[ドバイ 19日 ロイター] - 英領ジブラルタル自治政府が拿捕し、先週解放したイランの石油タンカー「アドリアン・ダリア」(グレース1から改名)は、18日夜にジブラルタル沖を出航し、現在ギリシャに向けて航行している。イランは、米国が同タンカーの拿捕を試みれば「重大な結果」を招くと警告した。
タンカーは、現地時間18日午後11時(2100GMT、日本時間19日午前6時)ごろ、ジブラルタル沖を出航。リフィニティブの船舶データによると、19日朝の段階でギリシャのカラマタに向けて航行しており、25日0000GMTに到着する見通し。この件について、ギリシャ当局のコメントは得られていない。
イランのザリフ外相は訪問先のフィンランドで、「問題が解決したことに安堵している。事態が収束に向かうことを望んでいる」としながらも、米国が出したタンカーの差し押さえ令状には法的な根拠がなく、事態の「エスカレーションを狙う」政治的な意図があったと批判した。
ただ米NBCネットワークのインタビューに対し、イランは軍事力は行使しないと表明。「イランは過去250年間にわたり、自衛のため以外に軍事力を行使したことはない」と述べると同時に、米国がイランに対し軍事行動を起こす公算も小さいとの見方を示した。
ジブラルタルは15日、欧州連合(EU)の対シリア制裁に違反した疑いで7月に拿捕したタンカーを解放を決定した。しかし、米ワシントンの裁判所は16日、タンカーの差し押さえ令状を発布。これに対しジブラルタルは18日、自らがEUの法規の制約を受けるためとして、米国の要請には応じられないと表明していた。
イラン外務省は19日、同タンカーについて、米国が再び拿捕を試みれば「重大な結果」を招くと警告した。
イラン国営テレビによると、外務省のムサビ報道官は、同タンカーがジブラルタル出航後、米国が改めて差し押さえを要求する可能性があるか、との質問に、外務省のムサビ報道官は、「そのような行動、発言でさえも、公海での航行の安全を危険にさらすことになる」とし「イランはこれまで、公式ルート、特に(外交窓口である)スイス大使館を通じて米国側にそのような過ちを犯さないよう警告してきた」と述べた。
また、イランの有力議員は、タンカーが目的に到着するまで英国との危機は続くと述べた。