[シドニー 30日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)が30日発表した統計によると、3月の同国企業の借り入れは30年ぶりの大幅な増加を記録した。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、手元資金を厚めに確保する企業が目立った。
3月の企業向けの総与信残高は前月比2.9%(290億豪ドル=190億ドル)増。1988年以降で最大の伸びを記録した。
企業向けの与信は1兆0200億豪ドル(6683億ドル)。初めて1兆豪ドルの大台に乗せた。
3月の民間向けの与信残高は1.1%増。世界的な金融危機以降で最大の増加となった。
オーストラリアでは新型コロナの感染拡大を受けて社会的距離を維持する厳格な政策が導入され、多くの企業は3月中旬に業務を停止。融資枠から資金を引き出す動きが広がった。
NABのアナリストは「国内経済が新型コロナで大打撃を受ける中、企業は低金利を利用して財務を強化し、できる限り雇用を維持しようとしている」と指摘した。
企業は大量の資金を調達できており、封鎖措置を乗り切る体制を強化できているとみられる。
一方、消費者はクレジットカードや自動車ローンなどの借り入れを減らした。
個人向けの与信は3月に1.4%減少。2008年以降で最大の減少となった。前年同月比では6.5%減。
3月下旬以降はカフェ、バー、美術館、スポーツ会場などの閉鎖で個人消費が減少しているとみられる。
失業者が増えていることから、新規の住宅購入も低迷しており、消費者心理は冷え込んでいる。
住宅融資は前年比3.1%増と、1977年の統計開始以来の低水準付近。3月の投資家向けの融資は前年比0.4%減と特に低迷した。
CBAのエコノミスト、ベリンダ・アレン氏は「居住用の住宅融資も伸び悩むだろう」と指摘。「政府の封鎖措置や価格の下落予想を背景に住宅売買は減っている」と述べた。