先週、コモディティー通貨は、GBPと共に大幅に低下したが、JPY、CHF、そして貴金属---「安全資産」---は大幅に上昇した。これらはすべて、「リスクオフ」傾向を示す指標であるが、いったいどのリスクだろう?コモディティー通貨のパフォーマンスが芳しくない上、エネルギー価格が下落しており、工業用金属の価格がまちまちとなっていることから、成長に関する懸念が伺える。それは、FRBが量的緩和による金融市場支援を「縮小」することに対する懸念、そして、この懸念が実態経済に及ぼす影響に加え、先週の購買担当者指数(PMI)が、製造業が縮小しつつあることを示したことによる中国に対する成長懸念から生じている。中国の習近平国家主席が、中国は、環境を短期的な成長の犠牲にしない、すなわち、環境改善のために成長の鈍化には目をつぶると述べたことから、週末には、中国の成長に対する懸念が高まった。こうした環境のなか、AUDは、特に中国が関連する際には、最も悪影響を受けやすい通貨である。
FRBと中国以外のその他の主なリスク源-ひいては「リスクオフ」の源-は、量的緩和が計画どおりに正確に機能していない日本である。債券利回りは、インフレ率の上昇期待から上昇しており、高利回りが、株の勢いを減退させている。日銀の黒田総裁が、この危険な状況に対して何らかの対策を施すと発言することなく、かわりに景気改善下では、不安定さをもたらすことなく、金利は1-3%上昇する可能性があると示唆する日銀レポートを引用したことが、この不安に拍車を掛けた。しかし、USD/JPY低下の理由は、通貨が直面しているリスクに対する評価よりも、むしろ資金調達通貨としてのJPYの利用に関係しているとみられる。なぜなら、その国の金融市場の混乱を理由に特段その国の通貨を購入することは、ほとんど意味がないためである。ただし、日本の株価とUSD/JPYの間の相関はプラス(+0.55)であり、したがって、株価の低下は、USD/JPYの低下を意味する。一方、USD安と、金融の不安定性に対する懸念が、貴金属を支持しているが、FRBによる量的緩和縮小の見通しは、金にとって好材料ではないため、金はさほど上昇していない。
本日予定されている主な指標やスピーチはなく、英国、米国が祝日となっていることから、本日は、主にテクニカル要因に左右される静かな一日となるだろう。今週全体では、主なデータは、水曜日に発表されるドイツのインフレ率と、金曜日のユーロ圏のインフレ率であり、来週のECB会合に向けた素地を築くことになるだろう。ユーロ圏のインフレ率がわずかに上昇すれば、一段の利下げ期待は遠のく可能性があり、EUR/USDを支持することになるだろう。
マーケット
EUR/USD
• EUR/USDは若干下落して終わり、長足ドジ・キャンドルを形成した。このキャンドルは、オーバーナイトでの小幅な下げを考えれば、これまでのところ確認されている範囲では弱気のシグナルとみられる。突破の後、一定の動きを引き起こすとみられるサポートは1.2880で見出される可能性があり、次のサポートは11月の上昇トレンドライン・サポートであり、ボトム・ボリンジャーバンド水準でもある1.2780だろう。レジスタンスは、20日移動平均である1.2980で見出され、その次の強力なサポートは1.3075で見出されるだろう。
USD/JPY
• USD/JPYは、2日連続で下げ、その後も下げ続けている。金曜日、同ペアは、ニューヨーク取引時間中に若干回復したが、先週のバーナンキ議長による議会証言を受けた後の安値を突破することはできなかった。安値の突破に失敗したことで、センチメントに改善が見られた。ボトム・ボリンジャーバンド水準であり、20日移動平均であり、23.6%上昇リトレースメント水準である100.70-100.40領域に重要なサポートが存在する。100.40を突破すれば、同ペアは、従来のサポート水準である99.70を試す可能性がある。レジスタンス水準は、101.90と102.70で見出される可能性がある。
AUD/USD
• AUD/USDは、月初来、大きく下げ続け、750pipを失い、ADX指数はどんどん上昇し、この下落トレンドにおける強さを確認している。本稿執筆現在、同ペアは、金曜日の安値と右肩下がりのトレンドライン・サポートである0.9630でサポートを見出しているが、木曜日の安値である0.9590が再び試されるとみられる。この水準を突破すれば、同ペアは、2年ぶりの安値である0.9500まで低下する可能性がある。レジスタンスは、0.9700と0.9800で見出される可能性がある。
金
• 金曜日、金は閑散とした取引のなか、若干下落し、1400ドルのレジスタンス水準が試され、7取引日の間、維持されている。金は再び1400ドルのレジスタンス水準に非常に接近しており、この水準を突破すれば、1430ドル水準、その後は1445ドルが試されるだろう。金は、金曜日の安値であり、低下局面の23.6%リトレースメント水準である1385ドルでサポートを見出しつつある。次のサポートは、1350ドル~1340ドル領域にあり、その次は1320ドルにある。
原油
• WTIは、金曜日に再び下げ始め、従来の安値であり、3年越しの上昇トレンドライン・サポートである93.50ドルで再び横ばいとなった後、今朝はもう一度試されている。この水準を突破すれば、92.20ドルのサポートに再び達する可能性が高く、次は91.30ドルに達するだろう。レジスタンス水準は、引き続き94.50ドルにあり、その次は95.00ドルに現れるだろう。
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
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