パウエルFRB議長が利上げの打ち止めが近いことを示唆し、米 ドルは急落となった。USD/JPYはわずかに下落、GBP/USDは上昇、EUR/USDに動きはなかった。「政策金利は中立レンジをわずかに下回る」というパウエル議長の発言は、FRBが来年度の利上げペースを緩めるということを意味する。しかし、水曜日に私が書いた記事では、パウエル議長の発言は予想通りであったと述べた。市場では来年度の利上げに期待感を持っておらず、利上げは2019年に1回程度とみていた。木曜日に発表された米国経済指標はFRBの利上げへの懸念を否定も肯定もしないものとなった。個人所得、支出は予想を上回ったが、新規失業保険申請件数は上昇し、中古住宅販売成約指数は大幅下落となった。一方、FOMC議事要旨はドルを下支えする材料とはならなかった。FOMCメンバーの大半が追加利上げの必要性に関して「早急に」と発言していたが、同時に「緩やかな利上げ」の文言を消すことも議論していた。
今回の議事録において、一部メンバーは12月の会合前に利上げを行う必要性を述べており、ハト派寄りではなかった。しかし、この議事録は今後の政策金利の利上げや、利上げの停止・減速の方針を明らかにするものではなかったため、パウエル議長のハト派の発言を引き続くドル売り相場となった。
消費支出の回復やブラックフライデー/サイバーマンデーでの大きな売上があったとしても、昨日遅くの時点において米国経済が減速していることは間違いないだろう。結果として、USD/JPYは下落し、木曜日にUSD/CHFが上昇することには至らなかった。
為替市場も金曜日のG20首脳会合への懸念感から様子見ムードとなっていた。トランプ米大統領と習近平国家主席は会談を行う予定だが、そこでどういった内容が議論されるのかは不透明だ。米国政府は中国への追加関税発動について示唆しているが、トランプ大統領は木曜日に「我々は中国との貿易改善に前向きである」と発言しており、同氏がどのような意向であるのかはわからない。こういった発言はもちろん、特にトランプ大統領がプーチン大統領との会談を中止したことを受け、投資家に緊張が走っている。しかし、米中間でさらなる会談が設けられることとなれば、米国は追加関税を見送る可能性があるとの報道がある。その場合、株式相場、為替相場ともに反発することとなるだろう。
木曜日最大の出来事はユーロの下落だ。米国がクリスマス前にユーロ圏の自動車に対して関税を課すとの報道を受け、ニューヨーク市場開始時において、ユーロは最も売りが先行した通貨の1つであった。 ドイツ雇用者数の改善、ユーロ圏景況感指数の堅調さが見られたにもかかわらず、関税発動への懸念から投資家は悲観的であった。しかしニューヨーク市場が開始してまもなく、欧州委員会(EC)は関税に関する報道を否定し、EUR/USDは1.14まで反発した。市場のドル安への懸念からユーロは下支えされたと考えられる。金曜日には11月のユーロ圏消費者物価指数予想が発表される。楽観的なドイツの報道によると、「ダウンサイド面のリスクは存在しているが、現在のユーロ相場が上昇していることを考えると、ユーロへの影響は限定的である」とされている。
もう一つの大きな出来事は原油市場に起こった。ニューヨーク市場開始前に、原油価格が1バレル50ドルを下回った。これに伴い、USD/CADは一時1.33を上回る水準で取引された。しかし、ロシアが原油減産について示唆していることを受けて、原油価格は反発し、急上昇した(日中2%上昇で取引終了)。結果的にUSD/CADは上昇せず変動はなかった。金曜日にはカナダの四半期GDPと9月GDPが発表予定である。小売売上高の伸び悩みを受けて、第3四半期の成長率は鈍化すると予想されている。もしその通りであった場合、カナダドルは売られ、USD/CADは米ドル高方向へ推移するとみられる。
英 ポンドへの好材料が出なかったため、引き続き下落を続けていた。ブレグジット(英国のEU離脱)交渉に関する進捗はなく、投資家は苛立ちを見せているだろう。オーストラリアの資本的支出は弱含んだのに豪 ドル買い、ニュージーランドの企業景況感指数は堅調な結果となったにも関わらずNZ ドル売りとなった。