米国のガソリン価格はここ数日、若干下がっているが、まだバイデン政権が必死になっているほどには高い。
この状況は11月の中間選挙で民主党議員に大きなダメージを与えかねないが、今のところバイデン大統領の政策（2億6000万バレルの戦略的備蓄の放出など）は原油もガソリンも価格を下げることに成功していない。
この記事では米国政府が検討している他の政策と、これらの変更の可能性や市場に与える影響について、トレーダーが知っておくべきことを紹介する。
1. エネルギー企業のCEOとの対談
6月23日（木）にホワイトハウスで行われる予定の会議に、石油関連会社のCEO7名が出席する予定だ。招待されたのは、BP (NYSE:BP)、Chevron (NYSE:CVX)、Phillips 66 (NYSE:PSX) のCEOなどである。
この会談の結果、新たな原油・天然ガス掘削や輸送プロジェクトの進行を妨げている規制を緩和するために、バイデン政権が講じることができる具体的な措置が検討される可能性がある。
その見返りとして、石油関連会社幹部は増産を約束する可能性がある。また、バイデン政権がこの機会に石油業界をさらに非難し、経営陣たちに2022年第1四半期にあげた350億ドルの利益の正当性を問う可能性もある。
前者の場合、米国からの増産を意味するため、原油にとって弱気のサインとなる。後者の場合、石油業界はバイデン政権を敵視し、そのような政権下で米国での石油生産の拡大には慎重であるため、原油にとって強気のサインとなる。
2. ガソリン税の停止
バイデン政権は、連邦ガソリン税を3ヶ月間停止するよう議会に要請し、同時に州政府にも州ガソリン税の停止を呼びかけている。
連邦ガソリン税は1ガロンあたりわずか18セントだが、州のガソリン税は平均54セントである。これらの軽減措置を合わせると、多くの消費者にとって1ガロンあたり1ドル近いガソリン価格の引き下げにつながる可能性がある。
これは一時的にガソリン価格を下げることになるが、原油価格に重大な影響を与えるものではない。むしろ、この政策によって原油価格が上昇する可能性があるとの見方もある。
ガソリン価格の高騰により、ガソリンの消費が抑制され、逼迫したガソリン市場が緩和されつつある。ガソリン価格が下がる一方で、供給は並行して増えないため、必要な供給がないままガソリン需要が高まる可能性がある。
そうなると、ガソリン価格も原油価格も上昇し、消費者にとっての（課税停止による）価格低下が起きない可能性がある。
3.石油関連企業への超過利潤税
この法案は議会を通過し始めており、大統領が署名して法律として成立させるためには、上下両院出の可決が必要となる。
バイデン大統領は、石油会社が利益を上げすぎていると繰り返し批判しているので、この法案を支持する可能性が高い。しかしこの政策は、バイデン政権の目標である消費者のための価格低下にはほとんど貢献しない。
むしろ、米国で操業またはビジネスを行っている石油会社は、探査や生産に回す資金が減り、米国の石油資源を生産する会社をさらに阻止することになるため、より長く原油価格が高くなることを意味するのである。
4. 原油の輸出禁止策の復活
米国では、オバマ大統領が解禁した2015年まで、40年間にわたり原油の輸出が禁止されていた。輸出の解禁により、米国の原油生産者は、製油所が処理できない軽質な原油を輸出し、製油所を最適に稼働するために必要な重質な原油をより多く輸入するようになった。
2021年11月、米国は日量300万バレルの原油を輸出している。仮に米国の輸出が禁止された場合、米国の原油が世界市場から排除されることで世界の原油価格が上昇するため、米国内の原油価格やガソリン価格の低下にはつながらない可能性が高い。
5. 石油製品の輸出禁止
バイデン政権は、石油製品の輸出を全面的または部分的に禁止することを検討していることをほのめかしている。これは前代未聞のことであろう。米国が原油の輸出を禁止しても、石油製品は輸出されていた。
バイデン政権は、6月23日の石油会社のCEOとの会談に続き、米国の主要製油所のCEOとの会談を予定している。この会合で製油所側はバイデン政権に対して、この政策を{{news-2839840||}進めないように}}と働きかけるだろう。
輸出を禁止すれば、一時的には米国市場にディーゼル、ガソリン、ジェット燃料が溢れるが、製油所が米国の需要だけを供給するように調整するために操業を削減し、中長期的には供給不足を引き起こすことにもなりかねないと主張する予定である。
また、米国が日量約600万バレルの石油精製品を輸出し、大きな役割を担っている世界の精製品市場にも大きな混乱をもたらすことになる。この世界的な混乱は、国際価格の上昇を引き起こすだろう。
6. ジョーンズ法の一時停止
ジョーンズ法は、米国内の港間で輸送される物品は、米国で建造され、米国市民または米国永住権保持者が所有・運航する船舶で輸送することを義務付ける法律だ。
これには石油製品も含まれ、特に利用可能なアメリカ船籍の船舶が不足している場合、東海岸の石油製品の価格が必要以上に高くなるのは、このジョーンズ法のせいである。
ジョーンズ法は、ハリケーンの直後、被災地にガソリンや軽油を迅速に供給し、住民が復旧に努めるために、しばしば停止される。
今回のジョーンズ法の一時停止は、輸送コストの削減と輸送の混乱の解消により、東海岸のガソリンやディーゼルの価格低下につながる可能性がある。世界的な石油価格への影響はないだろうが、消費者のコスト・ダウンには貢献できるだろう。
7. 投機筋、生産者、精製業者、外国企業への裏の圧力
11月の選挙が近づくと、米国政府がどんな圧力をかけてくるか、どんな便宜を図ってくるか、予断を許さない。
選挙まで4カ月を切った今、政府は必死である。もし、価格が40%、50%と大幅に下落しなければ、9月、10月になれば、政権はさらに必死になり、取引に応じるだろうと推測される。