[メキシコ市/ワシントン 9日 ロイター] - 米国とメキシコは9日、4年ぶりに「ハイレベル経済対話」を再開した。メキシコ政府が発表した共同声明によると、サプライチェーン(供給網)の共有により競争力の強化を図るほか、移民問題に取り組む社会プログラムに投資することで合意した。
両国は気候変動や労働者の権利などに対応するためより一層の協力が必要なことも示した。
また、サプライチェーンに関する二国間の作業部会を設立することも明らかになった。混乱に直面する中でも国境を超えた貿易や製造業の耐性を高め、世界の他の地域から生産ラインを誘致することを目指すという。
メキシコ側の代表団としてエブラルド外相やクロティエ経済相が参加。米国側はハリス副大統領が代表団を率いたほか、ブリンケン国務長官らが参加した。
クロティエ経済相はワシントンでの記者会見で、メキシコは産業界や企業との話し合いの必要性について協議したと述べた。半導体の製造について、どの部分をどちらの国で製造するか詳細を決めることを念頭に置いている。
またメキシコは声明で、米国が雇用や農業を支援する植林プログラムなどへの技術支援に合意したと明らかにした。移住に対する選択肢として、中米やメキシコ南部の18─29歳の若者を対象とした職業計画も支援する。
ハリス副大統領は、前回のハイレベル経済対話からたくさんのことが起こったと指摘。新型コロナウイルスが世界経済をむしばみ、気候変動やサイバー攻撃がサプライチェーンを脅かす中で、両国の統一した対応が必要と述べた。
米国務省のプライス報道官は「今回の対話は雇用創出の改善、国際的な競争力の向上、貧困と不平等の削減を促進するものであり、米国およびメキシコ双方の市民に恩恵をもたらす」と述べた。
米国とメキシコは今回の対話において4つのピラー(柱)で合意。「ピラー1(第1の柱)」では、サプライチェーンの耐性強化や米メキシコ間の国境の近代化などが含まれるほか、「ピラー2」ではメキシコ南部および中米における持続可能な経済・社会的発展が焦点で、米国への移民につながる経済的要因に対応する。
残る2つのピラーではサイバーセキュリティーや労働力の開発などに取り組む。