[ブリュッセル 19日 ロイター] - 欧州連合(EU)は19日、新型コロナウイルスワクチンの生産拡大に向けた計画を提案した。米国などが支持している特許権の一時放棄よりも効果が期待できるとしている。
EUの計画は、1)輸出制限の緩和、2)ワクチンメーカーによる増産計画の発表、3)既存の世界貿易機関(WTO)ルールの柔軟な活用――が柱。
欧州委員会のドムブロフスキス副委員長(通商担当)は欧州議会で、各国に公平にワクチンを配分することが、国際社会の最優先課題だと主張。WTOの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の一時免除がワクチンの増産にどの程度つながるのか検証する用意があると述べた。
インドや南アフリカは昨年10月から、WTO加盟国に対し特許権の一部放棄を要求。バイデン米大統領も一時放棄を支持する考えを示したが、EUなどは一時放棄は生産拡大にはつながらないと反対している。
同副委員長は、生産を拡大し、ワクチンを共有し、価格を下げることが最善の方策だと表明。具体的には、輸出制限を最低限に抑え、ワクチンメーカーが、途上国に原価で供給するワクチンを増やす具体的な計画を発表する必要があると述べた。
また、既存のWTOルールでは、特許権の所有者の同意を得られない場合でも、国がメーカーにライセンスを供与できると指摘。このルールを活用してメーカーが原価でワクチンを供給した場合、特許権の所有者は利益を得るべきではないと主張した。
欧州委員会は、この対案を6月初旬にWTO加盟国に提示する予定。同委員会は、特許権の放棄にはWTOルールの変更が必要で、実現までに長い時間がかかる恐れがあるとしている。
欧州議会は、特許権の放棄に関する決議案について6月に採決を行う予定だが、賛成派の左派や緑の党と反対派の右派の溝は深い。