8,500万人ほどが米国での会員とみられている。
(つづく~「アマゾン・エフェクトの脅威vol.3 「アマゾン恐怖銘柄指数」とは【フィスコ 株・企業報】」~)