カナダからの予想外の寒波が米国に流れ込み、冬のピークを迎える中、天然ガスが1年で最も強い週次需要を記録し、暖房のコストが劇的に増加している。
ニューヨークのヘンリーハブの天然ガス先物は、欧州と米国のGFS気象モデルの両方がカナダから南下する寒波の強さへの警戒を示したため、前2取引日で9%上昇した後、水曜日だけで更に約10%急騰した。
気象モデルとその変化について詳しい関係者は、気温の予想が正しければ、この変化により今後2週間の天然ガス需要が440億立方フィート(bcf)増加すると予想している。
ヒューストン拠点の天然ガス市場コンサルタント会社Gelber & Associatesのアナリスト、Dan Myersは、水曜日の上昇を引き合いに出して、「予想される需要の顕著な上昇は、確かに市場に注目されている」と述べた。
さらに「ボラティリティの再燃は、冬がまだ終わっていないことを痛感させるものであり、短期的にはさらなる価格上昇リスクが存在する」と付け加えた。
同氏の発言は、エネルギー情報局(EIA)が米国東部時間午前10時30分に予定している週次のガス貯蔵量発表を前にしたものだ。
EIAは5週連続で、ガス貯蔵所からの200bcfに近い、またはそれを超える超大量の(天然ガス在庫からの)引き出しを報告すると予想される。全米を襲った寒波によって、人々は暖房を利用し尽くしているとみられる。
Investing.comが追跡しているアナリストの間では、2月11日の週の引き出し量のコンセンサスは193bcfであった。
同氏は、水曜日にGelber & Associatesの顧客に送った電子メールの中で、「~200bcfに近い引き出しは依然として極めて大きな引き出しであり、平均より高い引き出しへの期待も、すでに市場に織り込まれているが、引き続き天然ガス価格の上昇基調は続いている」と書いている。
天気予報サービスを手掛けるNatGasWeatherもこの意見に同意する。業界ポータル・サイトのnaturalgasintel.comに掲載された見通しでは、「3月上旬に250bcfに近い引き出しがさらに増加することが確実であるという意味で、寒冷化は明らかに天然ガスに関して強気材料である」と述べている。
先週の予想引き出し量は193bcfで、前年同週の消費量227bcf、5年間(2017-2021)の平均引き出し量約154bcfと比較すると如何に大きいかがわかる。
前週から2月4日までで、電力会社が222bcfの天然ガスを貯蔵所から引き出した。
出所:Gelber & Associates
Investing.comが追跡しているアナリストを対象に先週行われた貯蔵量の引き出しについての調査では、ガスの総在庫量は1兆9080億立方フィート(tcf)に減少し、5年平均より約11.7%、前年同期の水準より17.6%低下すると予想している。
データ・プロバイダーRefinitivによると、先週は例年より寒く、暖房度日数(HDD)が175と、30年来の平年値である183HDDに比べ少なかった。
HDDは、家庭や企業の暖房需要を推定するために使われるもので、1日の平均気温が華氏65度(摂氏18度)以下になった度合いを計測する。
関係筋によれば、先週の引き出しは、米国全土の猛烈な寒波の影響で天然ガスの生産が中断されたために高まったとみられるという。
さらに、カナダからの輸入が前週比で1日あたり約6億立方メートル減少したことも影響している。
NatGasWeatherは、naturalgasintel.comに掲載した見通しの中で、米国東部の冬型の天候が長引く可能性があり、先週の天然ガス価格の急落から反発したと指摘している。
価格は熱量単位当たり80セント近く上昇し、過去数取引日では4.70ドルを超えた。「明らかに、天然ガス市場は需要の増加を歓迎している」とNatGasWeatherは述べている。
「さらなる寒冷化は、天然ガス価格が再び5ドルを試すのに十分な材料となるか」と自問する。
液化天然ガス(LNG)については、EBW AnalyticsGroupが、トレーダーが輸出需要の増加に目をつぶっているようにみえると指摘した。
同社は、米国のLNG輸出施設からの原料ガス需要が、最近6日間のうち5日間で、初めて1日あたり13bcfを上回ったと指摘した。
米国のLNG輸出施設に流入する天然ガス量は、ルイジアナ州においてVenture Global LNGが手掛けるCalcasieu Pass輸出プラントの液化トレインが稼働したことで、1月の記録12.4bcfから2月はこれまで1日平均12.7bcfに増加した。
免責事項: Barani Krishnanは、あらゆる市場の分析に多様性を持たせるために、自身以外の様々な見解を用いている。中立性を保つため、時には逆張りの視点や市場の変動要因を提示することもある。また同氏は、執筆している商品および証券についてポジションを保有していない。