当記事はInvesting.comの独占記事
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ウクライナ:地政学的な混乱の中心地
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長い歴史を持つ資本逃避
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逃避先となる新しい資本ツール
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台湾同様にウクライナを狙う中国
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暗号資産:危険な時代における3つの重要な役割
第34代アメリカ大統領アイゼンハワーは、軍司令官を兼任した最後の最高司令官である。1950年代、自由世界のリーダーであった彼は、かつてこう言った。
「私は戦争に生き残った人間としてではなく、戦争の残酷さと無益さと愚かさをみてきた人間として戦争を憎む」
確かに、戦争は人間の発明した破壊的なものである。世界的なパンデミックの流行が終息に向かうにつれ、欧州では好戦的な緊張が高まり、おそらく冷戦終結後、そしておそらく1960年代初頭のキューバ危機以来の高水準に開戦リスクは達している。現在、ウクライナへの侵攻をめぐる米国とNATOの同盟国、およびロシアの間でのにらみ合いは、欧州で戦争が始まる可能性を示唆している。
戦争は重要な出来事であり、特に戦線の両側に核保有国が存在する場合はそうである。金融市場は、その経済的・政治的状況を反映したものである。もし戦闘が始まれば、多くの罪のない人々が戦争に巻き込まれることになるだろう。ウクライナ国民は着の身着のままで逃げ出すことになるかもしれない。そのような状況下で、暗号資産は容易に持ち運び可能で流動性の高い資金として、逃亡者たちに提供される可能性がある。
ウクライナ:地政学的な混乱の中心地
2020年、2021年は、コロナウイルスの感染者数が死者数とともに増加し、世界的なパンデミックが世界中で注目された。2022年初頭には、地政学的リスクが関心の中心となっている。
米国と欧州のNATO加盟国はウクライナを東欧の独立国の一つと考えているが、ロシアのプーチン大統領はウクライナは自国の不可欠な一部であると考えている。彼に言わせると、ウクライナは自国の一部であり、西ロシアなのだ。プーチン大統領は、ウクライナの国境沿いに約15万人のロシア軍を集結させ、NATOに対し、ウクライナが決して加盟しないことを保証するよう要求している。ロシアはNATOの加盟が自国への脅威であると考えている。
NATOと米国は、ウクライナの主権を尊重することを理由に、そのような保証をすることを拒否している。交渉と話し合いは続いているが、プーチン大統領は武力行使の可能性を下げていない。米国と欧州は厳しい制裁を科すと脅しているが、ロシアと中国はいかなる制裁も無意味にしうるような協力関係を結んでいる。
また、ロシアは原油、小麦、パラジウム、アルミニウム、肥料などの原材料の主要生産国である。緊張が高まれば、サプライ・チェーンが大幅に停滞し、価格が高騰する可能性がある。
長い歴史を持つ資本逃避
世界的な物資不足は、戦争がもたらす地獄のような危機の一面に過ぎない。戦禍を逃れて安全な場所を求める人々にとって、どこに行っても生き延びるための資金は重要なものであるが、持ち運びには苦戦するものだ。
第二次世界大戦前、多くの人が新天地で再出発するためにポケットに入れたり、衣服に縫いこんだりしたのは金やダイヤモンドだった。資本逃避とは、経済的・政治的に不利な状況下で、ある国から別の国へ資産を移動させることを意味する経済用語である。
紛争地域から脱出する場合、従来の銀行送金は不可能な場合がある。金、ダイヤモンド、その他の高価値の資産の持ち運びは、歴史的に伝統的な資本の逃避手段であったが、技術の発展によって新しい資産クラスが登場し、戦禍から逃れた人々はポケットに無制限の資本を保持することができるようになった。
逃避先となる新しい資本ツール
コンピューター内の財布に入れた暗号資産はポケットの中のフラッシュ・ドライブに収まり、ビットコイン、イーサリアムやその他の暗号資産という形で無限に資産を運ぶことができる。安全なパスワードにより、所有者は世界のどこにいても資本にアクセスし、現地通貨に替えることができるのだ。
資本の逃避として、暗号資産は金、ダイヤモンド、その他の実物資産よりもずっと持ち運びが簡単で安全だ。地政学的リスクが高まるにつれ、暗号資産は危険にさらされている地域で多くの買いを集める可能性がある。
台湾同様にウクライナを狙う中国
2021年、アフガニスタンから難民が脱出し、タリバンが政権を取り戻し、米国と欧州の軍隊が撤退するのを世界は傍観していた。2022年、ウクライナはロシアに支配される寸前で、多くの人々が海外に避難することを検討している。
中国はロシアのウクライナ支配を支援し、お返しにロシアは台湾との統一を目指す中国を支援している様相だ。台湾の人口は2350万人超で、中国が軍事行動を活発化させ、戦争に発展し、東アジアの国を中国の政治的傘下に押し込むような展開となれば、多くの人が国外に脱出することになるだろう。
中国の拡張政策が続けば、台湾や他のアジア諸国における暗号資産の需要は劇的に上昇する可能性がある。中国は、ウクライナ情勢に対する米国と欧州の反応を見極めながら、台湾統一に向けた自らの計画を測っていることだろう。
一方、北朝鮮とイランは依然として核戦力を増強しているならず者国家であり、近隣諸国の混乱を煽り、今後数年間で多数の人々が国外に脱出する可能性がある。ポケットの中のフラッシュ・ドライブに入った暗号資産は、現代の難民にとって、簡単に持ち運べる究極の逃亡資金となるかもしれない。
暗号資産:危険な時代における3つの重要な役割
暗号通貨は、激動の時代に3つのメリットをもたらすかもしれない。
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デジタル通貨は流動性の高いグローバルな取引手段であり、様々な取引所を通じて取引されている。
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コンピュータ内の財布は、国境や政府の干渉を越えてサイバー・スペース上に存在する。
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デジタル通貨のセキュリティは、各アカウントの所有者固有のパスワードまたはキーによって守られる。
思想的には、暗号資産は中央銀行や政府から通貨供給のコントロールを奪い、個人に返すリバタリアン的な通貨形態である。暗号資産は世界中で両替可能で、持ち運びしやすく、先進的で、革命的な金融技術(フィンテック)の結晶である。
悲しいことに、戦争という概念は歴史の中で色あせることはない。南北戦争のWilliam Tecumseh Sherman将軍が言ったように、「戦争は地獄」であり、それは1世紀以上経った今でも不変の事実だ。
しかし、暗号資産は資本逃避の問題をよりシンプルにする可能性がある。実際、世界的な地政学的リスクが激化すれば、デジタル・トークンが逃避資金となる可能性がある。皮肉なことに、戦争の見通しが高まることは、暗号資産にとって強気になる材料となりうるのだ。