Farah Master
[香港 23日 ロイター] - 保険産業で働くエミリー・クオンさん(30)は、5歳の娘を自宅で学ばせるのに悪戦苦闘している。幼児から10代の子どもたちにオンライン学習を強いている香港の厳格な新型コロナウイルス感染症対策による制約のせいで、娘が何も身につけていないのではないか、とクオンさんは心配する。
3月初めから休校という新たな計画によって、「学年を通じて混乱が生じている」とクオンさんは語る。グローバルな金融ハブである香港では、子どもたちの精神衛生と教育を心配する親や教師たちから同様の声が上がっている。
「丸々2年間、iPadとZoomばかり。来年には1年生なのに、娘はこの2年間で何も学ばなかったことになりそうだ」とクオンさん。
多くの子どもたちにとって、友人にも会えず、学習のための物理的空間もないことが不安を大きくしている。
あるインターナショナルスクールの教師は、「子どもたちは壊れている。本当に同情する。彼らには何も残されていない」と語る。
香港は中国本土と同様の「ダイナミックゼロ」コロナ政策を推進している。新型コロナウイルスとの共存を試みるのではなく、いかなる代償を払ってでもすべての流行を根絶することが目標だ。だが、1日の感染者数は2月に入ってから約70倍に急増している。
学校の敷地を検査とワクチン接種の会場として使うために、すべての学生と生徒について3月に夏休みを前倒しするという措置は、反発を生むことになった。
22校、生徒数1万8000人を抱えるイングリッシュ・スクールズ・ファウンデーションのベリンダ・グリア最高経営責任者(CEO)は23日、教育局(EDB)当局者と会談。懸念を当局に伝え、教育の混乱を最小限に抑えるため努力していると話した。
さらにグリア氏は、今年外部の試験を受験する生徒に対しては多少の柔軟性が与えられそうだと話す。
「EDBが私たちの見方を理解しているという感触は得た。今後何が最善の道なのか合意できるよう、EDBと協力を進めていく」とグリア氏は語った。
休暇は4月17日までの予定で、学年最終日が8月に先送りされたため、教える方も学ぶ方も混乱している。
2020年のパンデミック開始以来、2年以上にわたって登校できずにいる生徒は約90万人を数える。
香港に住む多くの世帯は、狭い高層アパートに3世代で暮らしているため、オンライン学習は特に困難だ。ときにはWiFi接続が不安定になることもある。
香港行政庁は22日、市民740万人を対象とする新型コロナの大規模検査を3月に開始すると発表した。
香港では生後わずか11カ月の乳児が新型コロナウイルスに感染して死亡した例もあり、不安が高まっている。
今週には、やはり生後11カ月の幼児が新型コロナに感染し、両親が付き添いを懇願したにもかかわらず、病院に独りで隔離された。
2児の母親であるソフィアさんは、「子どもと引き離されるニュースを見たとき、『もう終わりだ』とつぶやいた」と語った。
ソフィアさん一家は来週香港を離れ、6月にシンガポールに転居する予定だ。
「香港が『ゼロ・コロナ』をめざすのは馬鹿げている」とソフィアさん。「ゼロなんて不可能だ。人の心を弄んでいる。ここに留まる理由などあるだろうか」
(翻訳:エァクレーレン)