[ワシントン 23日 ロイター] - バイデン米政権は23日、日本や中国、インド、韓国、英国と協調し、石油価格の抑制に向け、戦略石油備蓄を放出すると発表した。米政府高官によると、米国が中国など主要消費国と協調して備蓄を放出するのは初めて。
米国は5000万バレル放出する。国内消費量の約2日半分に相当する。12月中旬から下旬に市場に供給される見込みという。備蓄の放出は貸与と売却の形で実施する。3200万バレル分は今後数カ月にかけ、石油会社に貸与される。1800万バレル分は売却に充てられ、議会がすでに承認している売却を加速する方針とした。
インドは備蓄から500万バレル放出し、英国は民間備蓄から150万バレルを任意に放出することを認めると表明した。
共同通信など日本のメディアは、日本の国家備蓄の放出はまず数日分になる見通しと伝えている。国家備蓄の余剰分を市場に放出する。韓国は放出量や時期については、米国や他の同盟国との協議後に決定するとした。中国の放出量および時期は明らかになっていない。
バイデン大統領は「時間はかかるが、遠くない将来に給油所のガソリン価格が下がるだろう。長期的に米国はクリーンエネルギーにシフトし、石油への依存度を低下させる」と強調した。
米政権は石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」に対し、十分な原油供給量を維持するよう繰り返し求めてきたものの、これまでに追加増産は見送られてきた。OPECプラスは12月2日に会合を開く。
原油価格は最近、7年ぶりの水準に急騰し、ガソリン小売価格は過去1年間で60%余り上昇している。新型コロナウイルス対策の行動制限が緩和されたことが主因だ。ここ数日の原油相場は備蓄放出の観測で下げていたため、23日の発表後は反発した。
キャピタル・エコノミクスのチーフ・コモディティ・エコノミスト、キャロライン・ベイン氏は「価格引き下げには十分な規模ではなく、OPECプラスが増産ペースを落とすきっかけとなれば逆効果だ」と指摘した。
一方、アゲイン・キャピタルのパートナー、ジョン・キルダフ氏はOPECプラスは数カ月にわたり原油を出し惜しみしてきたとし、協調放出は「消費国がOPECプラスにもはや振り回されることはないというシグナルを送ることになる」と分析した。
米国は過去に、石油備蓄の放出で国際エネルギー機関(IEA)と協調してきた。日本と韓国はIEAに加盟しているが、中国とインドは正式メンバーではない。