[ジュネーブ 4日] - 世界貿易機関(WTO)は4日、2021年の世界のモノ貿易量が前年より10.8%増えるとの見通しを発表した。3月時点の予想(8.0%増)から上方修正した。ただ、貧困国を置き去りにした回復の二極化と、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)や供給網の問題による下振れリスクについて警告を発した。
22年は4.7%増えるとし、3月時点の4.0%増から引き上げた。21年に比べて伸びが鈍化し、パンデミック前の長期トレンドに近づくと見込んでいる。
WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は今回の上方修正が良いニュースとしながらも、新型コロナの新たな感染拡大や変異株のリスクがあり、満足はできないと述べた。全世界で計60億回の新型コロナワクチンが接種されている中で、低所得国では2800万回にとどまり、遅れを取っているとも指摘した。
アジアの輸出量は21年には19年比で15%近く増加し、欧州と北米の輸出量もほぼ回復する一方、アフリカと中東はパンデミック前の水準を下回るとした。
オコンジョイウェアラ氏は加盟164カ国の間で、特にワクチンやその他のコロナ治療薬の知的財産権の問題に関し、発展途上国へのワクチン供給拡大を目指している。南アフリカやインドなどの途上国は知的財産権の放棄を支持しているが、欧州連合(EU)などの先進国は反対している。
オコンジョイウェアラ氏は11月30日─12月3日のWTO閣僚会議で「双方が受け入れられる現実的な解決策があることを期待している」と語った。
WTOは供給網の問題について、ノートパソコンや携帯電話メーカーは半導体を確保できたのに対し、20年に発注を大幅に削減した自動車メーカーは苦戦しているなど特定の業種に限定されているとした。
ITや旅客輸送などのサービス分野は回復の兆しが見られるものの、パンデミック前の水準まで回復していないと指摘した。