[フランクフルト 17日 ロイター] - ドイツ連銀を含む複数の欧州中央銀行(ECB)当局者は17日、賃金の伸びが一段と持続的となり、物価上昇をあおる可能性があるとし、ECBがインフレリスクを過小評価している恐れがあるという見解を表明した。また、インフレ動向は転換期に差し掛かっており、コロナ禍以前の低水準に戻る公算は小さいという指摘も聞かれた。
ECBは前日、2022年のインフレ予測を大幅に引き上げたが、23─24年には目標を下回るとの見通しを示した。
独連銀のワイトマン総裁は、ECBの予測に疑問を示し、ECBが賃金上昇と気候中立経済への移行に伴うインフレリスクを無視している可能性があると指摘。「インフレリスクはドイツ、ユーロ圏全体とも上振れ方向に傾いている」とし「金融政策当局はこうしたリスクを無視すべきではない。警戒が必要だ」と述べた。
オランダ中銀のクノット総裁も国内テレビ番組で、来年のインフレ率が予想を上回った場合、ECBは「追加措置を取ることを躊躇(ちゅうちょ)しない。中銀が避けなければならない危険は、一時的なインフレが定着し常態化してしまうことだ」と述べた。
リトアニア中銀のシムクス総裁も、ユーロ圏のインフレ率がECBの予測を上回る可能性があると指摘。「インフレリスクは上向きだ」とし「リスクバランスはインフレ進行の方向に傾いている。オミクロン株、不透明要因、供給サイドの混乱継続、エネルギー価格上昇、生産価格への波及が理由だ。これは、経済成長リスクが下向きであることを意味する」と述べた。
ポルトガル中銀のセンテノ総裁もこうした見解に同意。「ユーロ圏のインフレを巡るリスクバランスは上向き」とし、現在のインフレの「高まり」に伴う二次的影響のリスクを警告した。
フランス中銀のビルロワドガロー総裁は、インフレの下振れリスクは限定的で、インフレ率が新型コロナのパンデミック(世界的大流行)前の水準に低下する可能性は低いという認識を示した。「金融危機後に見られたような2%の目標近辺で推移する新たな状況となる可能性がある」と語った。
ラトビア中銀のカザークス総裁は、ECBの政策が「転換期に近づき」、インフレ目標を達成する可能性が高まる中、「見解の相違は自然」という認識を示した。
また、ドイツ連銀は17日、最新の経済予想を発表した。供給網のボトルネックと新型コロナウイルス関連の新たな規制により今年第4・四半期と来年第1・四半期は経済が低迷し、回復が遅れるとの見方を示した。
半年に一度の経済見通しで、新型コロナの感染拡大を抑制するための措置や中間財のボトルネックにより、2021年第4・四半期と22年第1・四半期は成長が停滞すると予想した。
しかし22年春から個人消費は大幅に増加し、成長は力強く回復するとした。
22年の成長率予想は4.2%と6月時点の5.2%から引き下げた。欧州連合(EU)欧州委員会の予想(4.6%)も下回る。23年は1.7%から3.2%に上方修正した。
消費者物価の上昇率は22年が3.6%と前回予想の2倍の水準に引き上げた。23年と24年は2.2%へ低下するとした。