[ワシントン 18日 ロイター] - バイデン米大統領は18日、カナダとメキシコの首脳をホワイトハウスに迎え、5年ぶりとなる3カ国首脳会談を開催、北米地域における連携強化に取り組んだ。
バイデン氏は、カナダのトルドー首相、メキシコのロペスオブラドール大統領とそれぞれ個別に会談し、その後3者で会談した。
会談は、米、カナダ、メキシコが結ぶ通商協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に基づき、3カ国の共通点を見いだすことが目的。USMCAの通商規模は年間1兆5000億ドル。
ただ、自動車業界政策やバイデン氏の「バイ・アメリカン」政策、メキシコのエネルギー法案などでの相違点が会談の重荷となった。
バイデン政権は、移民問題や貿易摩擦の軽減、コロナ禍からの景気回復、中国に対する競争力強化といった課題で2カ国と連携して前進することを期待している。
バイデン氏は「北米の未来へのビジョンは、われわれの共通の強みに基づいている」と強調した。
「パンデミックを終息させ、気候危機を回避するために断固とした行動を取らなければならない。さらに、包括的な経済復興を推進する必要がある」とし、「北半球での前例のない移民問題への対処も必要だ」と述べた。
会談終了後、ホワイトハウスは、メタンの排出削減の取り組みや、3カ国が中南米・カリブ諸国にコロナワクチンを寄付する内容を盛り込んだ合意を発表した。
今回の首脳会談は、トランプ前米大統領が廃止した3カ国の作業部会を復活させる取り組み。トランプ大統領時代はカナダ、メキシコとぎくしゃくした関係が続いた。
就任から約10カ月が経過したバイデン氏には外交面での明るい話題が必要。支持率の低下に直面しているバイデン氏は、インフレ高進やサプライチェーン(供給網)の問題に取り組む一方で、メキシコからの移民急増にも苦慮している。
バイデン氏は1月の就任以来初の対面形式となったロペスオブラドール大統領との会談中、記者団に対し、移民問題が主要課題の1つだとしたが、詳細については言及しなかった。
ロペスオブラドール大統領は、米国に移民してから長年経過した多くの人々の地位向上につながる提案をしてくれたバイデン氏に感謝するとともに、そのような動きを支持するよう米議会に求めた。バイデン大統領の移民政策の行方は米議会では不透明なままだ。
<中国を警戒>
3首脳は、中国を念頭にしたバイデン政権の政策である、強制労働でつくられた製品の輸入を禁止する方針を示した。
人権活動家や欧米の政治家は中国が新疆ウイグル自治区で強制労働を行っていると非難。一方、中国政府はそうした訴えを否定している。
ロペスオブラドール大統領は三者会談で、米国とカナダの労働力のために必要な「移民の拒否停止」を含め、北米の経済統合を進めることが「中国の生産的・商業的拡大」に立ち向かう最善の方法だと主張。北米3カ国は経済力で中国と「容認できない不均衡」に陥る可能性があるとし、そうした状況では「武力の行使で格差を解消しようとする誘惑がつきまとうことになる」と指摘した。
バイデン政権はさまざまな問題で中国に対して厳しい表現をしているが、今週初めに行われたバイデン氏と中国の習近平国家主席とのオンライン首脳会談はその緊張を緩める狙いがあった。
カナダも中国との関係は厳しくなっている。
トルドー首相は、バイデン氏とは多くの問題で「強く一致している」と指摘。これは首相がトランプ前米大統領と頻繁に衝突していたのとは対照的だ。
<米のEV税控除>
カナダとメキシコは、バイデン大統領の看板政策の一つである気候変動・社会保障関連歳出法案「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」に盛り込まれた電気自動車(EV)購入に対する税控除で米製造業が有利になると懸念、カナダはUSMCA違反だと主張している。
会談後、トルドー首相は記者団に、EV税控除に関するカナダの懸念に米国は耳を傾けたと述べ、引き続きこの問題に取り組む方針を示した。バイ・アメリカンについても、米との関係における懸案だと指摘した。