[ロンドン 13日 ロイター] - イングランド銀行(英中銀)は13日、新型コロナウイルス危機を受けてHSBCやバークレイズなどの大手銀行を対象に実施していた配当規制を同日付で撤廃した。各行へのストレステスト(健全性審査)で、コロナ禍の経済的影響の余波に対処できる十分な資本を有していることが判明したためと説明した。
英中銀の金融行政委員会(FPC)は「株主還元に関する緊急措置はもはや必要なくなった。今回の決定は、2021年ソルベンシー・ストレステストの中間結果と中銀の見通しに合致する」と述べた。
昨年3月、英政府はコロナ感染拡大を受けてロックダウン(都市封鎖)を実施。英中銀は銀行に対し、2020年末まで配当と自社株買いを停止するよう指示した。昨年12月、英中銀は規制を緩和し、配当を限定的に認めていた。
ベイリー総裁は、ここ数カ月でワクチン接種が進み、景気見通しが改善したと指摘したが「回復へのリスクはまだ存在する。経済が回復し、政府の支援措置が今後縮小する中で、家計や企業は金融システムから継続的な支援を必要とする見込みだ」と述べた。
英中銀は半期に一度の金融安定性報告で「FPCは、銀行が必要に応じて資本バッファーのあらゆる項目を活用し、回復局面の経済を支援すると予想している」と述べた。
FPCは、コロナ危機で実施したカウンター・シクリカル・バッファー(CCyB)をゼロ%とする措置を少なくとも今年12月まで維持することを決定した。
米連邦準備理事会(FRB)は6月に大手銀行の自社株買い・配当規制を撤廃。欧州中央銀行(ECB)も、経済情勢が再び悪化しなければ10月に規制を解除する方向だと銀行監督委のエンリア委員長が今月、述べている。
朝方のロンドン株式市場では、銀行株が上昇。HSBCとナットウエストは2%高。バークレイズ、スタンダード・チャータード、ロイズも1%以上値上がりしている。
FPCは、銀行幹部の賞与については、過大にならないよう、引き続き注視する方針を示した。
ウッズ副総裁は会見で、銀行の報酬について「より正常な設定」に戻ることが重要と指摘。「今後、経済回復の支援で極めて重要な役割を果たしていくことを考慮し、銀行の取締役会は、株主と従業員双方への配分で適切で賢明であることを期待する」と述べた。
平時のルールでは、賞与の延期や返還も可能だが、決定するのは取締役会との認識を示した。
英中銀は資産価格に警戒感を示し「金融市場でリスクテイクが増えている兆しがあり、一部の資産価格は行き過ぎのように見える」と指摘。
以前から懸念を示している暗号資産(仮想通貨)については、主に個人投資家にリスクが集中しているようだが、大手機関が関与している形跡もあり、経済全体に影響が広がりかねないとの見方を示した。
ベイリー総裁はスナク財務相への書簡で、規制が緩和されないことを望むとし「高い基準、独立した規制、金融の安定という英国の名声は、国際的な金融機関を引き寄せる重要な要素となってきた。それは今後もそうだろう」と述べた。