[ワシントン 10日 ロイター] - 米労働省が10日に発表した5月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前月比1.0%上昇した。市場予想は0.7%上昇だった。4月は0.3%上昇していた。
前年同月比では8.6%上昇。1981年12月以来、40年5カ月ぶりの大幅な上昇率を記録した。4月は8.3%上昇だった。市場では4月がピークになると予想していた。
ガソリン価格が過去最高となり、サービス価格も上昇したのが5月のCPI上昇率加速につながった。米連邦準備理事会(FRB)は、高インフレ対策として9月まで50ベーシスポイント(bp)の利上げを継続する可能性がある。
米国自動車協会(AAA)によると、5月のガソリン価格は1ガロン当たり平均4.37ドル。10日には1ガロン当たり5ドルに迫っており、6月のCPIも高止まりが予想される。
家賃、ホテル宿泊、航空券などのサービス価格も高水準だった。モノからサービスへの支出のシフトがインフレを抑えるとの期待感もあった。だが、労働市場の逼迫で賃金が上昇し、サービス価格も上昇した。
食品価格は1.2%上昇した。乳製品および関連製品の価格は2.9%上昇し、07年7月以来最大の上昇幅となった。ロシアのウクライナ侵攻や中国の新型コロナウイルス対策によるサプライチェーン寸断が影響したとみられる。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.6%上昇となり、伸び率は4月と同じだった。コア指数の押し上げに寄与したのは家賃だった。
コア指数は前年同月比で6.0%上昇。4月は6.2%上昇していた。インフレ率は全ての指標でFRB目標の前年比2%をはるかに上回っている。
航空運賃は4月の18.6%の大幅上昇に続き、5月も12.6%上昇した。中古車・トラック価格は3カ月連続下落していたが、5月は1.8%上昇に転じた。新車価格は1.0%上昇、医療費は0.4%上昇となった。
BMOキャピタル・マーケッツ(トロント)のシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は「金融引き締めに反応してエネルギーと食品の価格が落ち着き、過剰需要圧力が弱まるまで、40年ぶり高インフレから解放されることはまずないだろう。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利引き上げ幅は依然として50bpにとどまるとみられるが、インフレが高水準で推移すればそれ以上のペースで引き上げる事態にも容易になり得る」と述べた。
ロヨラ・メリーマウント大学のサン・ウォン・ソン金融・経済学教授は「FRBはインフレ対策で大幅に後手に回り、断固として対応する必要があると今は認識している」とし、「今後数年間でスタグフレーションが発生する公算が大きく、景気後退(リセッション)に陥る可能性も高まっている」と語った。
ラザード・アセット・マネジメント(ニューヨーク)の米株責任者、ロン・テンプル氏は「労働市場が過去数十年で最も引き締まった状態にある中、雇用主は賃金を引き上げざるを得なくなっており、サービス価格の上昇につながっている」とし、FRBはこうした賃金と物価の連動を断ち切るという大きな難題に直面しているとの見方を示した。