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インフレ政策の転換はFRBにとって散々な1年の締めくくり

発行済 2021-12-22 02:56
更新済 2023-07-09 19:31

多くのメディアは、(先週)みられた連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和策の引き締めへのシフトを転換と表現しているが、これは「しくじった判断」よりもはるかに印象の良い言葉である。

評論家は、急激に上昇するインフレの問題に対処するのに十分な政策転換であったかどうかを疑問視している。米連邦公開市場委員会(FOMC)は今月の会合で、緩やかなテーパリング・ペースを加速することを決定したとはいえ、物価の急激な上昇に直面しながら毎月何十億ドルも債券を買い続けているのだから、緩やかであることには変わりはない。

ウォールストリート・ジャーナルの編集者の中には、FRBのパウエル議長は足元のインフレに関して「一過性」という表現を、これだけ批判された後に撤廃したものの、まだ胸中ではインフレは一過性のものだと考えているのではないかという人もいるほどである。

転換を容認する人たちは、金利予測分布図(ドット・プロット)のグラフを熱心にみて、少し前まではFOMCメンバーの過半数が来年の利上げはないと予測していたのに、今では3回の利上げを予測していることを評価する。

Fed Dot Plot Graph

出所:Bloomberg

これは四半期ごとに発表されるSummary of Economic Projections(SEP)にある、ドット・プロットの一部グラフである。パウエル議長は「あまり重要視しない方がいい」と述べている。

2021年のFRBは良い成績を残していない。先週発表された債券購入プログラムを3月に終了することが大きな転換であると考えても、コロナの大流行で政策立案者が短期金利をゼロ近くまで下げる前の2019年から、FRBは利上げの考えを反転させ、政策金利目標の段階的な引き下げを表明していたことを痛烈に思い起こさせる。

当時のトランプ大統領は、FRBに圧力を掛けて方針変換を迫り、FRBは慎重すぎたことを認めた。その後、FRBは政策を正式に変更し、今後はインフレ率が高いという理由で先行して利上げはしないと述べた。

足元のインフレ率6.8%が平均してFRBの目標値である2%を上回るが許容範囲内であるという考えは、仮に雇用が増えたとしても、ほとんど意味を持たない。

FRBが政治的に独立しているという考えも、崩れつつある。奇妙な偶然だが、パウエル議長がよりタカ派的なスタンスに軸足を移したのは、彼が2期目の指名を受けた後の最初の政策会議でだった。

同氏を続投させるもっともな理由はあるかもしれないが、それは同氏が素晴らしい仕事をしているからではない。2006年から2011年までFRB理事を務めていたKevin Warsh氏は、先週の論説でFRBの政策を強く批判し、現在のインフレの原因はFRBにあるとしている。

「インフレ・スパイラルのリスクは、政策立案者がまず問題を軽視し、次に責任を他に転嫁するときに生じる。インフレは、中央銀行の判断が遅れて、あるいは不十分な信念で行動したときに、物価形成プロセスに組み込まれる。これまでのところ、FRBは第三者のよう振舞っていた。」

適切な熟慮か、誤った様子見の姿勢か

FRB擁護派は、政策立案者は経済指標に基づいて再調整しながら、十分に熟慮して行動していると言う。典型的なのは、先週のサンフランシスコ連銀のMary Daly総裁の謝罪である。長年のハト派で、今では来年の利上げが必要であることに同意しているが、連銀は賢く行動し、現在は「良い場所」にいると主張している。

「良い場所にいることで最も重要なことは、選択肢があるということである。そして我々には、現在のSEPが言うよりも早く金利を上げるか、SEPの中央値が言うよりも遅く金利を上げるか、あるいはSEPの中央値が言っている通りにするか、という選択肢がある」と述べている。

彼女の主張は、「時期尚早の」引き締めは経済を減速させただろうというもので、もちろんそれは意図した通りのことである。議論のポイントは、その対策が時期尚早なのか時宜を得たものなのかという点にある。

Mickey Levy氏は、独銀Berenbergのニューヨーク・オフィスの資本市場部門に勤務するエコノミストである。同氏によれば、Daly総裁をはじめとするFOMCメンバーが唱える「様子見」の姿勢は誤りであり、インフレは自然には解消されず、早急な対応が必要だという。

「サプライ・チェーンの停滞が物価を押し上げているのは明らかだが、過剰な金融・財政刺激策による旺盛な総需要の伸びもインフレの主な原因となっている。供給面の問題はいずれ解消されるだろう。政策担当者は、膨らんだ金融・財政刺激策の需要の低下を待っていられない。」

同氏は、「影の公開市場委員会(Shadow Open Market Committee)」のメンバーであり、その名の通り、公式の公開市場委員会とは反対の立場をとる独立したエコノミストのグループの一人である。同氏はFOMCが次回1月の会合で利上げを開始することを求めている。「株式市場はそれに反応して下落するかもしれないが、金融の正常化を遅らせることは健全な経済成長の持続可能性を損なう恐れがある」と警戒する。

11月の消費者物価指数は6.8%と39年ぶりの高水準を記録し、生産者物価指数も9.6%と過去最高を記録した。このは、2021年のFRBの貢献を示すものではなく、2022年のバラ色の見通しを示すものでもない。

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