[13日 ロイター] - 米食品医薬品局(FDA)は今週、ファイザー/ビオンテック製の新型コロナウイルスワクチンの接種対象年齢を12歳まで引き下げることを承認したが、公立校がすぐに生徒に接種を義務付ける可能性は低い。米社会で消極論が根強く、政治的な壁も高いからだ。
カリフォルニア大学ヘイスティングス法科大学院の教授で、予防接種義務やワクチン関連法を専門とするドリット・ルービンシュタイン・ライス氏は、幼稚園年長から高校までの「K─12」公立学校の生徒に対する予防接種義務化は、ほぼ州政府に決定権があると説明。
大半の州では、義務化には州議会で法案を通す必要があるが、公立学校の生徒にコロナワクチン接種を義務化した州はまだないという。
一方、コロナワクチンの一部は「メッセンジャーRNA(mRNA)」という比較的新しい技術を使用しているほか、当局はこれまでにワクチンの緊急使用許可しか出していないため、接種について消極論も根強い。初期研究では子供のコロナ感染による重症化リスクは低いとの結果も示されている。ただ、リスクはゼロではなく、他人に感染させる恐れもある。
ライス氏は、州議会が年内にコロナワクチンの子供への接種義務化法案を通す可能性は極めて低いと指摘。「5歳以上に接種対象が拡大するまでは法案通過を試みることもしないだろう。同じ手続きを2回もしたくないからだ」と述べた。
多数の州議会では、対象年齢が12歳に引き下げられるよりも前に、共和党議員がコロナワクチン接種義務化を阻止する法案を提出。
カンザス州議会の麻酔医でもあるマーク・ステッフェン議員(共和党)は、州保健当局が予防接種義務のあるワクチンのリストに新たなワクチンを追加する権限を無効にする法案を提出。3月の審議でコロナワクチンは「実験的で遺伝子操作的」だとし、「長期的な危険性を完全に把握できるまで数十年かかかる」と強調した。
米ハーバード、ノースイースタン、ノースウエスタン、ラトガーズ大学の共同研究チームが4月に行った約2万2000人を対象とする全米調査では、母親の4分の1強が子供にワクチンを接種させる可能性は「極めて低い」と回答した。
米国教員連盟のランディ・ワインガーテン会長は、消極論があり教育界の指導者は接種義務化に力を入れるべきではないと強調。「現時点では人々にワクチンの有効性を理解してもらう必要がある。コロナによる打撃が特に大きい黒人などの保護者をはじめ、信頼を構築する必要がある」と述べた。
一方、米国の一部の私立学校は既にコロナワクチンの接種義務化に動いている。コネティカット州ニューカナンにあるセント・ルークス・スクールでは、秋の新学期からワクチン接種を義務化した。