粘性帯びる米インフレと注目の指標

ドル円は10月12日週、総じて158円を挟んだ取引に終始した。米国の9月消費者物価指数が予想を上回った際には10月利上げの織り込みが一時5割を超え、ドル買いが優勢となってドル円も158円95銭まで上昇したが、すぐに失速した。反対に翌日、日銀の小枝審議委員が講演で「利上げに過度に慎重になることはない」と述べると、ややタカ派のメッセージと受け取られ157円台前半まで円高が進んだ。ただ、この発言も相場の流れを決定づけるには至らず、その後は158円近辺まで持ち直している。

ドル指数は堅調に推移した。フランスの予算案の審議をめぐる先行き不透明感からユーロドルが一時1.11割れ目前まで下落し、ユーロ安がドルを支える構図が続いている。米CPI発表直後には103目前に迫る場面もみられた。ただし、米国の長期金利上昇にはタームプレミアムの拡大を伴う「悪い金利上昇」の要素も加わっており、ドル高の加速には至っていない。ユーロのIMMポジション(投機筋、ネット)は10月13日時点で13.4万枚の売り越しまで拡大した。2010年のギリシャに端を発した政府債務危機の際には20万枚を超えた時期もあり、フランス議会の動向次第ではユーロショートがさらに膨らむ可能性もある。

米国のインフレは粘性を帯びつつある。9月はエネルギーが前年比20%以上も上昇し、全体の加速を招いた。原油先物相場(WTI)は前年比で60〜70%程度の上昇だが、米国とイランの戦争が始まった今年3月までは60ドル前後で推移していたため、そこまで下落しない限り前年比でのプラス効果は続く。9月分は総合、コアがともに予想を大きく上回ったほか、エネルギー関係や住宅費を除いたサービス、いわゆるスーパーコアの伸びも2カ月続けて拡大した。資源価格の上昇が幅広い品目に波及しつつあることが確認された格好である。今週公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、経済は緩やかな拡大にとどまる一方、インフレは根強いとの見方が大半を占めた。注目したいのはFRBの算出する共通期待インフレ指数(CIE)である。最新値が加速していれば10月利上げの可能性が一気に高まる一方、横ばい圏ないしやや低下していれば12月に持ち越される公算が大きい。(7-9月期は前期からわずかな低下にとどまり、後者の展開が見込まれる。)

日銀については、以前も紹介した「負のフィードバック」が改めて確認できる。円安への警戒から利上げ姿勢を打ち出すと円高が進むが、進みすぎると利上げを急ぐ必要性が低下して日銀の利上げ姿勢が軟化。市場がそれを察知して再び円安に戻るループである。9月2日の植田総裁の発言後にドル円が152円台まで下落し、会合では利上げを決めたものの2名の反対と会見でのトーンから159円台まで持ち直した流れがこれに当たる。現在は再び円安への警戒を強めているとみられ、今回の小枝審議委員の発言につながったと考えられる。10月の利上げはないとみるが、12月も為替相場の影響が強いだろう。160円台で推移していれば利上げは濃厚、155円を割り込んでいれば来年以降に持ち越されると考えられる。もっとも、12月は米国の利上げが見込まれ、日銀が見送れば一気に円安が進む可能性もあり、そこまで見越して12月利上げに踏み切る可能性は引き続き濃厚と言える。

来週は、原油価格の上昇、年末の利上げ観測、軟調なユーロドルを背景に、ドル指数、ドル円ともに底堅く推移すると見込まれる。ただ、ドル円も160円に迫れば再び円安けん制が強まると予想され、上値は重くなりそうだ。一方、日銀の利上げペース加速を示唆する発言に市場も慣れつつあり、一時100%を超えていた12月利上げの織り込みは現状8割を切っている。ここから円高が進むとすれば12月の利上げ観測が再び高まる場合であり、来週の日本の9月消費者物価指数が注目される。もっとも、インフレ加速は既に織り込まれており、円高に振れるとすれば予想をさらに上回った場合だろう。総じてドル円は157円から158円を中心とする様子見にとどまり、翌週以降の日米の金融政策決定会合に向かっていくと考えられる。

詳細は以下の動画をご覧ください。

 

最新のコメント

当社アプリをインストール
フォローする
リスク開示書: 金融商品や仮想通貨の取引は投資金額を失う高いリスクがあります。仮想通貨の価格は非常にボラティリティーが高く、金融、規制、政治など、外的な要因に影響を受けることがあります。また信用取引はリスクが高いことを十分に理解してください。
金融商品または仮想通貨の取引をする前に、金融市場での取引に関わるリスクやコストについて十分に理解し、専門家の助言を求めたり、ご自身の投資目的や経験値、リスク選好等を注意深く検討することを推奨いたします。
Fusion Media によるこのウェブサイトのデータが、必ずしもリアルタイムおよび正確ではないということをご了承ください。またデータや価格が、必ずしも市場や取引所からではなく、マーケットメーカーにより提供されている場合があります。その為、価格は気配値であり、実際の市場価格とは異なる可能性があります。Fusion Media および当ウェブサイトへのデータの提供者は、当ウェブサイトに含まれる情報を利用したすべての損失に対して一切の責任を負わないものとします。
Fusion Media およびデータ提供者による事前の書面の許可なしに、当ウェブサイト上のデータを使用、保存、複製、表示、変更、送信、配信することを禁じます。すべての知的財産権は当ウェブサイト上のデータの提供者、または取引所が有します。
Fusion Media は当ウェブサイトに表示される広告により報酬を得ることがあります。
上記内容は英語版を翻訳したものであり、英語版と日本語版の間に不一致がある時は英語版が優先されます。
© 2007-2026 - Fusion Media Limited. 無断複写・転載を禁じます