[北京 17日 ロイター] - 中国国家統計局が17日に発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)は、前年同期比6.8%減少した。四半期の統計で遡れる1992年以降で初のマイナスとなった。
新型コロナウイルス感染拡大抑制に向けた措置により、工場や交通機関、ショッピングモールが閉鎖されたことが響いた。
GDPの減少率はロイターがまとめたアナリストの予想(6.5%)よりも大幅だった。昨年第4・四半期は6%増加した。
第1・四半期GDPは前期比では9.8%減少。市場予想は9.9%減。昨年第4・四半期は1.5%増だった。
これとは別に発表された3月の鉱工業生産は前年比1.1%減少し、予想(7.3%減)ほどは落ち込まなかった。1─2月は13.5%減少していた。新型コロナの打撃を受けた企業に対する減税や融資などが、2月以降封鎖されていた経済活動の再開を支援していることがうかがわれる。
3月の小売売上高は前年比15.8%減少。予想(10.0%減)以上に縮小した。1─2月は20.5%減を記録していた。
1─3月の固定資産投資は前年比16.1%減少。予想は15.1%減だった。1─2月は24.5%減を記録していた。国内投資全体の60%を占める民間部門の固定資産投資は、1─3月に18.8%減少。1─2月は26.4%減少していた。
都市部失業率は3月に5.9%と、2月の6.2%から改善した。
ただアナリストらは、事業の再開が遅れている企業があることや外需の落ち込みなどにより、今年3000万人近くの雇用が失われると警告している。2008━09年の金融危機で失われた2000万人強を上回る見通しという。
統計局の毛盛勇報道官は記者団に対し、第2・四半期の中国経済は第1・四半期よりかなり改善するとの見方を示した。
4月上旬の対外貿易は3月から一段と改善していると指摘したほか、繰り延べ需要により消費も回復するとの見方を示した。
また、雇用状況は引き続き安定しているとし、大規模な人員削減は行われていないと述べた。
毛報道官はさらに、新型コロナの流行による短期的な打撃が中国の長期的な成長に影響を及ぼすことはないとも指摘。新型コロナの流行は建国以来最も困難な公衆衛生上の緊急事態となったが、中国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に変化はないと述べた。
ただ、所得が減少し、国外の大半の地域が景気後退(リセッション)に陥るなか、これまで中国経済の成長を最もけん引してきた内需の低迷が懸念されている。
興業銀行のチーフエコノミスト、Lu Zhengwei氏は「第1・四半期のGDPは社会全体が封鎖されていた時の経済の停滞がもたらした損害を反映しており、総じて予想の範囲内だ」と語った。「次の局面では、全体的な需要の欠如が懸念される」と指摘、内需が十分回復していないほか、新型コロナの感染拡大により外需も落ち込む可能性が高いと述べた。
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツ(香港)のマルチアセット・シニアストラテジスト、BEN LUK氏は「1四半期に限ったことだとは考えにくく、第2・四半期も予想を下回る見通しだ。外需の弱さを補うため、何らかの政策支援が今月中か来月初めに打ち出されるだろう」との見方を示した。
新型コロナ感染症の発生源である中国では、本土で3000人以上の死者が出ているが、感染者の増加ペースは既にピークを打ち、大幅に鈍化している。
停止状態となった経済活動も、3月以降は大部分で再開した。しかし、新型コロナの世界的流行で海外需要が落ち込んでいるため、経済復興を目指す中国当局は苦戦を強いられるとアナリストは指摘する。
ノムラは調査ノートで、当局が近く景気刺激策を打ち出し、中国人民銀行(中央銀行)がさまざまな経路を通じて資金を供給する可能性があると予想。
「新たな与信は、大半がインフラや不動産、耐久消費財向け支出に充てられた過去の緩和サイクルと異なり、今回は企業や銀行、家計がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)危機を乗り切るのを支援するための金融支援に大半が利用されると予想している」とした。
失業者の増加が社会の安定を脅かすなか、中国政府は新型コロナに対応し、一段の景気対策を講じる構えを示している。
人民銀も既に、経済への資金供給を増やすための緩和策を講じているが、これまでのところ、世界的な金融危機の際に比べて慎重に緩和を進めている。
ロイタ―調査によると、2020年の中国の経済成長率は2.5%と、ほぼ50年ぶりの水準に落ち込むと予想されている。
*内容を追加しました。