火曜日の米国株は急落し、その下落は通貨の下落も招くこととなった。前回のFRB(米国連邦準備制度理事会)の発言や指標による売りとは異なり、今回はテクノロジーセンターへの強い売りによって米国株式相場が下落することとなった。
豪ドルとカナダドルは投資家のリスク回避姿勢によって、大きく下落した。投資家は米国資産に代わる安全資産へのシフトをしたため、米ドルは日本円とスイスフランを含む他の主要通貨に対して上昇することとなった。
特に米ドル/円の回復には驚くこととなった。直近の米国経済指標やFRBによる発言が米ドル高を招くとは考えにくかったからである。住宅着工件数は予想を下回り、建築許可件数は下落する結果であった。
そして、 私たちは水曜日に発表予定の耐久財受注と中古住宅販売件数が相場を動かす材料であるとは考えていない。米国株の売り姿勢、引き続き緊迫する日米貿易、FRB関係者からの警戒感を含むコメントが続く中では米ドル/円(USD/JPY)は安値で取引されるであろう。特にトランプ米大統領がFRBに対して金利を下げるよう再び言及した場合はなおさらである。
原油価格が引き続き低迷していたため、USD/CADは4ヶ月ぶりの高値をマークした。 来月のOPEC(石油輸出国機構)の会議を前にして原油価格は1年数か月ぶりの最安値まで下落した。
米国、ロシア、サウジアラビアは記録的な水準で原油を産出している。大々的に原油価格を抑えるよう要求するトランプ米大統領は、ムハンマド皇太子によるカショギ氏の殺害指示に関して皇太子を擁護しているため、サウジが減産を実行するとは考えにくい。トランプ政権がイランとシリアのエネルギー会社に対する制裁を加えた翌日、イラン産原油を輸入する8ヶ国に対して制裁適用の除外を認めた。原油価格が下落し続ける限り、USD/CADは6月最高値の1.3386に達する可能性が高い。
また、カナダ銀行が金融政策の重要な変更を行う可能性があることにも注目したい。ウィルキンス副総裁によると、カナダ銀行はインフレ目標の完全な見直しを行い、別の枠組みに切り替えるべきかどうかを確認するとのこと。
豪ドルとNZドルも急落となった。NZドルは乳製品価格によって押し下げられたが、豪ドル/米ドルに関しては単にリスク回避による下落であった。これは、オーストラリア準備銀行の議事録において「今後の政策金利は引き上げを考えているが、短期的な調整を実行するといったケースは考えにくい」という内容を受けてと考えられる。ニュージーランドの乳製品価格は今年度続落となっているが、火曜日に発表された-3.5%が9月以来最大の下落であった。
イタリア、ドイツ国債の金利差の拡大を受け、ユーロ、英ポンドも同様に下落となった。
弊社のボリス・シュロスベルクによると、「クレジットクランチのリスクは抑えられている。しかし市場コンセンサスでは、金利差が400ベーシスポイントにまで拡大すれば、イタリアの銀行への脅威はかなり深刻な状況になる。それが起こる前に投資家は行動する事が賢明だろう。破産のリスクは依然として残っているが、2012年のPIIGS危機の時と同様に、ドイツ/イタリア国債の金利差が今後の重要な基準となるだろう」と述べている。
私たちは依然として英国の不信任投票の動向に注目している。英ポンドの下落は保守党が不信任投票の実施に必要な48通の書簡を獲得できていないことに起因していると考えられ、リスクは引き続き残る。