アップルは11日、例年通り新製品発表会を行った。発表された新しいiPhoneのラインナップは、iPhone 11、11 Pro、11 Pro Maxである。
今回の新しいiPhoneは革新的で熱狂を生むものであったとは言い難い。しかし、新しいiPhoneに乗り換えるユーザーが期待できなくとも、過剰に心配する必要はない。近年アップルは、売り上げにおいてiPhoneへの依存度を減らし、収益源を多角化することを進めている。
iPhoneの売上の落ち込み
アップルの過去3回の決算報告では、iPhoneの売上が落ち込み、同社の堅実な収益源ではなくなっていることを物語っている。例年、ホリデーシーズンを含む第4四半期は同社にとって好調の時期であるが、昨年の第4四半期のiPhoneの売上は前年同期の611億ドルと比べ15%減で、519億ドルとなっていた。続く2019年第1四半期では、17%減となっていた。そして、第2四半期では12%減となった。
過去2016年と2017年の売上不振が続いた後で、iPhone Xが2017年の11月3日に発売するやいなや好調な売上が続いていた。その四半期では14%の売上増加、次の四半期では14%の売上増、そして発売されてから3四半期目も20%増となっていた。iPhoneの売上は、革新性への熱狂がそのまま売り上げにつながることが窺える。
新しいiPhoneはさらに良いカメラ機能、より高速なチップ、新しいOSや、カラーバリエーションといった具合だが、これらは例年通りのアップグレードであり革新的な変更があったわけではない。 今回の新しいiPhoneは熱狂的な反響を生むものではなかったが、すでに2020年のバージョンのiPhoneについて噂が始まっている。内部情報に精通し、Appleの予想に定評があるアナリストMing-Chi Kuo氏によると、次期iPhoneでデザインは大きく変更され、5G技術が導入される予定であるという。
アップルのブランド力は衰えてはおらず、iPhoneユーザーの約9割は次もiPhoneを購入する意思があるという。この数字はサムスンの携帯をリピートする意思の86%、Google Pixelの84%より高い。明らかに、アップルはiPhoneユーザーの囲い込みに成功しており、今回のiPhoneを購入しなくとも、ただ単に買い替えを先延ばしすることになるだろう。
現在の焦点は、サービス部門とウェアラブルデバイス部門
2016年から2018年においては、アップルの売上の65%はiPhoneから成り立っていた。しかし、2019年においては売上の構成割合は多様化している。過去3四半期を経て、iPhoneの売上構成比は55%までに抑えられている。
また、アップルのApple WatchやAirpodsなどのウェアラブル部門は、過去2年間で大きな成長が見られ、iPhoneの売上落ち込みをカバーしている。
過去3四半期で、ウェアラブル部門の売上は37%増加し131億ドルから179億ドルまでに成長している。2年前では、たった96億ドルだった。
アップルは、堅いiPhoneユーザーをベースに、他のプロダクトへ多様化させる力を持っている。ウェアラブル部門の売上割合の成長を年次ごとにみると、2017年では5%、2018年では18%、過去3四半期では約16%を占めるようになっている。
また、サービス部門の売上は史上最高となっている。過去9か月でこの部門は過去最高の330億の売上となり、2018年の同期より16%増加している。
さらに、アップルは今年11月1日より、動画ストリーミング事業に参入する予定である。月額料金は4.99ドルと、ライバルのNetflixやDisneyよりも安い。
アップルはまた、ゴールドマンサックスとクレジットカードの開発や、月4.99ドルでゲーム遊び放題のApple Arcadeの提供が始まるなど多様化に向けて大きく動いている。
ウェアラブルデバイス部門やサービス部門の収益性は既存のiPhoneユーザーに依存することにはなるが、新しいiPhoneを買い替えるということはそれはiPhone経済圏の成長の必要不可欠という訳ではない。古いiPhoneであっても、これらのアクセサリーやサービスの売上に繋がることは間違いない。
総括
世界で最もキャッシュリッチの企業の一つとなっているアップルは、毎年革新的なiPhoneのための開発に固執する必要性はない。新モデルを待ちわびているユーザーがいる中で、新しいiPhoneを発表しつつ、同社の収益性の最適化を図っている。アップルの最大の強みである、ブランド力と既存ユーザーによるロイヤルティーを活用し、毎年スマートにキャッシュを生み出しているといえる。