当記事はInvesting.comの独占記事
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イーロン・マスク氏がTwitterに魅力的な水準の入札を実施
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ソーシャル・メディア・プラットフォームの潜在能力を引き出すことができると確信
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Twitter社はポイズンピル(毒薬条項)で時間稼ぎ
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マスク氏は欲しいものを手に入れる
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帝国を築く
貿易業界には、イワシの売買にまつわる古いジョークがある。カリフォルニア州モントレーの海からイワシが消えたとき、コモディティ取引業者はイワシの缶詰を高値で競り落とした。ある日、バイヤーが高価で珍しいものを食べようと、缶詰を開けて食べてみたところ、すぐに気分が悪くなり、売り手に「このイワシはダメだ」と言った。すると、「あんたはわかってない。これは食用のイワシではなく、取引用のイワシなんだよ」と言われたという。
この話は、資産価格がファンダメンタルズから乖離することがあるという考えを体現している。過去数年間、食用じゃないイワシとなった企業の例がある。直近ではGameStop (NYSE:GME)やAMC Entertainment (NYSE:AMC)がそうであった。ソーシャル・メディア・サイトのトレーダーや投資家の集団が、この株に殺到し、業績や個々のファンダメンタルズが弱いにもかかわらず、株価は信じられないほどの高さに押し上がった。
イーロン・マスク氏による Twitter (NYSE:TWTR)の買収報道と、同社が昨日最終的に 買収を受け入れる まで行った初期対応としてのポイズンピル(毒薬条項)により、Twitter株は最新の取引用イワシとなり、株価の変動が大きく、会社のファンダメンタルズは脇に追いやられている。
イーロン・マスク氏がTWTRに魅力的な水準の入札を実施
Tesla (NASDAQ:TSLA)の悪名高いCEOで、スペースXやボーリング・カンパニーなどのベンチャー企業の創業者でもあり、世界一の富豪であるイーロン・マスク氏が、ソーシャル・メディア大手のTwitterを1株54ドル20セントで買収すると申し出、昨日時点で買収総額は440億ドルとなったという。マスク氏は同社を非公開にする予定だ。
出所:Barchart
このグラフは、マスク氏が54.20ドルの入札を発表する前に、Twitter株が1株当たり40ドルを下回っていたことを示している。同氏は買収が発表される前に、すでに同社株式の約9%を保有していた。株式取得後、同氏は取締役会の席につくのではないかと噂されたが、当時は、保有比率を15%以下に抑えると述べていた。
しかし取締役会の立場が崩れ、マスク氏の会社に対する要望が現職の取締役と折り合わなかったため、会社を完全に買収し、現取締役から経営権を奪うことにしたのである。
ソーシャル・メディア・プラットフォームの潜在能力を引き出すことができると確信
マスク氏はTwitterで常に存在感を示している。そして最近、彼はこのプラットフォームを利用して、会社に対する事業計画の概要を説明している。4月19日にはこうつぶやいた。
今月初め、4月9日、
「Twitterは死ぬのか?」
とツイートし、買収報道前にマスク氏は同社に対する問題点を明かしている。
「Twitterが事実上の公共広場として機能していることを考えると、言論の自由の原則を守れないことは民主主義を根本的に損なうことになる。」
先週発表された、テスラの2022年第1四半期決算では、1株あたり利益(EPS)がアナリスト予想の2.26ドルに対して3.22ドルであったと報告し、業績懸念を吹き飛ばした。総収入は、予想の178億ドルに対して187億6000万ドルであった。
CEOとしてのマスク氏の成功は、彼を世界一の富豪にしたが、少なくとも当初、Twitterの取締役会は彼が会社を所有することに賛成ではなかった。
ツイッター社はポイズンピル(毒薬条項)で時間稼ぎ
Twitterの役員や多くの上級管理職は、Twitterが自分たちの会社であるかのように運営している。しかし、実際にソーシャル・メディア・プラットフォームを所有しているのは株主である。マスク氏に対抗するため、取締役会は株主の代表として、会社の非公開化計画を阻止する決定を下した。
マスク氏はTwitterを使ってフォロワーに問いかけた。
「Twitterを54.20ドルで非公開にすることは、取締役会ではなく、株主が決めるべきことだ。」
回答は83.5%がイエス、16.5%がノーとなり、彼の会社買収への圧倒的な支持を示した。創業者で元CEOのJack Dorsey氏は、Twitterの取締役会を「機能不全」と非難した。Dorsey氏は現在Twitterの取締役である。
取締役会は、マスク氏の入札に対抗するため、「ポイズン・ピル」(既存株主に株式を安く買い増す権利を与え、新たな敵対的出資者の持分を希釈化する方法)を採用し、マスク氏の出資比率を高めることの制限を図った。しかし、取締役会は最終的にマスク氏の買収計画を承認。今後この買収は株主投票にかけられ、その後、規制上のハードルはなくなる見込みだ。
Twitterを非公開にするというマスク氏の動きは、利益動機を超越しているようにみえる。ソーシャル・メディア・プラットフォームに対する彼の思想的な異議申し立てが、買収提案の理由のようだ。
先週末の時点で、マスク氏の純資産は約2650億ドルであり、利益は二の次、あるいは頭にさえ入っていない。実際、それでも4月18日、さらに取締役会を挑発するように、こうつぶやいた。
「私の買収が成功すれば役員給与は0ドルになるから、年間300万ドルの節約になる。」
Twitterの取締役は、1人あたり25万ドルから30万ドルの年間報酬を受け取っている。
マスク氏は欲しいものを手に入れる
マスク氏は個性豊かだ。ジョー・ローガン氏とのポッドキャストでマリファナを吸い、米国の規制当局に挑戦し、技術の粋を集めたビジネスを構築し、雇用と富を生み出し、米国の上院議員を相手にし、そして今やTwitterのオーナーになる。
また同氏は8200万人以上のフォロワーを持つソーシャル・メディア・プラットフォームの多用なユーザーである。Twitterの買収資金を調達するため、彼は465億ドルの資金を確保し、さらに125億ドルをテスラ株を担保にした信用貸付で調達している。Morgan Stanleyを筆頭に、130億ドルのデット・ファイナンスを提供する金融機関グループがある。
4月25日(月)、Twitter株は1株あたり51.70ドルで取引されている。市場取引が終える前に、取締役会はこの買収を承認した。
規制当局がこの取引を承認する必要があり、それには時間がかかる可能性があるが、遅れはないものと思われる。それでもマスク氏はSECのお気に入りのモーグルの1人ではない。とはいえ、世界一の富豪である彼がTwitterを所有することを妨げることはできないだろう。
マスク氏と並ぶ他の投資家たちは見返りを求め、同社が彼の成長する帝国のもう一つの宝石となることを期待しているのだろう。
帝国を築く
最近のTEDトークで、マスク氏はTwitterの取締役会が自分のオファーを拒否した場合、「プランB(代替案)」があると発言し、「ポイズン・ピル」は戦いの舞台を整えた。プランBの戦略として考えられるのは、マスク氏寄りの投資家3人と組んで、それぞれ15%の株式を購入し、会社の支配権の過半数を握り、取締役会を追い出すことだ。マスク氏が資金を確保し、他の買い手が現れないとなれば、取締役会はこの魅力的なオファーを受け入れるしかない。
要するに、マスク氏はTwitterのイデオロギー的な探求をし、勝者になったのである。彼は今、彼の帝国が世界有数のソーシャル・メディア・プラットフォームを含むように成長するにつれて、多くの選択肢を有している。
彼はTwitterの経済モデルを修正し、数年後に会社を上場させることができる。スペースX、ボーリング・カンパニー、さらにはテスラといったメガ・カンパニーに組み込むこともできる。マスク氏が最終的にどのような決断を下すにせよ、Twitter関係者の中にはすでに乗り気になっている者もいる。
この買収案に関するニュースが流れた後、ツイッターの共同創業者で前CEOのJack Dorsey氏は、現Twitter社のCEOであるParag Agrawal氏にも言及しながら、次のようにツイートした。
Dorsey氏はそれに続いて、次のように述べています。
「Twitterがこれからも世間の会話に貢献できることをとても嬉しく思う。世界中に、そして星々に!」
イーロン・マスク氏の意向に反する投資は得策ではないかもしれない。