米イラン間の緊迫化から2週間が経ち、原油市場ではリビアに注目が集まっている。
他方、パラジウムが高騰しており、1オンス当たり3000ドルを突破する可能性がある。
2011年、「アラブの春」でリビアのカダフィ政権崩壊後、原油価格は1バレル当たり100ドルを上回った。
しかし、リビアが原油市場にもたらす影響はそれほど深刻に受け止められていない。それ以上に市場の関心は、米原油在庫に集まっている。
供給危機
21日、リビアは原油生産の一部を停止し、産油量が1日当たり120万バレルから7万2000バレルまで低下すると報じられた。リビアでは内戦が続いており、暫定政府と敵対する勢力がパイプラインを封鎖したと見られている。
米イラン間の緊迫化から2週間が経過し、中東情勢は比較的安定している。
しかし、現在の平穏は一時的なものかもしれない。
アナリストによると、18日以降のリビアでは、少なくとも1日当たり80万バレルの原油生産が停止された可能性があるとのこと。リビア国営石油会社は南西部のシャララ油田とアル・フィール油田について、原油積み出しの義務が一時的に免除される不可子力条項の発動を宣言した。
リビアは原油市場のゲームチェンジャーになり得るか
リビアの原油生産停止が持続する場合、原油市場は大きく値動く可能性がある。
しかし、21日におけるブレント原油先物は0.3%安の64.86ドル、WTI原油先物は0.5%安の58.41ドルとなった。
三菱商事の原油リスクマネージャーであるトニー・ヌーナン氏は「地政学的な大きなイベントを受け、常に原油市場は大きく値上がる。しかし、多くの人はそれを売りの好機として捉えている」と述べた。
米原油供給の増加
米ガソリン在庫は予想の580万バレルに対して1570万バレル、石油精製品在庫は予想の500万バレルに対して1380万バレルとなった。
また、ベーカー・ヒューズが18日に発表した米石油掘削リグ稼働数は、先週比14基増の計673基となった。つまり、原油生産量が増加していることを意味する。
米シンクタンク、ストラトフォーのGreg Priddy氏は「以前よりも、原油市場は弱気相場となっている」と述べた。
金価格は1560ドルを上回る
米中貿易の第1段階合意の履行が疑問視される中、金価格は1560ドルを上回った。
また、国際通貨基金(IMF)が発表した2020年の世界成長率見通しは下方修正され、21日の金価格が上昇した。
TD証券は「ショートスクイーズの後、金は再度大きく値上がりするだろう」と述べた。また、以下のように付け足した。
「堅調な米経済を受けてインフレ圧力が高まる可能性がある。また、FRBが適切に対処しない限り、実質金利の低下に繋がる」
2019年、FRBは3ヶ月連続で金利を25ベーシスポイント引き下げた。米経済は堅調であるため、さらなる利下げは予想されていない。
パラジウム
他方、パラジウム直物は年初来で約30%高となっており、2500ドルを突破した。
パラジウムは、自動車触媒用需要が大幅に伸びている。
しかし、南アフリカやロシアからの供給が安定化する場合、パラジウムの価格は大幅に下落する可能性がある。
コメルツ銀行のアナリストであるCarsten Fritsch氏は「パラジウムは、ファンダメンタルズでは説明が付かないほど強力な勢いで値動きしている」と述べた。さらに、以下のように付け加えた。
「既にバブルが始まっているのかもしれない」
2019年のパラジウム直物は1年間で55%高となった。2020年においては、既に年初来で約30%高となっており、21日には最高値の2584ドルを上回った。
我々の予想では、3000ドルを上回ると考えている。