[ロンドン 19日 ロイター] - 英国政府は新型コロナウイルス流行のような危機に対する準備ができておらず、シミュレーション演習から学ぶことができなかったほか、欧州連合(EU)からの離脱に気を取られていた──。会計検査院(NAO)が19日、このような見解を示した。
英国では14万3000人以上が新型コロナで死亡しており、当初は新型コロナではなくインフルエンザのパンデミック(世界的大流行)に対処するための計画に基づいて対応していたとしてジョンソン首相は批判を浴びた。
NAOはまた、英国がEUを離脱した2020年1月31日は同国で初めて新型コロナの感染者が確認された日と同じであることから、ブレグジットに人員などの資源が集中したことを強調。民間緊急事態局が94人のフルタイム換算スタッフのうち56人を合意なしブレグジットによる潜在的な混乱に備えるために割り当てていたため、他のリスクと有事の計画に同時に注力する能力が制限されていたとした。
NAOのガレス・デービス院長は声明で「今回のパンデミックはシステム全体にわたる緊急事態に対する英国の脆弱性を露呈した。この緊急事態はあまりにも広範であるため、あらゆるレベルの政府と社会を巻き込んでいる」と指摘した。
NAOはさらに、政府は2007年と16年に実施された計画や能力を巡るパンデミックシミュレーションの警告を十分に注視していなかったと付け加えた。
政府側は、対応について、科学・医学の専門家が指導しており、2016年のシミュレーションを踏まえてパンデミック対応計画を改善したと主張。報道官は「われわれは常に、パンデミックから学ぶべき教訓があると言っており、春の完全な公的調査を約束している」とし、「われわれは幅広いシナリオに備えており、広範な取り決めがなされていたが、今回は世界中の医療システムに困難をもたらした前例のないパンデミックだ」と述べた。