Robert Harvey Natalie Grover
[ロンドン 25日 ロイター] - 原油価格が1バレル=100ドルに近づいてきたが、幾つかの要素がこの大台を超えて持続的に上昇する展開を阻むことになりそうだ。
アナリストは(1)石油輸出国機構(OPEC)プラス非加盟国の増産見通し(2)歳入増を図る必要からのロシアの供給拡大(3)金利上昇で経済が冷やされた西側諸国の需要鈍化の可能性――などを挙げている。
北海ブレント価格は先週、一時96ドル弱まで高騰。米WTI価格も年初来高値の91ドルを付けた。
需要増加や供給面の制約、燃料と原油の在庫が相対的に少ない点などを理由に、北海ブレントが年内に100ドルを突破するとの見方は増えつつある。
だが非OPECプラス諸国の生産増加が価格上昇を抑える可能性がある。ゴールドマン・サックスは来年までに、非OPECプラス諸国の供給が日量110万バレル増えると予想し、国際エネルギー機関(IEA)は130万バレル上積みされると見込む。
ブラジルとガイアナ、米国の生産量が最も伸びるとみられている。
ゴールドマンのアナリストチームは、石油生産に関する投資が復活し、沖合油田の生産が増加することからも長期的な価格上昇の公算は乏しくなっていると分析。「この原油値上がり局面の大半はもう過ぎ去った」と付け加えた。
OPECプラス内でも、自主減産の継続が難しくなってきた面がある。OPECプラスが実行している協調減産、特にロシアとサウジアラビアが打ち出した年末までの合計日量130万バレルの自主減産こそが、足元の原油先物価格を押し上げてきた主役だ。
しかしPVMのタマス・バルガ氏は、ウクライナ侵攻に伴う財政悪化に見舞われたロシアは長期にわたって原油輸出を制限することはできないのではないかとの見方を示した。
複数のアナリストによると、OPECの事実上のリーダーであるサウジにとっても、今後の生産方針を考慮する上で、需要に大打撃を与えて消費国を景気後退に陥らせず、しかも生産国に十分な収入をもたらす価格をいかに設定するかという永遠の課題が再浮上してくるだろうという。
OANDAのアナリスト、クレイグ・アーラム氏は「OPECプラスが減産規模を維持し、世界を景気後退に追いやることに多大な経済合理性があるのかは確信が持てない。だから価格がどこまで上がるのか、そして高値がいつまで続くのか疑問が出てくる」と述べた。
<インフレ懸念再来も>
足元の原油高につれて、欧州や米国では燃料の小売価格も数カ月ぶりの水準に跳ね上がっている。
もしも原油が100ドル超の水準に長くとどまれば、物価上昇を抑えるためにこれまで大幅な利上げを進めてきた各国にとって、またインフレ懸念が強まりかねない。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は先週の会見で「エネルギー価格が高止まりするなら、消費に影響を及ぼし、消費者の予想物価にも波及するかもしれない。これはわれわれが注視しなければならない要素だ」と語った。
HSBCのアナリスト、アジャイ・パーマー氏はロイターに、各国は燃料税引き下げなどの財政措置で消費者の負担を軽減する道を模索するのではないかとの見方を示した。
米国ではガソリン価格が今月になって昨年10月以降で初めて、心理的な節目として重要な1ガロン=4ドルを突破し、軽油価格も昨年12月以来の高水準に達した。
こうした燃料高は来年の大統領選にかけて政治的な対応が求められる問題になっている。
バイデン大統領は既に価格引き下げを約束しているものの、現時点では具体的な方法には言及していない。