OPECが原油の減産を決定すると共に、サウジアラビアは米国への原油輸出を大幅に削減する計画をしている。しかし、原油トレーダーは2019年の需要予想データ発表まで様子見ムードとなる可能性が高く、この減産や輸出停止だけでは原油価格が今年度末まで上昇基調を続けるとは考えにくい。また、世界経済の減速への懸念と米中貿易戦争への疑念も、原油市場を締め付けている。
金市場においては、今週のFRBのFOMCで今年度4度目の利上げが行われるかどうかが重要になる。市場では今月18~19日のFOMCで、70.6%の確率で2.25-2.50%へ利上げが行われると見込んでいる。
市場では来年度の金融引き締めは緩和されると見込んでいるため、水曜日に追加利上げへの意欲を示した場合、ドル高へと繋がるだろう。しかし、FRBが金利の据え置きを表明した場合、ドル安へと転じ、2019年初旬にドルは急落すると考えられる。その結果、金相場はその後2週間で4月最高値の1300ドルまで上昇するかもしれない。
FRBが金利を据え置いた場合、金は「救世主」となり得る
EverBank社のマネージング・ディレクターであり、35年以上FEDウォッチャーを務めるチャック・バトラー氏は、現段階での金利の据え置きは景気減速への警戒感を強める可能性があることを示唆している。先週金曜日のナスダックのウェブサイトにおいて、同氏は「いずれ事態は悪化の色を見せ、金は救世主となるだろう」と発言している。
金トレーダーは、FRBの政策決定会合の他にも、火曜日に発表される11月の米住宅建築許可件数と金曜日発表の第3四半期GDPに注目している。また、メイ英首相へ不信任が強まる中でのブレグジット(英国EU離脱)交渉の動向にも注目している。
天然ガスへの短期的な下押し圧力が強まる
天然ガスは11月に41%もの急騰となった後、今月は21%の下落を見せている。年末にかけてどれくらい下落するのか精査されるだろう。たった1ヶ月前は、天然ガスは年初来60%高をマークしていた。しかし、今月では天然ガスは、コモディティ市場における1年の上昇幅1位を小麦に譲ってしまった。小麦価格は今年初めと比べて24%高となっている。(2018年のコモディティ市場のリターンを閲覧するにはこちらをクリック ※デスクトップのみ)
ヒューストンとテキサスにおけるエネルギー市場のアドバイザーであるゲルバー&アソシエイツ(Gelber & Associates)のダン・マイアーズ氏は、直近の暖房需要の弱さを受けて、ガス価格は低迷していると述べる。金曜日、同氏は加えて次のように述べた。
「温暖な気温によって暖房需要が減少し、12月下旬の需要見通しが懸念されている」
一方、米国の原油在庫を抑制するために、サウジアラビアが米国への原油輸出を近日中に削減する計画を立てているとブルームバーグは報道し、先週木曜日の取引では原油価格は3%もの上昇となった。
来月のサウジアラビアの対米原油輸出量は、ここ30年間の最低値である2017年下旬の日量58万2000バレルと同水準になる可能性がある。これは最近3か月の平均よりも40%低い。
直近の24時間以内では、原油価格は上昇分を打ち消すように下落している。2018年の終わりまで残すところ2週間と少しであるが、WTI原油は年初来15%下落したままで、10月初旬の4年ぶりの最高値1バレル約77ドルからは約32%の下落となっている。また、ブレント原油は年初来10%の下落であり、2ヶ月前の4年ぶり最高値の1バレル約87ドルから約32%下落している。
対米原油輸出量の削減は、すぐに原油市場を変えるものではない
ニューヨークのThe Energy management Institute社のDominick Chirichella氏によると、サウジアラビアの対米原油輸出の削減は、原油価格を押し上げる要因ではあった。だが、2019年の世界経済低迷や、米中貿易戦争の停戦は象徴的な勝利しか得られず実際進歩は何もないのではないかという不安感によって対米原油輸出量の削減はすぐに原油市場に影響を与えるものでないと語る。
先週末Chirichella氏は、Bloombergによって報道されたサウジアラビアの原油減産は「新しい上昇トレンドへの始まりになるかもしれない」と述べた。しかし、以下の様に付け加えた。
「私は原油に強気になる準備はできていない。私の原油相場に対する見通しは変わっておらず、短期的なバイアスは中立に保っている。OPECの公約が初期段階でどのように動くのかを見てみようと思う」