[モスクワ 15日 ロイター] - 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は15日、ロシア軍が占拠するウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所を視察し、冷却水の確保が最優先事項だと強調した上で、当面は安全に稼働できるとの見方を示した。
ザポロジエ原発ではカホフカ水力発電所のダムから取水した水を貯水池に貯め冷却水として利用していたが、 先週のダム決壊で水位が低下したため、現在は井戸から汲み上げた地下水を補給している。
グロッシ氏は「原発の安全に不可欠なのは貯水池の水位が現在の水準にとどまることだ」と貯水池付近からツイッターに投稿。現在確保している冷却水で当面原発の安全を維持することが可能との見方を示した。
グロッシ氏のザポロジエ原発訪問は、ロシアの侵攻後3度目となる。
IAEAの報道官によると、視察団がウクライナ軍支配地域に戻る際、爆発音がしたためグロッシ氏らの車列が一時停止した。ただ、直接的な危険はなかったという。
ロシアの通信社によると、グロッシ事務局長は現場の状況は「深刻」としながらも、冷却水の水準は十分との見解を示した。また、IAEAの視察団が現場にとどまるとも述べた。
タス通信によるとグロッシ氏は「国連安全保障理事会で策定された政治的合意があるが、当事者同士の和平交渉や停戦交渉は行われていない」とし、現時点でロシアとウクライナがザポロジエ原発の安全性に関する文書に署名することを期待するのは非現実的との見方を示した。
ザポロジエ原発付近ではウクライナ軍とロシア軍の激しい戦闘が続いており、安全上の理由からグロッシ氏の原発視察は1日延期されていた。ザポロジエ原発の6基の原子炉は現在停止中。
ロシア通信(RIA)は、ロシア国営原子力企業ロスアトムのアレクセイ・リハチョフ最高経営責任者(CEO)が、グロッシ氏はザポロジエ原発でダム決壊後の安全を確保するためのセキュリティー対策を視察したと述べたと伝えている。