[28日 ロイター] - エジプトのシャルムエルシェイクで20日まで開かれた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)では、化石燃料業界を同情的に扱う雰囲気が生まれ、それが土壇場での協議に影響を及ぼした形となり、より野心的な合意を期待していた人々の不満につながった──。各国政府高官などからはこうした声が聞かれた。
その1つの原因としては、天然ガス輸出国であるとともにペルシャ湾岸の産油国から資金援助を受けているエジプトが議長国だったという点が挙げられる。ただロシアのウクライナ侵攻や、それに伴う欧州のエネルギー危機も影を落としたのは間違いない。
エジプト政府は、交渉に向けた建設的なムードを醸成することに最優先で取り組み、中立的な調停者という立場で行動したと主張。大統領府は、化石燃料業界が同情的な扱いを受けたとの見方を否定した。
大統領府は「COP27の最終決定内容は、話し合いに加わった条約締約国全ての合意によって到達した複雑な意見の組み合わせだった」と説明している。
ただ欧州各国がロシア産天然ガスの代わりを確保しようと奔走していた以上、環境団体や科学者らからの「政府と企業は地中にある原油とガスをそのまま使わずにおくべきだ」という要求も、今年に限れば勢いを失ってしまった。
結局COP27では、気候変動で生じた発展途上国の「損失と被害」支援に特化した基金設立という長年の懸案で合意が実現し、気候変動に対して脆弱な途上国から歓迎された半面、重要議題をまとめた「カバー決定」の文書は化石燃料業界の働きかけで踏み込み不足になったとの指摘が出ている。
ノルウェーのアイデ気候変動・環境相は「カバー決定と緩和(温室効果ガス削減)作業には、気候危機の切迫感が全面的に反映されず、化石燃料や後ろ向きの勢力の要求にあまりにも応じる格好になった」と嘆く。
アイデ氏によると、損失と被害の基金設立を最も熱心に推進した国の幾つかは、同時に化石燃料削減を巡る表現を弱めようとしたという。
<低排出>
COP27の合意文書では、化石燃料について一部の国が提唱したような段階的削減強化の取り組みは盛り込まれず、おおむね昨年のCOP26と同じ言い回しにとどまった。また「低排出と再生可能エネルギー」という新たな言葉も登場。エジプト大統領府はこの言葉に関して、全ての関係国が採用している「公正な(エネルギー)移行」の考えの一環を示しており、温室効果ガス排出量を減らすため水素や原子力の利用を含めていると述べた。
エジプト外相でCOP27議長を務めたサメハ・シュクリ氏は、特定のグループに「失望感」が生じたことを認めつつも、「1つの当事者が全ての目標を達成できなかったとして、それが合意内容の価値を奪うことにはならない」と強調した。
それでも損失と被害の問題を除くほとんどの分野で進展は乏しかった、と環境活動家や一部の国の代表は指摘。化石燃料業界が過去のCOPよりも公然と、また目立った形で活動し、協議の基調を決めてしまったと付け加えた。
パキスタンのアクラム国連大使は、ウクライナの戦争による影響を挙げて、脱化石燃料が険しい道のりになることがかなりはっきりしてきた、と述べた。
(Aidan Lewis記者、Sarah McFarlane記者、Valerie Volcovici記者)