米CPU大手のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(NASDAQ:AMD)が息を吹き返した。同株は2015年7月に付けた1.61ドルの史上最安値から実に1840%上昇している。
7月3日の終値は31.19ドルで、13年前に付けた34.3ドルという高値に迫る勢い。AMDはいかにして復活したのか、そして同社の見通しは明るいのだろうか?
AMDの快進撃
AMDは1969年に創業し、1997年にCPU事業に参入。以来ローエンドモデルのCPUを主力製品として世に送り出してきた。メインターゲットはコストパフォーマンスを重視する層。AMD製品は信頼度が高く、かつ競合製品よりも低価格であった。
この薄利主義戦略が功を奏し、AMDは2000年代初頭から世間に広く名を知られるようになった。ただAMD製品の人気は高かったものの、収益性は低かった。
同社は2015年、インテル(NASDAQ:INTC)が新世代CPU開発に苦戦していたことを機会と捉えハイエンドモデルCPU事業にシフト。インテルやエヌビディア(NASDAQ:NVDA)と競合することとなった。
この転換が功を奏し、売上高は2016年から2018年までの3年間で各年8%、21%、23%増加した。
技術的優位性
AMDはハイエンドCPU生産に移行するにあたって、従来モデルを超える性能を持つ製品開発が求められた。
一方、インテルの14nmCPUは2014年に発表されて以来供給難が続いている。
インテルは本来2015年に予定していた10nmCPUの発表は、14nmCPUにおける度重なる生産上の問題を受けまず2017年へ、さらには今年7-9月期へと延期された。
そんな中、AMDは台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング (TSMC)(NYSE:TSM)と提携し、AMDが設計した半導体をTSMCの設備で生産すると発表した。
この提携により、AMDはワットパフォーマンスの高いTSMCの7nmアーキテクチャを活用できるようになった。
AMDが7月7日に発表予定の新型CPUはインテルやエヌビディア製品と同等の性能を持ちながら、価格は抑えられている。
AMDが今回発表する第3世代Ryzenは199ドル、対するインテルのi9-9000Kプロセッサは499ドルで販売されている。
CEOのブレークスルー
AMD復活劇の立役者は2014年から同社CEOを務めるリサ・スー氏だ。MITの電気工学博士号を持つスー氏は成長戦略や生産プロセスを大胆に改革してきた。
バロンズは先月発表した「世界のベストCEO」において「インテルを脅かす存在」としてスー氏を選出。
またエヌビディアのジェンセン・フアンCEOが経営手腕を発揮する一方で、インテルCEOは2月にボブ・スワン氏へ交代されたばかりだ。激化する競争の中で同氏が直面する課題は多い。
総括
過去の業績は必ずしも将来のリターンに影響しない。そして現在、AMD株は順調に回復している。
AMDはCPU市場におけるリーダーへの道を突き進んでいる。過去2年間の売上成長は20%を超えており、見通しは明るい。
ただ今回の急騰において市場が先走っている可能性は否定できない。またインテルやエヌビディアもAMDの躍進に対し手を打ってくるだろう。さらに両社は現在、売上高や純利益においてAMDを上回っている。
AMDは今後も快進撃を続けると考えられる。しかし現在のリスクリワードレシオは十分良好とは言えない水準であるため、もう少し押し目を待ってエントリーするのが良いだろう。