[ロンドン/ドバイ 4日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国でつくる「OPECプラス」は昨年11月以降減産を続け、原油価格のテコ入れを図っている。
今年4月には減産幅拡大という予想外の発表をしたため、原油価格は一時1バレル=87ドル超まで反発した。ただ上昇は長続きせず、足元の北海ブレントは76ドル弱。
6月のOPECプラス閣僚級会合で協調減産を来年まで延長すると表明しただけでなく、サウジアラビアは今月初め、自主的な追加減産を8月まで続けると明らかにしており、ロシアも8月に減産する方針を打ち出している。
しかしユーラシア・グループのアナリストチームは、今年後半の原油需要予想に関する悲観論に覆われている市場のムードを変える上でほとんど役立たないだろうとの見通しを示した。
OPECプラスの減産が原油価格を大きく押し上げられない主な理由を以下に記した。
◎中国の低調な需要を懸念
中国発のデータにより、世界第2位の石油消費国である同国は、「ゼロコロナ」政策解除後の経済の回復が勢いを失いつつあるのではないかとの不安が広がった。
コメルツ銀行のアナリスト、カルステン・フリッチュ氏は「中国の石油需要がしっかりしていることはデータで証明されているが、景気回復は想定されたよりもずっと低調に推移している」と指摘。石油需要の急増は昨年落ち込んだ反動という面が大きく、今後は著しく鈍化しそうだと警戒している。
◎金利上昇
米連邦準備理事会(FRB)を含めた主要中央銀行がインフレ抑制のために追加利上げを示唆していることが、原油価格を巡る心配に拍車をかけている。
金利上昇は消費者の可処分所得を減らすので、ドライブや旅行の出費が抑えられて、石油需要の足かせになりかねない。
製造業にとって金利上昇はコスト増大を意味し、実際に製造業活動の減速を示すデータも出ている。
PVMのアナリスト、タマス・バルガ氏は「世界的に製造業が苦境にあるのは間違いない。日本やユーロ圏、英国、米国で活動が縮小し、中国でも先月に鈍化が見られた」と話す。
これらの要素を踏まえると、年後半に石油需要が力強く持ち直すシナリオを投資家は織り込まないということになる。
ユーラシア・グループは「国際エネルギー機関(IEA)とOPECはいずれも、(需要に対応するために)日量約200万バレルの在庫が引き出されると引き続き予想しているが、その信頼性はどんどん低下してきている」と述べた。
◎米国の生産増加
米国の原油生産が想定以上のスピードで伸びていることも、原油価格に対する市場の弱気ムードにつながっている。
米エネルギー省エネルギー情報局は今年の国内原油生産について、前年比増加幅の予想を以前の日量64万バレルから72万バレルに引き上げ、生産量は1261万バレルになると見込んでいる。
◎強気派が後退
サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は2020年、石油市場への過剰な投機すれば「とんでもなく痛い目を見る」と警告。今年6月のOPECプラス閣僚級会合前にも同様の発言を行い、OPECプラスが価格下落に賭ける投機筋に打撃を与えるために減産幅拡大を検討するかもしれない、と市場は身構えた。
しかし投資家は今も買い持ちを縮小し続けており、強気派は後退している様子だ。
最新データによると、米WTIと北海ブレント先物の合計買い持ち規模は6万6000枚減って23万1000枚と、20年3月に記録した直近の最低水準を4万8000枚上回る程度に過ぎない、とサクソ・バンクのアナリスト、オーレ・ハンセン氏は明らかにした。