[シドニー 20日 ロイター] - オーストラリアの大学に所属する著名経済学者157人は政府への公開書簡で、新型コロナウイルス感染拡大を抑えるため、封じ込めを徹底するよう求めた。感染者の増加ペースの大幅鈍化を受けて、行動制限を緩和すべきではないと主張している。
同国は国境を封鎖し、人の移動を厳しく規制している。これらの対策が奏功し、新型コロナの1日当たりの新規感染者数は40人未満に減少している。一方、行動制限によって失業率は16年ぶりの高水準である約10%に跳ね上がるとみられている。
経済学者らは書簡で「公衆衛生上の危機に先ず徹底的に対応しない限り、経済の機能は確保できない」と警告した。
モリソン首相は前週、新型コロナ感染拡大阻止に向けた制限措置を少なくとも今後4週間は維持する考えを示した。
複数の州首相は20日、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の確保を続けるよう市民に訴えた。
ビクトリア州のアンドリュース州首相は、記者団に「われわれは皆、大変な犠牲を払ってきた。欲求不満が勝るようになったからといって、これまでの前進を台無しにするわけにはいかない」と強調した。
その上で、国内の検査能力や濃厚接触者の特定方法が強化され、さらなる感染拡大に対応できる態勢が各地で整ってはじめて、行動制限を大幅に緩和できるとした。
豪政府は、新型コロナ戦略として、人々の移動経路を追跡できる新たな携帯アプリを打ち出しているが、アプリが効果を出すには人口の40%以上の登録が必要としている。
ただ、感染者が最も多いニューサウスウェールズ州では新規感染者が5週間ぶりの水準に低下しているため、21日の豪政府の閣議では、マイナーな制限について緩和を決める可能性がある。