[東京 5日 ロイター] - 菅義偉首相は5日夕、内閣記者会とのインタビューに応じ、日本学術会議が推薦した新会員候補のうち6人の任命を拒否したことに関して、総合的・俯瞰的活動を確保する観点から判断したもので、学問の自由とはまったく関係ない、との見解を示した。
菅首相は、日本学術会議の任命問題に関し、推薦された会員をそのまま首相が任命する前例を踏襲することに疑問があったと説明し、今後丁寧に説明していくと述べた。
日本学術会議の新たな会員候補の一部の任命が見送られたことをめぐり、野党は任命の見送りの理由などを説明するよう政府に求めており、政府の人事介入との指摘も一部に出ている。
菅首相は「日本学術会議は、法律にもとづいて内閣法制局の確認のもとで、学術会議の推薦者のなかから、首相として(会員を)任命している。政府の機関であり、年間約10億円の予算で活動している。任命される会員は、公務員の立場だ」と説明。
会員の人選は推薦委員会などの仕組みがあるものの、「現状では事実上現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組みとなっており、推薦された方をそのまま任命して来た前例を踏襲してよいのか考えてきた」と釈明した。
さらに「日本学術会議については、省庁再編の際、そもそもその必要性を含めてその在り方について相当の議論が行われ、その結果として総合的、俯瞰的活動を求めることにした。まさに総合的、俯瞰的活動を確保する観点から、今回の人事も判断した。このようなことを今後も丁寧に説明していきたい」と強調した。
<国際金融センター構想、東京以外も念頭>
来年夏に延期された東京五輪・パラリンピックに関し、感染防止のため観客数を絞る可能性に関し、「観客のありかたについては、先般立ち上げられた国と東京都、大会組織委員会などが参加する調整会議のなかで今後議論が進められる」と指摘した。
2020年度3次補正予算の是非に関し 「雇用や事業継続を最優先にしている」として「必要があれば新型コロナ対策の予備費を活用する。必要に応じて、政府が対応したい」と前向きな姿勢を示した。
東証のシステム障害については、「投資家の投資機会が制限されたことは大変遺憾」としたうえで、「東証において徹底した原因究明および万全の再発防止などを求める」と述べた。「国際金融センターの構築のためにも適切なインフラが構築されることは極めて重要」と強調した。
国際金融センター構想については「東京は現在でも日本のマーケットの中心的存在で、当然東京も発展することを期待しているが、他の地域でも金融機能を高めることができる環境を作っていきたい」と述べた。
<外交環境は予見しにくい、近隣諸国と安定的関係を>
就任後、米中ロなど各国首脳と矢継ぎ早に実施した電話会談について、「手ごたえを感じている」と述べた。内定しているベトナムとインドネシア訪問については明言せず、「今後の外遊先は『自由で開かれたインド太平洋』の推進を念頭におきながら、今後の国際情勢や各国の新型コロナ感染状況など踏まえ、タイミングや訪問先を総合的に判断したい」と述べるにとどめた。
日本の置かれた外交環境について、「コロナ対応のなかで高まった自国主義や米中関係の緊張などとあいまって、これまで以上に予見しにくい」と指摘。そのなかで「日米同盟を基軸として政策を展開する必要があり、自由で開かれたインド太平洋を戦略的に推進する」としつつ、「中国・ロシアを含む近隣諸国と安定的な関係を築いていきたい」と強調した。
安倍晋三前首相が辞任直前に談話で示した敵基地攻撃能力の保有検討に関して、「日米の基本的役割の分担を変えることなく、憲法の範囲内で、国際法を順守しつつ、専守防衛の考え方のもと、厳しい安保環境においてもわが国の平和と安全を守る方策について、今後与党としっかり協議しながら引き続き検討したい」と回答した。
経営不安の続ているJR北海道に関し、「2年間で400億円を超える経営支援を行っている。来年以降の支援のあり方は地域の関係者の意見も伺いながらしっかり検討したい」と指摘した。
(竹本能文)