Gary McWilliams
[ヒューストン 26日 ロイター] - 今年総額で2500億ドルの合併・買収(M&A)が行われた米石油・ガス業界は来年、再編の動きがさらに加速する公算が大きい。
世界的な石油需要の高騰などを背景に大手各社の買収熱が高まり、エクソンモービルやシェブロン、オキシデンタル・ペトロリアムが今年に手がけた買収案件の合計額は1350億ドルに達した。コノコフィリップスも過去2年で2件の大型買収の手続きを完了している。
再編の主な舞台となったのは、テキサス州西部からニューメキシコ州にまたがる米最大のシェールオイル産地であるパーミアン盆地で、現在は4社が将来見込まれる生産量のおよそ58%を握る態勢になった。
パーミアンでは2027年末までに日量700万バレルの生産が予想されているが、各社とも最低でも生産量を日量100万バレルに乗せることを目指している。
業界再編はこれだけにとどまりそうにない。ダラス地区連銀が今月行ったエネルギー企業幹部に対する調査によると、全体の75%は向こう2年で500億ドルないしそれ以上の規模のM&Aが増えるとの見通しを示した。
実際、非公開企業としてはパーミアン最大のシェール生産者であるエンデバー・エナジー・パートナーズは身売りを検討しており、米シェールオイルは一段と生産の集中が進んでもおかしくない。
ウッド・マッケンジーの米州上流部門調査ディレクター、ライアン・ダマン氏は「再編が業界の景色を活発に変化させつつある」と語り、今後はごく限られた企業が生産量を決定する構図になると付け加えた。
最近のM&Aは、買い手側がまだ手つかずの、コストが低い石油・ガス資源を取り込みたいという意欲の強さを浮き彫りにもしている。
今年の主な案件としては、エクソンによるパイオニア・ナチュラル・リソーシズ買収(595億ドル)とデンベリー買収(49億ドル)、シェブロンによるヘス買収(530億ドル)とPDCエナジー買収(62億ドル)、オキシデンタルによるクラウンロック買収(120億ドル)などが挙げられる。
いずれにしろ大半の買収は、自社の高い株価を利用した株式交換方式を採用し、多額の現金支払いをしない形で行われた。例えばエクソンが手元にとどめている現金は約330億ドルと、4年前の6倍以上だ。
各社の株主にとっても金利上昇のため、新たな再生可能エネルギーのプロジェクト資金を現金で賄うよりも、株式交換で買収に動く方が魅力的になっている。米国とフランスでは幾つかの洋上風力発電プロジェクトが、金利上昇やサプライチェーン(供給網)コスト増大のあおりで中止された。
一方で石油・ガス業界は、この先米国ではクリーンエネルギーや電気自動車(EV)への移行や社会のエネルギー利用効率改善が進み、化石燃料消費が縮小して生産コストの高い企業が苦境に陥る展開になるとも認識している。
大手各社が生産量よりもキャッシュフローを重視する中で、ウッド・マッケンジーによると今後5年間の石油生産量の増加幅は年平均で日量約25万バレルと、過去5年の半分程度にとどまるとみられている。