[東京 14日 ロイター] - 日銀の野口旭審議委員は14日、鳥取県金融経済懇談会後の記者会見で、来年3月末が期限となっている新型コロナ対応特別プログラムについて、感染が再び拡大する可能性がある限り、制度を維持していく必要があると述べた。
野口委員は懇談会の挨拶で、特別プログラムについて、感染症の経済への影響が十分に和らいでいけば縮小させるべきだが「その判断は慎重でなければならない」と指摘した。
会見では「コロナ以前のように自由に飲食できる状況になるまでには相当の時間を要する。3月末までにそのような見通しがつかないなら、当面は延長その他の措置を取らざるを得ない」とも述べた。
物価目標達成に向けた追加緩和の必要性については、ペントアップ(繰り越し)需要の顕在化で雇用状況が思うように改善しなければ追加緩和を打ち出す必要性が出てくるかもしれないと述べた。
野口委員は「一刻も早く経済を正常化していくことが課題だ」と語った。「ペントアップ需要が顕在化していけば、予想以上に早く労働市場も回復していくのではないかと期待している」と述べた。
ペントアップ需要について、感染状況の不確実性はあるものの「年末あるいは来年冒頭くらいから徐々に顕在化してくると期待している」と話す半面、ペントアップ需要の大きさや持続性は非常に不確実性が大きく、現時点で追加緩和の要否を見通すのは難しいと指摘した。
<スタグフレーション懸念と日本>
国際商品市況が高騰し、インフレ率上昇と不況が同時に進むスタグフレーションへの警戒感が浮上している。
野口委員は会見で、米国では物価のみならず賃金も上がっており、あくまで需要が高まる中での現象なので「不況」とは異なると説明。「日本でも局所的にはかなり物価が上がることがあり得るが、不況をもたらす可能性はそれほど大きくない」と述べた。
足元の原材料価格の上昇は世界経済の回復を背景にしており「企業は交易条件の悪化を十分に吸収して収益を上げることができている」とした。
<財務次官の寄稿>
野口委員は挨拶で、コロナ禍での現局面での財政政策の重要性を強調したが、矢野康治財務事務次官が月刊誌で与野党の政策論争を「バラマキ合戦」と批判したことについてはコメントを差し控えるとした。
野口委員は一般論と前置きした上で、財政の問題は長期持続可能性と経済下支えのための財政出動拡大の狭間で論議がなされてきたと説明。「最終的には国会・政府が有権者の民意を反映して決めるべきものだ」と話した。
(和田崇彦)