伊賀大記
[東京 9日 ロイター] - 金融市場で銀行によるリスクテークの拡大に期待が高まっている。自己資本規制が一時的に緩和されることで、貸出や国債などの有価証券取引拡大が可能となるためだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で資金需要が増加してるほか、金融市場も流動性が低下。リスクを取れる「銀行マネー」の重要性が増している。
金融庁と日本銀行は8日、金融庁長官と日本銀行副総裁を含むメンバーからなる「金融庁・日本銀行連絡会(第12回)」を開催。コロナショックおよび緊急事態宣言で被害を受けた企業への資金繰りを支援するため、日銀預け金をレバレッジ比率上のエクスポージャーの額から一時的に控除することに向け、所要の手続きを進めることで合意した。
レバレッジ比率規制は、メガバンクなど国際統一基準行に対して、有価証券や、貸出、デリバティブなどのエクスポージャー(総資産)に対して、一定以上の自己資本(Tier1)を積むことを求めている。
市場では「一時的というのがいつまでなのか不明だが、今回の措置で国際統一基準行はTier1資本の積み増しを必要とせずにバランスシートを拡大できる余地が生まれる。都銀の預け金は総資産の25%程度を占めており、除外される効果は大きい」(外資系証券)との見方が出ている。
米国でも、米連邦準備理事会(FRB)が1日、大手銀行の補完的レバレッジ比率(SLR)規制を一時的に緩和し、銀行が保有する米国債やFRBに預ける準備預金を同比率の算出から除外することを認めると発表している。
野村証券のシニア金利ストラテジスト、中島武信氏はバランスシートの制約が緩和されることで、貸出のほか、国債やレポ取引、デリバティブ取引が行いやすくなると指摘。「邦銀が当座預金とレポ取引の裁定取引も行いやすくなるので、レポレートの過度な低下を抑制する効果もある」と話している。
ただ、「銀行はバランスシートの制約で貸出を抑制しているわけではない。国内に需要がないからだ。新型コロナの影響で借り入れ需要が増加しているが、貸し倒れリスクもある。融資申請が急増すれば十分な与信審査ができなくなる。貸出がこれで増えるかは不透明」(国内証券)との見方もある。
(編集:石田仁志)