■決算動向
(1) 2017年3月期上期決算の概要
日本アジア投資 (T:8518)の2017年3月期上期の業績(ファンド連結基準)は、営業収益が前年同期比30.3%減の1,905百万円、営業利益が同547.3%増の172百万円、経常利益が20百万円(前年同期は56百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が94百万円(同36百万円の利益)と減収ながら大幅な営業増益となった。
また、従来連結基準でも、営業収益が前年同期比15.7%減の1,649百万円、営業利益が215百万円(前年同期は146百万円の損失)、経常利益が109百万円(同202百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が64百万円(同148百万円の損失)と減収ながら大幅な営業(及び経常)増益となり、営業(及び経常)損益段階での黒字転換を実現した。
また、下期偏重型の通期計画に対してもおおむね計画どおりに進捗しているようだ。
従来連結基準による業績の概要は以下のとおりである。
営業収益は、投資先のIPOが2社※(前年同期は3社)にとどまったことや、国内未上場株の売却(M&A等)を進めたものの、比較的大型案件が少なかったことから、営業投資有価証券売却高が減少した。
※上場企業との株式交換1件を含む
一方、営業総利益が大きく増益となったのは、1)投資損益の改善と、2)メガソーラープロジェクト売電収入の拡大によるものである。
1)投資損益の改善は、国内未上場株を中心とした案件ごとの利幅が拡大したことと、損失処理の一巡(評価損及び繰入額の合算で減少)が寄与した。
また、2)メガソーラープロジェクトについては7件/22.3MW(前年同期は2件/3.9MW)の稼働により売電収入を含め約250百万円を獲得することができた。
加えて、販管費が一過性の特殊要因※により増加した前年同期に比べて減少したことから大幅な営業増益となり、黒字転換を実現した。
※前年同期では他社運営ファンドにおける支払成功報酬が発生。
ただ、最終的に純損失(ただし、前年同期比で損失幅は縮小)となったのは、福島県におけるメガソーラープロジェクトの中止を決定したことにより特別損失※を計上したことが理由である。
電力会社への支払が必要な工事負担金が想定よりも高額となり、これによって当初想定していた投資採算が得られない可能性が高まったことが背景となっている。
なお、本件については、メガソーラープロジェクトに参入した当初の案件であり、自社で開発を進めてきたものであるが、現在は開発業者と組むことにより開発段階で発生するリスクを軽減する仕組みとなっていることから、今後は同様の損失が発生する可能性は小さいものと考えられる。
※長期前払費用130百万円の減損処理。
財務面(従来連結基準)では、自己資本が為替や株価の変動に伴う「その他有価証券評価差額金」の減少により前期末比8.0%減の4,577百万円に縮小した一方、総資産が借入金の返済等に伴う「現金及び預金」の減少や投資資産の売却による「営業投資有価証券」の減少等により前期末比12.6%減の19,826百万円に縮小したことから、自己資本比率は23.1%(前期末は21.9%)に若干改善した。
また、有利子負債残高も前期末比13.4%減の14,652百万円に減少しており、引き続き財務体質の改善が図られている。
業務別の業績は以下のとおりである。
a)投資事業組合等管理業務
同社グループが管理運用等を行っているファンドの運用残高は、ファンド数(17ファンド)に動きはなかったものの、海外ファンドの円高による影響等により36,758百万円(前期末は39,335百万円)に縮小した。
特に、課題となっているファンドの設立については、前述のとおり、2017年3月期中に国内2件、海外1件の組成を目指しているものの、上期においては達成することができなかった。
そのため、当該業務にかかる損益(運営報酬)については、前年同期比41.0%減の177百万円と減少した。
「管理報酬等」が運用残高の縮小に伴い前年同期比26.6%減の177百万円に減少するとともに、「成功報酬」を獲得できなかったこと(前年同期は58百万円)も影響した。
b)投資業務
同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額は、メガソーラープロジェクトへの投資を含めて前年同期比8.4%減の1,402百万円(20件)にとどまったことや、投資回収も進んだことから投資残高は18,547百万円(前年同期末比0.7%減、前期末比1.3%減)に縮小した。
なお、メガソーラープロジェクト向け(10件/794百万円)を除くと、「環境・エネルギー」や「IT・インターネット関連」「医療・介護・バイオヘルスケア」などを中心に608百万円(国内8社、海外2社)の投資を行っている。
一方、投資業務にかかる営業総利益については、前述のとおり、投資先のIPOが2社にとどまったことや大型の案件が少なかったことから売却高が減少したものの、案件ごとの投資採算改善(利幅の拡大)により実現キャピタルゲインがわずかに増加するとともに、損失処理についても、良質な営業投資資産への入れ替えを進めてきたことで減少(評価損及び引当金繰入額の合算で前年同期比69百万円の減少)し、投資損益は443百万円(前年同期比25.1%増)に改善した。
加えて、売電収入を含むメガソーラープロジェクトによる収益(約250百万円)の業績寄与により営業総利益は716百万円(同65.4%増)に大きく増加した。
以上から、上期業績を総括すると、1)メガソーラープロジェクトに係る特別損失を計上したことや、2)ファンド設立が達成できなかったことがネガティブ要因となったものの、大幅な営業(及び経常)増益により黒字転換を実現するなど、業績は総じて好調に推移したと言えるだろう。
特に、投資採算の改善や資産の入れ替えに伴う損失処理が一巡してきたことは、基礎体力がついてきたことの証左と評価できる。
一方、2)については、やや将来に対する不安材料となった。
(2) 2017年3月期の業績見通し
同社は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。
ただ、2017年3月期については、ある一定の前提を元に策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。
同社の「従来連結基準による見込値」によれば、営業収益は前期比26.1%増の5,100百万円、営業利益は同747.5%増の700百万円、経常利益は同10.2%減の550百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同37.2%減の375百万円と増収及び2期連続の黒字となる見通しである。
上期業績がおおむね計画どおりの進捗であったことから期初見通しからの変更はない。
なお、営業収益5,100百万円の内訳は、ファンド報酬が450百万円(前期比38.3%減)、投資業務にかかる収益が4,500百万円(前期比36.4%増)、その他に係る収益が150百万円(前期は13百万円)となっている。
したがって、投資業務にかかる収益による業績寄与が大きいが、そこには1)未上場株式の売却のほか、2)メガソーラープロジェクトの一部売却益(5件/17.7MW)、3)メガソーラープロジェクトによる売電収入が含まれている。
特に、1)と2)については第4四半期に集中する想定となっているようだ。
弊社では、下期偏重型の見通しとなっている上、ファンド組成の遅れによる影響は懸念されるものの、上記1)及び2)による売却益の実現に向けて交渉が順調に進んでいることなどを勘案すれば、同社の業績予想の達成は可能であるとみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
(1) 2017年3月期上期決算の概要
日本アジア投資 (T:8518)の2017年3月期上期の業績(ファンド連結基準)は、営業収益が前年同期比30.3%減の1,905百万円、営業利益が同547.3%増の172百万円、経常利益が20百万円(前年同期は56百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が94百万円(同36百万円の利益)と減収ながら大幅な営業増益となった。
また、従来連結基準でも、営業収益が前年同期比15.7%減の1,649百万円、営業利益が215百万円(前年同期は146百万円の損失)、経常利益が109百万円(同202百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が64百万円(同148百万円の損失)と減収ながら大幅な営業(及び経常)増益となり、営業(及び経常)損益段階での黒字転換を実現した。
また、下期偏重型の通期計画に対してもおおむね計画どおりに進捗しているようだ。
従来連結基準による業績の概要は以下のとおりである。
営業収益は、投資先のIPOが2社※(前年同期は3社)にとどまったことや、国内未上場株の売却(M&A等)を進めたものの、比較的大型案件が少なかったことから、営業投資有価証券売却高が減少した。
※上場企業との株式交換1件を含む
一方、営業総利益が大きく増益となったのは、1)投資損益の改善と、2)メガソーラープロジェクト売電収入の拡大によるものである。
1)投資損益の改善は、国内未上場株を中心とした案件ごとの利幅が拡大したことと、損失処理の一巡(評価損及び繰入額の合算で減少)が寄与した。
また、2)メガソーラープロジェクトについては7件/22.3MW(前年同期は2件/3.9MW)の稼働により売電収入を含め約250百万円を獲得することができた。
加えて、販管費が一過性の特殊要因※により増加した前年同期に比べて減少したことから大幅な営業増益となり、黒字転換を実現した。
※前年同期では他社運営ファンドにおける支払成功報酬が発生。
ただ、最終的に純損失(ただし、前年同期比で損失幅は縮小)となったのは、福島県におけるメガソーラープロジェクトの中止を決定したことにより特別損失※を計上したことが理由である。
電力会社への支払が必要な工事負担金が想定よりも高額となり、これによって当初想定していた投資採算が得られない可能性が高まったことが背景となっている。
なお、本件については、メガソーラープロジェクトに参入した当初の案件であり、自社で開発を進めてきたものであるが、現在は開発業者と組むことにより開発段階で発生するリスクを軽減する仕組みとなっていることから、今後は同様の損失が発生する可能性は小さいものと考えられる。
※長期前払費用130百万円の減損処理。
財務面(従来連結基準)では、自己資本が為替や株価の変動に伴う「その他有価証券評価差額金」の減少により前期末比8.0%減の4,577百万円に縮小した一方、総資産が借入金の返済等に伴う「現金及び預金」の減少や投資資産の売却による「営業投資有価証券」の減少等により前期末比12.6%減の19,826百万円に縮小したことから、自己資本比率は23.1%(前期末は21.9%)に若干改善した。
また、有利子負債残高も前期末比13.4%減の14,652百万円に減少しており、引き続き財務体質の改善が図られている。
業務別の業績は以下のとおりである。
a)投資事業組合等管理業務
同社グループが管理運用等を行っているファンドの運用残高は、ファンド数(17ファンド)に動きはなかったものの、海外ファンドの円高による影響等により36,758百万円(前期末は39,335百万円)に縮小した。
特に、課題となっているファンドの設立については、前述のとおり、2017年3月期中に国内2件、海外1件の組成を目指しているものの、上期においては達成することができなかった。
そのため、当該業務にかかる損益(運営報酬)については、前年同期比41.0%減の177百万円と減少した。
「管理報酬等」が運用残高の縮小に伴い前年同期比26.6%減の177百万円に減少するとともに、「成功報酬」を獲得できなかったこと(前年同期は58百万円)も影響した。
b)投資業務
同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額は、メガソーラープロジェクトへの投資を含めて前年同期比8.4%減の1,402百万円(20件)にとどまったことや、投資回収も進んだことから投資残高は18,547百万円(前年同期末比0.7%減、前期末比1.3%減)に縮小した。
なお、メガソーラープロジェクト向け(10件/794百万円)を除くと、「環境・エネルギー」や「IT・インターネット関連」「医療・介護・バイオヘルスケア」などを中心に608百万円(国内8社、海外2社)の投資を行っている。
一方、投資業務にかかる営業総利益については、前述のとおり、投資先のIPOが2社にとどまったことや大型の案件が少なかったことから売却高が減少したものの、案件ごとの投資採算改善(利幅の拡大)により実現キャピタルゲインがわずかに増加するとともに、損失処理についても、良質な営業投資資産への入れ替えを進めてきたことで減少(評価損及び引当金繰入額の合算で前年同期比69百万円の減少)し、投資損益は443百万円(前年同期比25.1%増)に改善した。
加えて、売電収入を含むメガソーラープロジェクトによる収益(約250百万円)の業績寄与により営業総利益は716百万円(同65.4%増)に大きく増加した。
以上から、上期業績を総括すると、1)メガソーラープロジェクトに係る特別損失を計上したことや、2)ファンド設立が達成できなかったことがネガティブ要因となったものの、大幅な営業(及び経常)増益により黒字転換を実現するなど、業績は総じて好調に推移したと言えるだろう。
特に、投資採算の改善や資産の入れ替えに伴う損失処理が一巡してきたことは、基礎体力がついてきたことの証左と評価できる。
一方、2)については、やや将来に対する不安材料となった。
(2) 2017年3月期の業績見通し
同社は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。
ただ、2017年3月期については、ある一定の前提を元に策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。
同社の「従来連結基準による見込値」によれば、営業収益は前期比26.1%増の5,100百万円、営業利益は同747.5%増の700百万円、経常利益は同10.2%減の550百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同37.2%減の375百万円と増収及び2期連続の黒字となる見通しである。
上期業績がおおむね計画どおりの進捗であったことから期初見通しからの変更はない。
なお、営業収益5,100百万円の内訳は、ファンド報酬が450百万円(前期比38.3%減)、投資業務にかかる収益が4,500百万円(前期比36.4%増)、その他に係る収益が150百万円(前期は13百万円)となっている。
したがって、投資業務にかかる収益による業績寄与が大きいが、そこには1)未上場株式の売却のほか、2)メガソーラープロジェクトの一部売却益(5件/17.7MW)、3)メガソーラープロジェクトによる売電収入が含まれている。
特に、1)と2)については第4四半期に集中する想定となっているようだ。
弊社では、下期偏重型の見通しとなっている上、ファンド組成の遅れによる影響は懸念されるものの、上記1)及び2)による売却益の実現に向けて交渉が順調に進んでいることなどを勘案すれば、同社の業績予想の達成は可能であるとみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)