[東京 13日 ロイター] - 日銀が13日公表した大手銀行による外貨の資金繰りに関するリポートで、新型コロナウイルスの感染拡大で国際金融市場の緊張が高まった昨年、非日系企業などへの外貨での貸出が急増した半面、ドル預金がそれほど増えなかったことが判明した。非日系企業は資金の多くをメインバンクである米銀などの口座に積み上げたとみられ、成長性の高い海外に積極展開してきた大手行にとって、危機時の外貨調達手法に課題が残ることが示された。
<邦銀からの借り入れは米銀などのメインバンクに>
リポートによると、新型コロナの世界的な感染拡大で金融市場の緊張が高まった20年2月末から4月末にかけて、大手行のうち国際統一基準行ではコミットメントラインの引き出しを含めて貸出金が約900億ドルに上った。
コミットメントラインの引き出しはコロナの影響を大きく受けた業種が中心とみられるが、リポートは「コミットメントラインを引き出した非日系企業については、その資金を邦銀の預金口座にそのまま積み上げる状況とはならなかった」と指摘。900億ドルの貸出に対して、邦銀の預金となったのは約200億ドルにとどまった。非日系企業は邦銀から引き出した資金の多くをメインバンクである米銀などの決済性口座に積み上げたとみられるという。
日銀など6中銀によるこの間のドルオペが約1400億ドルに上ったことで、大手行の外貨の資金繰りに大きな支障は生じなかったが、海外に積極展開してきた邦銀にとって、危機時の安定的な外貨調達に向けた課題が改めて浮き彫りになった。
大手行は、海外ビジネスを拡大する中で、取引の開拓や関係深化を狙って非日系企業とのコミットメントライン契約締結を積極的に推進してきたが、リポートは「コロナ相場においては、このことが資金流出の増加につながった面がある」とした。「取引が大口顧客に集中している場合、ストレス時における当該顧客の行動が金融機関の資金繰りに大きなインパクトをもたらす可能性がある」とも指摘した。
その上で、貸出先企業の丁寧な財務分析を通じてリスクの把握に努め、外貨流動性のストレステストに適切に反映することが求められるとした。
円貨以外の預金の受け入れを増やすことは容易ではないが、財務諸表に基づくトランザクション・バンキングなど付帯サービスの提供によって「決済性口座を増加させることで、市場変動時にも流出しにくい預金を増やす取り組みの重要性が改めて認識されている」とも指摘した。
今回のリポートは、経済トピックを簡潔に解説する「日銀レビュー」シリーズとして発表された。
(和田崇彦)