トランプ米大統領がNAFTA新協定(USMCA)にこぎつけた一方、中国との貿易交渉やイランとの核合意が進展していない。
商品トレーダーにとってこれらは、銅が2.50ドルを下回り、原油が100ドル以上になると見込んでトレードする機会になるかもしれない要因だろう。
NAFTA新協定(USMCA)を受けて、米国株式市場は、第4四半期のはじめの日(10月1日)好調な出だしであった。ダウ平均は200ポイント近く上昇した。
ブレント原油 が3%上昇し、4年間の高値である85ドルを超えている。この上昇は米国の11月4日に発動するイランの輸出への制裁の影響を受けていると考えられる。ウォールストリートのアナリストの多くは、ブレント原油は年末または来年の早いうちに100ドルを超えると予想している。
米国の銅は0.6%だけ下落したが、銅はインフラの材料として欠かせない資源であり、中国から需要によって注目されている。
ニューヨークの50 Park Investments社のAdam Sarhan CEOはトランプ米大統領の中国との貿易合意によって、「銅が現在から取引協定の間で2.50ドル以下になる可能性がある。銅を売るように顧客に促している」と語る。銅は月曜日、1ポンドあたり2.788ドルで終値を迎えた。
一部の経済学者や外交政策の専門家によると、トランプ大統領が掲げる「工場を自国に戻す」という公約に沿ってなされたメキシコ/カナダの合意は、自動車や製品のコストを大幅に上げる可能性があるという。そのため今回の合意は、せいぜいアメリカ徐々に利益がある程度だと考えられる。トランプ政権は自ら危機を作り、そして合意(解決)する」とマギル大学の世界貿易と政治学の教授であるKrzysztof Pelc氏は述べている。
Pelc氏はUSMCAに対し「とにかく合意したことで、不確実性は結果的に取り払われた」と語る。
「合意に至らない可能性や、結果的に曖昧になることが既に市場に反映されていたので、この合意に市場が反応するのも当然だ」
焦点だった乳製品
関係者によると、USMCA協定下でカナダは米国に約160億ドルのカナダ国内乳製品市場の内3.5%の開放をするとロイターが伝えた。また、カナダは牛乳のクラスやカテゴリーを廃止することに合意した。これにより米国はカナダの乳製品市場に効果的に参入できる。
歴史学者であり政策アナリストであるMax Boot氏はワシントン・ポストの記事で、米国とカナダは去年4億7400万ドルの余剰乳製品を抱えていることが注目されていると強調している。米国の乳製品企業は、米国消費者がカナダから買う総額より、5倍乳製品をカナダに売っている。Boot氏は「いずれにせよ、乳製品はアメリカとカナダの貿易の0.06%を占め、その乳製品の99%はすでに無関税である」と綴っている。
米国乳製品先物市場は月曜日、USMCAを受けて少しだけ上昇した。CMEのデータによると、この中では最も Class III Milkが活発に取引されて0.6%の上昇をし、19.90で終値を迎えた。
米国内乳製品企業にとって良い合意が予想されたために、米国乳製品価格は9月2日に16.99セントになり10ヶ月間中の最高値に達している。
USMCA合意の隠れた意義はメキシコで安く作った自動車をアメリカ市場で売ることを避けることだが、Boot氏は自動車企業が究極的には2.5%の税金をはらって、メキシコ工場を維持する可能性もあるという。また、代価案として従業員からロボットに変え、北アメリカの外で組み立てることもあり得る。Boot氏はUSMCAについて「米国の消費者や、自動車産業の従業員がどのような形で利益があるのかを判断するのは難しい」と語った。
中国とイランの状況は複雑
USMCAの例を参考にすれば、トランプ米大統領の策略によって中国やイランを疲弊させて、有意義な外交的成功を狙うかもしれない。St. Charles社の穀物アナリストのDan Hueber氏は「確かに、1つが(カナダがトランプ大統領の策略に)落ちれば、同様にあと2つ(中国、イラン)こなす期待がある」と、トランプ米大統領のUSMCAを例にしてこのように語った。
トランプ米大統領は月曜日、「中国は私たちとかなり貿易交渉をしたがっている」と述べたが貿易交渉は見合わせている。先月、米国はさらに2000億ドル相当の中国製品に10%の関税をかけたが、中国も報復措置として600億ドルのアメリカ製品に対し関税を課した。
CMEで大豆が1ブッシェルあたり8.64ドルとなり6週間の高値になった。これは一度中国からの需要があると、市場が回復するということを示している。そしてこれは、一部のトレーダーは、米国と中国のどちらも合意を急いでないというサインとして判断できるとHueber氏は語った。
トランプ政権は、イランの弾道ミサイルプログラムや核関連の活動について監視しており、イランの地政学的リスクを制限しようとしている。イランはそのような条項の交渉を拒否し、EUが支持するオバマ政権時代の核合意に執着している。
「欧州は効果的にイランの核活動を止めていたオバマ政権時代の合意支持の姿勢なので、イランのトランプ米大統領の制裁に対する回避方法(or 次善策)は、有効だろう」と、ファンドマネージャーであるSarhan氏は述べた。また、「よって、原油は100ドル近くになる可能性があり、イランは一部原油を輸出することによって恩恵を受けるだろう」と付け加えた。